ネズミ王子とわすれ姫 上
童話の世界&ファンタジー系少女漫画の雰囲気が出るような作品を、書いてみたくなりました。
(二次創作など、別の用途で公開する予定のシナリオでした。せっかくなのでアップします)
「俺と結婚してほしい」
突如現れたネズミは、口を開くなりアリスにこう言った。
◇◇
アリスは山の中の小さな家に、弟と二人で暮らしている。アリスが山で採取し、弟が街で売る生活だ。アリスは今日も山で木の実を採っていた。
普段ならば小屋の周辺を歩いて終わるが、今日はなんだか遠出がしたくなり、少し足を伸ばしてみた。
しばらく歩いていると、草むらから音がし始めた。
不審に思ったアリスは身構える。すると、突如草むらから一匹のネズミが現れた。
アリスは驚いて「わぁ!」と声をあげてしまった。
ネズミも声に驚き飛び上がる。
「うわぁ!」
ーー"うわぁ"?
アリスは耳を疑った。どこからか人間の言葉が聞こえた。
「俺を誰だと思ってるんだ!」
声は下から聞こえてくる。
「急に飛び出すな!」
間違いなく、ネズミから聞こえてくる。このネズミ、人間の言葉を話すらしい。
よく見ると普通のネズミより少し大きく、心持ち毛艶が良い。瞳が宝石の様に輝いている。
アリスが物珍しそうに見ているとネズミは視線を感じたのか、アリスを見上げた。
そして目が合うと、「お前、俺の話を……」とまで言ったかと思えば、急に黙ったのだった。
挙げ句の果てにはこのネズミ、マジマジとアリスの顔を見つめてきた。
「あ、あの?」
戸惑うアリス。するとネズミは、今度は急に声を張り上げた。
「アリスじゃないか!」
ネズミの顔がぱぁっと明るくなった。
大層嬉しそうである。
どうやらこのネズミ、アリスのことを知っているらしい。
しかし困ったことに、アリスはネズミの知り合いなどいない。
アリスは再び困惑した。
たが、ネズミはそんなの梅雨知らずといった様子で、目の前にチョコンと前に立つなりこう言い放ったのだ。
「俺と結婚してほしい」
以上が、このネズミとの出会いである。
◇◇
状況が飲み込めないアリス。
それもそのはず、ネズミに求婚されているのだから。
動揺しつつ「い、いきなり何を言うんですか?そもそも貴方は何者?」と、精一杯返した。
すると、ネズミはしばしアリスを見つめると、何かを察したように、先程とは打って変わって大変悲しそうな顔をし始めた。
「もしかして、覚えていない?」
何を言い出したのだろうか?アリスは首を傾げた。
「覚えて……? 以前どこかでお会いしましたか?ネズミさんの知り合いなんて……」
この発言にネズミはさらに悲しそうな顔をした。
「ネズミ……いや、覚えていないならば仕方ない。」
失礼な発言をしているのはネズミのはずだが、なんだか傷つけたような気がして、何故かアリスの心がチクリと傷んだ。
しばしネズミは考え込む。
そして、何かを決意したような顔で、再びアリスに対峙した。
「先程はすまなかった。友達になりたいんだが言葉選びを間違えてしまったようだ。すまない」
ネズミの話し方は先程よりも穏やかだ。
さらにネズミは、ポンと手を叩くとこう続けた。
「そうだ、今から友達になってくれないか。そうだな、おしゃべりがしたいから君のお家に遊びに行こう!」
急な展開である。アリスは勿論制止した。
「急になんなのですか貴方は! それに家は……」
「家はダメなのかい?」
「弟に知らない人を連れて来てはいけないと言われているんです」
「そうからならば私は人に見えるかい?」
「いいえ」
「なら大丈夫さ」
手をヒラヒラとさせるネズミ。少しお調子者なのだろうか。
うーんと、悩んだアリス。
なんだかこのネズミだけは、家に連れて来ても良い気がした。
「ネズミは大丈夫かもしれません。」
気づけば不思議なネズミを家に案内してしまっていた。
◇◇




