第60話 仕方ない
テーブルへと戻って来た俺が目にしたのは、とても楽しそうに会話に夢中になっている三人の姿だった。
エミリアはわかるが、アーリアさんもジュリと打ち解けたのかな……まあ、良い事なのかな?
「それでね、アルが私を庇ってくれて、そのままその二人をやっつけちゃったの!」
「凄い……アル様は昔から強かったんだ……」
「うん! その時のアル、とっても格好良かったんだから!」
「女の子を身を呈して守るなんて、やっぱりアルファンド君は優しい子ね」
「あ、確かこのギルドに来た時も」
「そうよ、女性に手を出すのは見過ごせないって……あの凛々しい横顔、思い出すだけで熱くなっちゃう……はぁ……」
「……いいなぁ、二人は色んなアル様の姿を見ていて」
「ふふん! アルとはずっと一緒だったからね!」
「でも私はもっと色んな姿が見たいわね、例えばベットの上での表情とか……」
「おぉ……!」
「ベットの上? 眠っている時の顔は可愛いよ?」
「……エミリアちゃん、ベットが必ずしも睡眠にだけ使う物とは言えないのよ」
「そ、そうだよエミリア! えっとね、あ、愛を確かめあったりするのにも使うんだから……!」
聞こえて来る会話の内容に、思わず思考が停止しかけた。
待て、俺が少し席を離れた内に仲良くなったのは構わない、しかし話している内容がおかしい、主にアーリアさんとジュリが。
アーリアさんは息を荒げながら、ジュリは少し恥ずかしそうにしかし興味深々といった様子だ。
エミリアは、うん、やっぱり純粋な汚れの無い心を持っている。
ってそうじゃない、このままだとエミリアに間違った知識が……それは避けなければ。
「アーリアさん、エミリアに何を教えようとしてるんですか?」
後ろから、アーリアさんの肩を少し強めに掴んだ。
「ひゃうっ!? ア、アルファンド君!?」
ちょっとだけ今の声が可愛いと思ってしまったのは内緒にしておこう。
「あ、おかえりアル」
「ただいま、それよりエミリア? あまりアーリアさんの言葉を鵜呑みにしちゃ駄目だよ? 魔法とかの話は良いけどそれ以外の話はね」
「え? うん、わかった」
素直でよろしい、それに比べてアーリアさんときたら。
「酷い! 私はエミリアちゃんにきちんとした知識を!」
「きちんとって意味、わかって言ってますか? あとジュリもアーリアさんに乗っかるな、エミリアにアーリアさんと同じ様になられると俺の安寧が脅かされるんだよ」
「あ、ご、ごめんなさい……」
「アルファンド君!? それってどういう意味なの!?」
詰め寄って来るアーリアさんをするりと回避し、俺は再び席に戻った。
そんな俺を涙目で唸りながら見つめながらもアーリアさんも席に戻る。
それを横目で見届けてからジュリに視線を向けた。
「さて、俺が言える立場じゃないとは思うけどジュリとはもう何も蟠りは無くなった訳だ、その上でジュリはこれからどうするんだ?」
俺の問いに、ジュリは少し迷う素振りを見せた。
俺の顔とエミリアの顔を交互に見ながらぽつりぽつりと言葉を発する。
「えっと……許してくれたからって、こんな事をお願いするのは烏滸がましいと思うけど、私は貴方達のパーティーに参加したい」
「え?」
「駄目なら断っても構わない、だけどこれは私の本心からの気持ちなの! だから、お願い!」
真剣な表情で頭を下げるジュリに、俺は何とも言えない表情を浮かべてしまった。
「……駄目、かな」
「いや、何て言うか」
視線をアーリアさんに向けると、アーリアさんも困った様な表情で苦笑している。
エミリアはキョトンとした顔で俺とアーリアさんを見ている、うん可愛い。
って違う違う、ジュリには大変申し訳ないが、勘違いしているみたいだ。
「俺達、まだパーティーを組んでいないんだけど……」
俺の言葉に、ジュリは一拍置いてから物の見事に椅子からずり落ち驚きの声をあげるのだった。




