表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

ネズミ王子とわすれ姫 中

「家の中に誰かいる?」

「いいえ、弟は出かけています」

「なら、丁度良かった」


アリスの家に着くと、ネズミはアリスが許可も出していないのに、家の中をチョロチョロと動き回りはじめた。

「いきなり失礼ですよ」

アリスが注意したが、ネズミは聞いていない。

しばらく動き回ると、ピタリと部屋の奥の棚の前で止まった。

「あった。見つけたぞ」

ネズミが指差していたのは、アリスの弟の大事な宝石だった。

「何をしているの?!」

ネズミが盗みを働くのかと思ったアリスは、防ごうとして思わず宝石を手に取ろうとした。それをネズミが遮る。


「別に盗もうとしているわけではない。むしろ、返してもらおうと思っているのだ」

アリスは伸ばす手を止めた。どういうことなのか。


ネズミはくるりとアリスに向かい合うと、真剣な眼差しでアリスを見た。そしてこう続ける。

「質問だが…… 俺はネズミだ。当たっているな?」

ネズミの気迫に圧倒されつつも、アリスは頷いた。

「そして、君は俺を知らないらしい。本当だな?」

アリスは再び頷く。

ネズミは少し、悲しそうな顔をしてこう続けた。

「君は本当に俺のことを忘れてしまったのか?」


「……」

アリスは黙った。ネズミのことを知らないはずなのに、なにか胸につかえている。頷くのにはばかられた。


アリスの様子を見てネズミは一瞬悔しそうにすると、こう呟いた。

「分かった。今俺が君を取り返してやる」


そして、次の瞬間どこから出したのか、ネズミは剣で強い光を放ちつつ、宝石を切り始めた。

「うおおおお」

力づくで宝石を切ると、宝石は暗い靄を放ちつつ姿を消していった。


直後だった。

アリスの視界がグルグルと回り始める。それと同時に周りの景色が変わって見え始めた。


先程まで見えていた家の中の風景が、たちまち黒い靄に包まれた空間へと変わっていった。


「ここは……」

よろけたアリスを誰かが抱き止める。

見れば、金髪に緑の宝石の様な瞳をした男性がいた。

アリスは朦朧としながらも、それが誰であるのかゆっくりと思い出してきた。

この国の王子、セオだ。

「セオ様……」

「……! 思い出してくれたのか?!」

セオは嬉しそうな顔をした。

先程のネズミと同じ声や瞳の色をしている。

「あれ、ネズミと同じ?」

それを聞いてセオは安堵で大きく息を吐いた。

「よかった……俺はやっと取り戻せた……!」


ボーッとしながらも、状況が飲み込めないアリス。セオはこう告げた。

「アリス。君は、この忌まわしき空間に閉じ込められ、幻覚を見せられていたらしい」

「幻覚……?」

ヨロヨロと立ち上がるアリスを支えながら、セオは続ける。

「公爵令嬢である君は、ある日突然行方をくらました。捜索しても見つからない。君が自ら助けを求めにくるとも思ったんだが、それもない。操作は難航したさ。

 月日が経って、君を諦めきれなかった俺は、人里離れたこの場所で引き続き捜索をした。そんな最中、偶然モヤに包まれたこの空間に来たって訳だ。

 すればどうだろう、君がいるではないか。しかし、君は記憶が無くなっていたんだ。一体何が起こったのか、理解が出来なかった」


『では、続きは僕が教えてやろう』


すると、急に背後から声が聞こえてきた。

振り向くと、そこには黒髪に赤い瞳がギラリと光った、黒ずくめの男が立っていた。

心持ち悲しそうな、でもどこか嫌な薄ら笑いを浮かべている。

『だめじゃあないか、アリス。知らない人を家に連れて来てはならないと、教えただろう?』


アリスはこの声を聞いて、ハッと身構えた。

弟の声である。それに、瞳の色が弟とそっくりだったのだ。

「弟……?」

ぼんやりと思いだしてきたアリス。今朝まで可愛らしい少年だった弟。だが、弟など……と思ったアリスは異変に気付いた。令嬢のアリスには本当の弟がいなかっということに。


「私には……弟はいない……はず?」

すると黒髪の男は眉尻を下げて、憐れみの表情をして見せた。

『あぁ、魔法が解けてしまったか。可哀想に。』


「魔法?ですって?」


『あぁ、愛しいアリス。我が世界の中で閉じ込めていたのに』


すると、王子セオがアリスを庇いながら叫んだ。


「お前のことは知っている! 封印されたはずだが?黒魔術師レギオン! 」

セオが剣を向けると、黒髪の男はニヤリと不吉な笑みを浮かべた。


『さよう、我が名はレギオン。さぁ姫、僕の世界に戻ろう』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ