第42話 機嫌
今日は昨日話していた通り、買い物をする事になった。
宿で朝食を取り、既に人通りが多くなっている通りを三人で歩く。
「先ずは何を買うんですか?」
「……最初は防具を買いに行くわ」
俺の問いにアーリアさんは素っ気なくそれだけ答えると再び前へと視線を戻した。
朝からこんな感じである。
やはりエミリアと一緒に寝ていた事が不満だった様で、ずっと不機嫌そうな表情を浮かべている。
別に変な事をしていた訳では無いのだからそんなに不機嫌にならなくてもいいのに……けど、このままだと雰囲気が悪い。
どうすればいいだろうか?
考えるが、何も良い案が出てこない。
そんな時、ふと思い出した出来事があった。
前の世界で、初めて付き合った彼女がいた。 まあ成り行きでだし長続きしなかったけど、その彼女から言われた事があった。
確かちょっとした事で喧嘩をして今の様に気まずい雰囲気になった時、俺はどうしていいのかわからずに黙っている事しか出来なかった。
そんな俺に、女の子の気持ちがわかっていない、こういう時は謝らなくてもいいから黙って手を取るぐらいはして欲しいって言われたんだよな。
その時は言ってる意味がわからなかったし、恥ずかしかったから繋がなかったけど、もしかしたらアーリアさんも同じなのだろうか?
悩んでいてもしょうがない、実践してみよう。
前を歩くアーリアさんの隣に並び、急に隣に来た俺を訝し気な表情で見るアーリアさんの手を黙って握った。
突然の事に目を白黒させるアーリアさんの顔を見つめる。
「ア、アルファンド君!?」
「すみません、嫌だったら離します」
「い、嫌な訳無いじゃない!」
「じゃあ、このまま行きましょう?」
その言葉に、アーリアさんは壊れた玩具の様に何度も頷いた。
どことなく顔が赤い気もするが、表情は先程の不機嫌そうなものでは無く嬉しそう……というより緩みきっている。
けどまあ、機嫌が治った様で良かった。
っと、アーリアさんだけだと駄目だな、後ろにいるエミリアにも空いた手を差し出す。
「エミリアも」
「うん!」
エミリアは差し出した手を見て嬉しそうに隣にやって来ると嬉々とした表情で俺の手を取る。
周りからの視線がちょっと恥ずかしいけどこの際我慢しよう。
三人で手を繋ぎながら俺達は通りを歩いて行った。
やがて目の前の風景ががらりと変わった。
人通りが多いのは変わらないが、その殆どが見てわかる様に冒険者だった。
並んでいる店も先程までは食べ物や衣服だったものが剣や盾、防具を取り揃えた店になっている。
「ここは見ての通り、冒険者の必需品を扱っているエリアよ」
アーリアさん曰く、この都市は大きく分けて都市の住人や冒険者が住む居住エリア、食糧や衣類といった日用品等を取り扱う商業エリア。
そしてここ、冒険者の必需品と言える武器や防具を取り扱うエリアの三つだそうだ。
かなり大きい通りにも関わらず、途切れ目が見つからないぐらいに店が連なっていて何処に行けばいいのか全く見当もつかない。
「えっと、何処に行けば……?」
「ふふっ、確かに初めて来たら迷うわよね、私が冒険者だった頃に何度も使った店がまだある筈だからそこに行きましょう」
冒険者だった頃って事は、アーリアさんの話だと十年以上前って事だよな?
こんな大きい通りで、ましてやこんなに店がある中でまだ残ってるのならかなり優秀な人がやっている店なんだろうな。
これは期待出来そうだ。




