第11話 接触、大賢者
今日もいつもと同じ様にアーリアさんのところへと向かっていた。
あれから更に特訓を重ね、最近では剣術でレイドとそこそこ打ち合える様になったし魔法では中級魔法まで使える様になった。
これも努力の賜物だ。
だけど満足はしていない、ここで終わらせては意味が無いからな。
もっと上を目指すんだ!
「アーリアさん、今日もお願いしま……」
「アーリアよ、いつまでこんな場所にいるつもりだ?」
扉を開こうとした時、家の中から声が聞こえた。
アーリアさんの家に人が? 珍しいな……。
珍しいなんてものじゃ無い、俺が通い始めてから誰も来たことは無いしアーリアさん自身誰も来たことは無いと言っていた筈だ。
一体誰が……?
「アーリア先生、失礼します……」
扉を開け、中へと入った。
「アルファンド君! 駄目!!」
「えっ?」
開いたと同時にアーリアさんの声、そして前方から魔力を感じたと思ったら目の前に……火球を放つ魔法、フレアボムが前方にいきなり迫っていた。
「っ!?」
突然の事に驚くが、反応は間に合った。
腰に携えた剣を掴み、剣気を纏わせる。
「はあっ!!」
剣気を纏った剣は火球を切り裂き、後方に二つに別れて飛んで行った。
この魔法を剣気を用いて切る方法、実はアーリアさんに頼んで練習をしていた。
まさかいきなり実践するとは思わなかったが。
「いきなり何するんですか!?」
剣を構えたまま中を見ると、驚いた表情のアーリアさんの向かい側に黒いローブを着た人物が立っていた。
フードを被っている為顔は見えないが、そいつも驚いている様だ。
「何だこのガキは? 俺の魔法を切ったのか?」
声を聞くとそいつは男だった。
俺は何も言わずに男を睨み続ける。
「やめて! その子は私の弟子よ!」
「弟子だと? ……成る程、お前が私の申し出を頑なに拒む理由はこのガキか」
「そうよ! それに私は貴方の考えに賛同は出来ない、例えこの子がいなかったとしても着いていかないわ!」
何のことだ?
話の流れがわからない。
「先生? 一体何があったんですか?」
「……どうでもいいことよ、貴方は心配しないで」
「どうでもいいだと? 私の考えが?」
男の雰囲気が変わった。
怒りがそのまま魔力に変わって行く様に体から滲み出ている、しかもかなりの魔力量だ。
こいつ、相当強い……。
さっきのフレアボムを切れたのは、恐らく手を抜いていたからだ。
本気を出したら、太刀打ち出来るかわからない。
「そうよ! 私は二度と間違いは犯さない! 貴方の考えはいずれ貴方自身を滅ぼすわ!」
「……ふん、興が冷めた」
男はアーリアさんから視線を外し、こちらに向かって来た。
思わず身構えるが、そのまま俺の横を通り過ぎて行く。
「ガキ、名前は?」
「……アルファンド」
「そうか……アルファンド、お前ならばいずれわかるかもしれん、私の考えを」
「どうでしょうか? 先生が貴方の考えは間違いだと言っていました。 ならばそれは事実でしょうから俺が賛同するとは思えませんね」
「ほう…ただのガキだと思っていたが、中々頭が良い様だ。 ならばその女の過去を知った時、"白銀の魔女"としての過去を知った時にお前がどう考えるのか見物だな」
「白銀の、魔女……?」
俺の疑問の声を聞くと、男の姿は突然消え失せた。
転移魔法だ。
残された俺とアーリアさんは無言のまま、しばらく動けなかった。
「ごめんなさいアルファンド君、危険な目に会わせたわ」
「いいえ、そんなことありませんよ」
あれからアーリアさんに促され、俺はアーリアさんと向かい合って話をしていた。
「あの、あいつは何者なんですか? あの魔力量、只者では無いと思ったんですけど」
「……あいつはウガルド、この世界に数人しかいない大賢者の内の一人よ」
「だ、大賢者!?」
やべぇ、俺とんでもない奴に喧嘩売ってたのか!?
大賢者って言ったら魔法使いの上級者、太刀打ち何てものじゃ無くて俺なんて相手にすらならないじゃないか!
さっきのは本当に子供だと思って手を抜いていたんだろうな。
「大賢者って……そんな奴が何でここに? そもそも考えとか、先生の事を白銀の魔女とか、一体何の事なんですか?」
「そ、それは……」
アーリアさんが顔を伏せた。
成る程、余り過去は話したく無い様だ。
そりゃそうか、誰だって知られたく無い過去の一つや二つある。
「先生、言いたく無いことだったら無理に聞こうとは思いません。 だから顔を上げて下さい」
「アルファンド君……」
「例え何があったとしても、俺にとって先生は先生ですから」
俺だって人に言えない過去、転生したという過去があるんだ。
だから、無理には聞かない。
「ただ先生、これだけは聞かせて下さい」
「な、何?」
「先生は何処かに行ったり、いなくなったり……しないですよね? ずっとここにいてくれますよね?」
不安だった。
先程あの男、ウガルドの話を聞いてもしかしたらアーリアさんが姿を消してしまうのではないかと考えてしまった。
アーリアさんは俺にとって魔法の先生であり、偉大な師匠なんだ。
俺が剣術と魔法の特訓を毎日してるのはアーリアさんの為でもある。
だから、もしいなくなってしまったら……。
「……アルファンド君!!」
突然、アーリアさんが抱き付いて来た。
「アーリアさん……」
「大丈夫よ、私はずっとこの村にいる、貴方に魔法を教えてきちんと一人前にするわ!」
そっか、大丈夫なんだ……良かった……。
アーリアさんの香りが、温もりが、何処か心地よかった。
「ま、待って!! アル!! 何してるのよ!!」
「ちょっとエミリア! 不味いよ!」
扉が、勢いよく開け放たれた。
驚く俺とアーリアさんの目の前に、俺の親友、エミリアとウィルの二人の姿が飛び込んで来た。
あ、バレた……。




