第66話 訓練
「ごめんなさいね、恥ずかしい所を見せたわ」
「あ、いえ……」
あれから数分程、ようやく落ち着いたマイラさんは鼻を啜りながら謝って来た。
「でも強い事は確か、アル様じゃなければあんなに僅差にはならなかったと思うわ、現に私なら手も足も出ない筈」
「わ、私も無理……」
「ありがとう二人共……でもアルファンド君本当に強いわね、とてもFランクとは思えないわ」
「アルは強いんだから!」
「当然、アル様は強いのです」
うん、何で二人が自慢気なんだろうか?
エミリアは前からこんな感じだけど、ジュリも同じ感じだったとは。
まあ違いと言えば、二人共胸を張ってふんぞり返っているがエミリアは成長してる胸が主張しているのに対してジュリはすとんと真っ平である事だ。
「あの、アル様……私も訓練をしたいのですが、宜しいですか?」
「私も! 私もアルとしたい!」
「あぁ構わないけど……ジュリは大丈夫か? その、トラウマとかになって無いか心配なんだけど」
「大丈夫です! 私はそこまで弱くありません! それに自分の腕を研く為なので!」
それなら、いいのかな?
二人に了承して、しばらくの間訓練をする事になった。
マイラさんにも協力して貰い四人でローテーションを組んで有意義な訓練になったと思う、勿論剣は模擬剣を使う事を忘れない。
その際、何故かジュリは俺から攻撃を受ける度に顔が赤くなっていた様に思えたのだけど気のせいだと思いたい。
終わる度に『あっ、アル様……もっと……』という声が聞こえた気がしたけど気のせいだ、俺は何も聞いていない。
そしてエミリアはジュリとの特訓の成果なのかまた筋が良くなっていた。
これはら直ぐに俺と対等に打ち合える様になると思う。
そのまま訓練を続け、エミリアが体力的にそろそろ限界になって来た所で終わりとなった。
「疲れた……」
場所は一階の受付前の酒場、空いたテーブルに三人で座るとエミリアはテーブルに突っ伏してしまった。
「お疲れエミリア、でもかなり良くなってきてるよ」
「本当に!?」
「うん、本当だよ」
そう言って頭を撫でてやるとエミリアは途端に嬉しそうに微笑む、うん今日も可愛いな。
「……アル様、私も」
「えっ?」
「あ、いや、アル様が嫌で無ければなんですが、私も褒めて欲しいなと……」
「アル? 私の為にジュリは頑張ってくれたから、褒めてあげて欲しいの」
ん~エミリアがそう言うなら、確かにエミリアの言う通りジュリが特訓に付き合ってくれてるからエミリアが上達してる訳である。
でも褒めるって、頭を撫でるとかで良いのかな?
あ、だけどジュリはたまにエミリアを羨ましそうに見ている時もあるし、もしかすると甘えたいと思っているのかもしれない。
「じゃあ失礼して」
「あっ……」
「ありがとなジュリ」
「はい……あぁ、幸せです……」
頭を撫でてやるとジュリはとろんと顔を緩ませ、とても女の子がしてはいけない表情を浮かべている。
こらこら、そんな顔は駄目だろ。
「……相変わらず凄いわね、アルファンド君」
撫でているとマイラさんが四人分の飲物を手にテーブルにやって来た。
その表現は呆れた様な苦笑を浮かべている。
ちょっと待って、相変わらずって言った?
「まあ私はとやかく言わないけど、はいこれ飲物」
「べ、別に何も無いですよ……ありがとうございます」
飲物を受け取ると中身は果実を搾ったジュースで、酒では無い事に安心し早速口を付ける。
「いやぁ、久しぶりに良い運動になったわ」
「良い運動、ねぇ……」
マイラさんの言葉にジュリが悔しそうに呟く。
まあ、エミリアとジュリはずっと全力で挑んでたからな、それが良い運動呼ばわりされたら仕方ないか。
「所で今日アーリアさんはどうしたの? 私あの人とも一度で良いから戦ってみたいのよね」
「アーリアさんならギルドに用事があるって朝から出掛けてますけど、そういえばまだ終わらないのかな?」
ギルドという事は恐らくまたフロワさんに用事があるのだと思うのだが。
ちょっと気になるけど誰に聞けば……あ、マリーさんがいたな。
「すみません、ちょっと受付行って来ますね」
一言断ってから俺は受付へと向かった。




