第27話 襲撃
体を拭き終えて服を着るとアーリアさんは残念そうな表情を浮かべていた。
何でだよ、おかしいだろ。
っていかんいかん、口が悪くなってるぞ俺、平常心だ。
「あっ……」
エミリア、お前もか?
何だろう、アーリアさんに毒されてるんじゃないだろうか?
エミリアにはいつまでも純粋な心を持ち続けて欲しいんだけどな。
すると突然、アーリアさんがとんでもない事を口にした。
「……あれよね、アルファンド君だけ狡いわよね?」
「はい?」
「はっきり言って、女性の方が体を清潔にしたいと思うじゃない? それなのにアルファンド君だけ体を拭くのは狡いと思うのよ」
待ってくれ、アーリアさんは何が言いたいんだ?
「エミリアちゃん、私達も体を拭きたいわよね?」
「えっ? あ、それは、勿論そうですけど……」
「なら決まりね?」
言うや否や、アーリアさんは着ていたシャツのボタンを外し始めた。
「ちょっ!? アーリアさん!?」
「何かしら?」
思わず大声を出す俺に、アーリアさんはきょとんとした表情で首を傾げる。
「いやいや! そんな不思議そうな顔しないで下さいよ!? いくら何でもこんな所で、しかも俺だって男なんですから目の前でいきなり脱ぐのは駄目でしょう!?」
「アルファンド君なら構わないわよ? それに見られて恥ずかしい体じゃないし」
えっ? もしかして俺男として見られて無い? それに確かにアーリアさんはめちゃくちゃスタイル良いけど……いや問題はそこじゃない! 俺だって男なんだから目の前でアーリアさんみたいな美女が肌を晒すのを黙って見てる訳にはいかないだろう!?
「アーリアさん考え直して下さい! それにもし誰か来たら……」
「平気よ、この辺りは滅多な事じゃ人は通らないし近くに来たら気配でわかるもの」
「そ、そうかもしれないですけど……って、うわわっ!?」
更にボタンを外したアーリアさんのシャツの中から、溢れんばかりの大きな胸が飛び出す。
これは不味い……! 下着で大事な所は勿論隠れてるけど、深い谷間に思わず目が釘付けになってしまう。 服の上から押し付けられてその大きさはある程度予想出来てたけど、実物はめちゃくちゃ凶器だ!
何だよその大きさ!? それに恥じらいは無いのか!? あ、恥ずかしい体じゃないって言ってたな……俺が恥ずかしいわ!
「アーリアさん!? アルがいるのに駄目です!」
エミリアが顔を真っ赤にして慌ててアーリアさんのシャツを押さえて胸を隠した。
ナイスだエミリア! そのままアーリアさんを説得するんだ!
「もうエミリアちゃん、わかって無いわね?」
「えっ?」
「エミリアちゃんも見せたらアルファンド君がきちんと異性として意識してくれるわよ?」
「……本当?」
エミリアが俺の顔をじっと見詰める。
待て、待て待て待て! 流されるなエミリア! そんな事しなくても俺はちゃんとエミリアを異性として見てるから! 第一そんな事されたら俺の理性が不味いから!
「えぇ本当よ、だから……ね?」
アーリアさんの言葉にエミリアは顔を赤らめながら小さく頷いた。
そして、ゆっくりとボタンに手を伸ばす。
「おいエミリア!? ちょっ……待って……!」
一つ、二つとボタンが外されて行く。
不味い……目を逸らさないといけないのに、体が動かない。
小振りでアーリアさんには遠く及ばないが、昔に比べて成長してきている胸元が晒されていく。
思考が停止した。
あ、不味い……我慢していたのに、俺の中の理性が……。
目の前がぐるぐると回る様な錯覚に陥る俺の目の前に、エミリアの素肌が晒され……。
「アルファンド君! 後ろよ!」
「っ!?」
咄嗟に、動けた。
振り向き様に剣を抜き放ち、後ろから飛び掛かって来た何かに切りつける。
「ギャン!?」
振り抜いた剣は一撃で何かの首を跳ねた。
足下に落ちた何かを見る。
それは、狼の様な獣だった。
しかし俺の知ってる狼とは違い、体は白銀の体毛に包まれており牙と爪はまるで鋭利なナイフの様に長く鋭い。
何だ、こいつは……?
足下の死体から視線を外し、前方に向ける。
『グルルルルッ……』
同じ姿の獣が、ざっと十頭以上いた。
それはこの世界で、魔物と呼ばれるもの。
俺は、初めて魔物の襲撃を受けた。




