第10話 才能と特訓
あれから俺はアーリアさんに抱き締められたまま再び家の中へと連れて行かれた。
その際、何とかして下半身の状態を覚られない様にと奮闘していたのは秘密だ。
「アルファンド君! 貴方には魔術の才能があるわ!」
「えっと、ただ使えたというだけの話では無いんですか?」
「あのね、普通魔法は最低でも三年は修行しないとさっきのアクアボールすら使えないのよ、それを貴方は見ただけで使う事が出来た。 しかも魔力を視認出来るのはこの世界にほんの一握りしかいないのよ?」
そ、そうなのか? そんな凄い才能が、何で俺なんかにあるんだ?
転生した身だからか? いやそれは関係無いだろう、あの女神様がそこまでしてくれるとは思えないしそんな才能を持たせたら女神様の言う問題になりかねない。
ってことは本当に偶然俺の生まれ持った才能なのだろうか?
「それからさっきのアクアボールの大きさ、貴方体に違和感とか無いかしら?」
「いや、特には無いです」
「普通アクアボールとは言っても、あのサイズのものを使えば修行もまともにしていない人は魔力枯渇で気絶するのが普通よ」
「魔力枯渇……確かに何かが抜け落ちる感覚はありましたけど、問題は無いですね」
「それはつまり魔力総量も多いということよ」
うん、何だか自分が恐くなって来たな。
けど魔法も使えて剣術もレイドに習ってるから使える、この世界で生きて行くのに不自由どころかプラスでしかない訳だ。
こりゃ幸先がいいぞ!
だけど剣術はこれからもレイドに習えば良いが魔法をもっと覚えたい。
「……アーリアさん、俺に魔法を教えて下さい!」
直角に近いぐらいに腰を曲げ、俺は頼み込んだ。
魔法を覚えるには、アーリアさんに習うしか方法は無いんだ。
「勿論良いわよ、私も貴方の才能が何処まで伸びるのか興味が湧いたから」
「本当ですか!?」
「えぇ、だけど今日はもう帰りなさい、そろそろ暗くなるでしょうし貴方の家族が心配するわ」
確かに窓から外を見ると日が傾き始めている。
帰りが遅いと二人に心配を掛けることになるからな。
「わかりました、じゃあ明日またここに来ます!」
「ふふっ、待ってるわね……だけど約束して、ここに来るのは誰にも内緒よ?」
「はい!」
確かに、そうじゃ無ければわざわざこんな離れたところに住んでないもんな。
秘密の特訓ってやつだ、何か格好いいじゃん!
「あ、魔法を習う訳ですから、先生とか師匠とお呼びした方がいいですか?」
「えっ? あはははっ、そんな大それたものじゃ無いんだから普通に名前で良いわよ」
うーん、アーリアさんはそう言うけど何事も形から入ることが大事だと思うんだよな。
「じゃあ、アーリア先生と呼ばせて下さい!」
「何だか恥ずかしいわね、けど貴方がそう呼びたいなら構わないわ」
苦笑しながらも、呼び方自体は別に嫌がってはいないみたいだ。
こうして、俺の特訓が始まった。
一日のスケジュールとしては主にレイドの仕事が休みの時と午前が剣の特訓、そして午後からはアーリアさんのところに行って魔法の特訓と勉強である 。
この魔法の特訓と勉強が中々に興味深いもので、アーリアさんの持っている本を教本代わりに魔法の基礎や様々な魔法を教わっている。
第一に魔法の基礎であり、ほぼ全ての魔法の原理となる属性魔法だ。
属性魔法とは俺が使えた水の魔法を皮切りに火、植物、雷、氷、土、風、光、闇といった自然界に置けるあらゆるものを魔法で操るものである。
そして難易度はかなり上がるが治癒魔法。
名前の通り怪我や病気を治癒する為の魔法で、使える者はかなり重宝される程だと言う。
また治癒魔法と同じ難易度の高いものが空間魔法だ。
これは空間を司る魔法で、遠い場所へと一瞬で移動出来る転移魔法が一般的だと言う。
ちなみにアーリアさんはその全てを使いこなす事が出来ている。
水魔法と同じ様に家の外で見せて貰えたのだが、やはりアーリアさんは俺にやってみろと言って来た。
試した結果、残念ながら空間魔法は使えなかったが何と俺は初級ではあるが全ての属性魔法と治癒魔法を使う事が出来た。
アーリアさんはもうずっと興奮しており、またもや抱き付いて来た。
だからアーリアさん、スタイルめっちゃ良いんですからやめて下さい。
俺の下半身を虐めないで下さい。
まあそれは置いといて、そんな魔法の特訓の後はお茶を飲みながら魔法とは関係無いが、この世界の魔物についての話を聞くのが日課になっている。
レイドも自警団をしているからこの近辺にいる魔物の事を知っているが、アーリアさんはこの世界にいる魔物の大半を知っていた。
流石は魔女と言ったところか、魔物の名前だけでは無くその住処や生態、弱点を事細かに教えてくれた。
そのほとんどが俺の知らない魔物ばかりだったが、その数ある中でやはりドラゴンは魔物の頂点に君臨している様だ。
滅多に人前に姿を見せる事は無く、個体差は有るものの一度姿を現せば国の一つは壊滅する程の脅威だとか。
更に長い年月を生きたドラゴンは"龍"と名前が変わり、魔物にもかかわらず魔法を操り最早災害レベルに匹敵する。
初めは興味を抱いたが、話を聞く内に関わりたく無いと思ってしまった。
流石に興味本意で近付いて良い相手では無いし、長生きしたいからな。
そんな日々を過ごし、俺はどんどん剣と魔法の腕を磨いて行った。
このまま更に上達することがレイドとアーリアさんに対す俺なりの恩返しになると思って。
いずれはレイドと同じく自警団に入り、この村でそこそこの地位を持ってアーリアさんを皆に受け入れて貰える様にするのだと目標を立てた。
目標……いや、違うな……それが俺の夢だったんだ。
理想しかまだ知らない俺の夢。
しかし、現実の非情さがその夢を受け入れてはくれなかった。
それはある時、突然起きた。




