第58話 和解
久し振りの投稿です。
そして今更気付いたのですが、キャラの名前、被ってました。
顔から火が出る程恥ずかしい、気付いた時部屋で一人悶えていました。
「えぇっと、つまりエミリアちゃんは気にしていないからこの娘を許すと、そしてアルファンド君もエミリアちゃんがそう言うなら何も思わないと、そういう事でいいのよね?」
呆れた様な声音でアーリアさんは腕を組みながらそう言った。
その言葉に俺とエミリアは揃って頷く。
確かに最初は殺そうと思っていたが、エミリアが望んでいないと言うのなら俺にジュリをどうこうするつもりが無い。
そもそも初めから興味すら無い訳だしな。
「二人して甘いと言うか何と言うか……まあ二人がそれで良いなら私も構わないわ」
「え、あの……」
「そういう事だから、貴女は行っていいわよ? 私の気が変わらない内に」
アーリアさん、それは軽く脅してますよ。
まあアーリアさんの言う通り、もう俺達は何とも思っていないからこれ以上ここにジュリがいる必要は無い。
戸惑いを隠せない表情を浮かべるジュリだったが、やがて俯きながら立ち上がった。
「わかりました……あの、本当に、ごめんなさい……」
一度深く頭を下げ、俺達に背を向けたジュリ。
しかし、その背中に声を掛ける人物がいた。
「あ、ま、待って!」
エミリアが立ち上がり、ジュリを呼び止めるとジュリは振り向く。
「あのね、もう私もアルも、アーリアさんも貴女を許したでしょ?」
「そう、ね……」
「だから、もう貴女は私達とは何も無いって事だよね?」
エミリアの言葉の意味が分からずにジュリは戸惑いながらも頷く、それを見てエミリアは眩しい程の笑みを浮かべた。
その表情を見て、俺は何となくだが次にエミリアが口にするであろう言葉が予想出来た。
「じゃあ、私と友達になって!」
「えっ!?」
ジュリが驚きに目を見開く。
それはそうだろう、エミリアに対してジュリがやった事は例え本人が許したと言っても普通は蟠りが残るものだ。
しかし、エミリアはそんなジュリと友達になりたいと言ったのだ。
「あのね、私ずっと女の子の友達がいなかったから、だから友達になりたいの」
「でも、私はあんたに……あんな酷い事をしたのに……」
「だから、私はもう気にしてないって言ってるでしょ? それとも、私なんかと友達は、嫌……?」
出た、エミリアの上目遣い攻撃。
あの目をされたら俺ならもう断れない。
いや、別にエミリアに甘い訳じゃ無いけど、あれは誰でも断れないと思う。
「そ、そんな事無い!」
「じゃあ友達になろう? 私、貴女に色々と教えて貰いたい事もあるし、もっとお話したいの!」
「……ぃの?」
「えっ?」
「いいの? 本当に、許して、くれるの? 私なんかと、友達になってくれるの……?」
そこで気が付いた。
ジュリは、泣いていたのだ。
正直意外だった、確かに俺が叩きのめした時にも泣いてはいたが、まさかこんな事で泣くとは思わなかった。
ふとフロワさんの言葉を思い出す。
『冒険者の中には色々な事情がある人が多いから』
成る程、ジュリにもその事情とやらがあるのかもしれないな。
「勿論! よろしくね、ジュリさん!」
「あ、ジ、ジュリでいいよ、その代わり、私もエミリアって呼んでも良い……?」
「うん! よろしくジュリ!」
エミリアがジュリの手を取って微笑み掛けるとジュリも釣られる様に笑みを浮かべた。
「……全く、エミリアちゃんは甘いんだから」
隣で呟いたアーリアさんだが、表情を見る限り反対するつもりは毛頭無いという事がわかる。
エミリアの嬉しそうな表情を見ていたら反対するなんて思わない。
確かにエミリアは昔から俺やウィルとしか遊んでいなかったから、同年代の女の子の友達というのは嬉しいのだろう。
そんなエミリアを見ていると何だか俺まで嬉しくなってしまった。
「あ、でもね?」
突然エミリアが思い出したかの様にジュリの手を離すとジュリにしか聞こえない様にそっと耳元で何かを囁いた。
何を言っているのかわからないが、ジュリはキョトンとした表情を浮かべ、そして表情を一転悪戯する子供の様な表情でエミリアに同じ様に囁いた。
するとエミリアは頬をぷくっと膨らませて『それは駄目!』と何やら叫んだ。
……まあ、楽しそうで何よりだ。
そんな二人から目を離し、アーリアさんにトイレに行くと伝えて俺は席を離れた。
「よう、流石は黒狼だな」
席から離れ、トイレに向かう途中で突然声を掛けられた。
名前も顔も知らないが、恐らく先程下で俺とジュリの戦いを見ていた冒険者の一人だろう。
と言うかやっぱり黒狼って呼ばれてるのか俺。
「まさか"狂犬"に手も足も出させる事無く負かすとは恐れ入ったぜ」
「狂犬? それってジュリの事ですか?」
「あぁ、Eランクだが噂じゃあCランクと一騎討ちして打ち負かしたらしいぜ?」
それは凄い、確かにジュリの実力は戦った俺が一番わかるがCランクに勝ったのか。
「それにしても狂犬って、いくら何でも女の子にその呼び方はどうかと思いますけど」
「ん? だけどよ、あいつは冒険者になった頃から手当たり次第に他の冒険者に喧嘩を売って、その度に打ち負かしてたんだからそう呼ばれても仕方ないと思うけどなぁ? ま、流石にAランクとかに喧嘩を売る程死に急いで無いみたいだけどな」
成る程、手当たり次第に……だから狂犬、ね……。
「あとこれも噂だが……あいつ、実は貴族の娘らしいぜ? だから喧嘩を売られた奴らも勝ったらその貴族から金を巻き上げられるんじゃねぇかって考えて挑んでるんだ」
それを聞いて、思わず目を見開いた。
貴族だって? ジュリが?
それが本当なら、金とか言う前にあんな事をして大丈夫だったんだろうか?
あくまで噂だが、これはちょっと調べてみた方が良いかもしれないな。
会釈をして男と別れ、俺は三人の待つ席へと戻った。




