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転生したらしいよ?  作者: 田舎モン
第1章
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第19話 慟哭





あれからしばらくの間、俺達三人はその場から動かずにいた。


どうやら盗賊の残り大半がこの場に来ていたらしく、あれから周囲には先程まで聞こえていた悲鳴や爆音が聞こえなくなっていた。


聞こえているのは風の音と燃えてしまった家屋が倒壊する音、そして俺達の息遣いだけだ。


魔力枯渇は起こしてはいないが、そこから動く気力がもう起こらない。


ただただ、時間だけが過ぎていく。




「アル!!」


その時、遠くから俺の名を呼ぶ声が聞こえた。



「えっ……」


その声は、この世界に来て何度も聞いた声、もう聞く事も出来ないのだと諦めてしまった声。


顔を上げ、声の聞こえた方へと視線を向ける。


こちらへ駆けて来る数人の姿、その中にはアーリアさんの姿もあったが俺が何より目を反らす事が出来ずにいたのは別の理由。



「母、さん……?」


「アル!! あぁ、良かった!! 無事だったのね!?」


駆けて来た勢いをそのままに、フィオナが俺の体を抱き締めた。



「アルファンド君!」


その後ろから、アーリアさんが俺の反対から挟む様に抱き抱えて来る。



「アーリア先生……?」


フィオナは涙を流しながら俺の体を強く抱き締め、アーリアさんは心底安心したかの様にその場にへたり込んでしまった。



「この人から、アルが友達を助けに行ったって聞いて……」


「うん……」


「凄く心配したのよ……」


「ごめんなさい……でも、助けられなかった。 エミリアとレイシーさんは助けられたのに……ウィルを……ウィルを助ける事が、出来なかった……!」


再び、涙が込み上げて来る。


悔しかった、目の前にいたのに、あと少しで助けられる筈だったのに、出来なかった……!



「ぐすっ……うぅ……助けられる筈だった……俺がもっと早く見つけられたら……!」


強く手を握り締めると、その手をフィオナが優しく包み込む様に握った。



「それは違うわ、アルは二人を助ける事が出来たのよ? アルがいなかったら二人も手遅れだったかもしれない、この子が死んだのは、貴方のせいじゃ無いわ」


「そ、そうだよアル! アルが来てくれなかったら、私も、ウィルと同じように……」


「アルファンド君、貴方は出来る限りの事をしたわ。 誰も貴方を責めたりなんてしないわ」


誰も俺を責めない……それが、辛かった。


いっそのこと、俺がもっと早く見つけられたらウィルは死ななかったと責められていたら良かったのに。



「うぅ……うああああああっ!!」


自分自身のやるせなさを、悔しさを少しでも晴らしたくて、泣き叫んだ。 こんなに泣くなんて、いつ振りだろうか? いや、前の世界でもこんなに泣き叫ぶなんて事は無かった。 それ程に、ウィルを助けられなかった事が辛かったんだ。





「……悪いが、そろそろその子供と女から離れてくれないか?」


突然、一緒に来た村人の男がそう口にした。


そして、俺とアーリアさんに向けて数人の村人達が槍や剣を向けて来た。 恐らく、その辺に死んでいる盗賊共から奪ったのだろうそれを。



「貴方達、一体何を!?」


突然の事に、フィオナが俺を庇う様にしながら男達に叫んだ。


俺も、突然武器を向けられて混乱するが、俺に向けられる目を見て嫌でも気付いてしまった。


その目に宿るのは敵意ではない、恐怖だ。



「その化け物のせいで、多くの村の者が死んだ。 このまま一緒にいたらまた同じ事の繰り返しだ」


"化け物"


その言葉に、俺は今までの自分の行動を思い返す。


盗賊を許せないのは皆同じだろう、しかしその盗賊共を俺はどうした? 剣で切り殺し、魔法で吹き飛ばし、最早虐殺と言っても過言ではない様な事をしていた。


年齢が十歳そこらの、子供がだ。


そうか……そりゃあ……恐いだろうな……。


思わず自嘲の笑みを溢してしまう、アーリアさんを横目で見ると、何も言わずに目を伏せていた。


駄目だったか、結局俺の目標は叶わずに、こんな形で村人から拒絶されるとか、なんて滑稽なんだろうか。



「化け物ですって!? この子は私の、私と夫の大切な子よ!?」


フィオナの声が響いた。 それは初めて聞く、フィオナの怒声だった。


しかし、男はそんなフィオナを無表情で眺め、そして口を開いた。



「……なあフィオナさんよ、今まで俺達は何も言わなかったがこの際だから言わせて貰う……あんたの本当の子供は、"死産でとっくに死んでいる"だろう?」


フィオナの顔が直ぐ目の前にあるからわかった、村人の言葉を聞いた時、フィオナの顔が明らかに強張ったのを。


成る程、初めてこの世界に来た時、俺の事を神様からの贈り物だと言ったのはそういう理由だったのか。



「っ……! 違うわ! この子は、この子は私の……!」


「あんたが一番わかっている筈だろう? いい加減目を覚ませ、その化け物はあんたの子じゃない、誰の子でも無い、ただの化け物だ」


「やめて!!」


「このまま離れないなら、あんたもその化け物と一緒に……」


は? 一緒に、何だよ? フィオナを、母さんをどうするって? ふざけんなよ?



「ふざけんなよ」


思わず、口に出してしまった。


その場の全員の視線が俺に集まった。


そうだ、俺を見ろ、俺だけでいい。



俺以外が、酷い目に合うのだけは、嫌なんだよ。




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