第二話 『天真爛漫』
不安に思っていたのだ。
そもそもこの状況に陥ってしまったのは、宇宙船がなんらかと衝突してしまい、運航すること自体が厳しくなるほどの崩壊が起きたからだ。
それに加え、自分自身もこんなにも満身創痍の状況だったのを、ラーレに助けられ一面を取り留めたのだ。
自分でさえこんなひどい状況になってしまったのだから、船が無事であるとは到底思えない。
だけども、任務を達成して帰還するために安否確認は必要不可欠なのだ。
「一緒に墜落したはずの船は今どこでどうなっているんだ?」
「なんだそんなことでありますか」
「そんなことって言われても、こちらとしては確認しとかなきゃいけないことなんだ。だから教えてくれ。船はどうなっているんだ」
「あるでありますよ」
船の存在がこの星に在ることを聞き、今まで自分の中にあった不安が解消し安堵する。
自分だけがこの星に放り出され、船だけが今も宇宙空間にあるかもしれない。その可能性はなかったのだ。
「そっか。またあの船で旅ができるんだな」
「ん?何か勘違いをしてるであります」
「勘違いする要素なんてどこにもなかっただろ」
「えーと…そうでありますね。あれを見てほしいであります」
そういって、気まずそうな顔をしながら自分の背後にある窓に指をさす。
自分もそれに続き、指す先の光景を見て体から力が抜け理解を拒んだ。
目に映ったそれはただのスクラップ。
なのに、先ほどの言動からそれがあたかも宇宙船だったかのような言い方だ。
いや、十中八九そうなのだろう。
理解をしようとしなくとも、もうどうしようもない現状に苛立ちを覚え、叫びたい気持ちが芽生えるがそれを行動に移す気力も生まれない。
だからこそ、冷静になって今までの自分の行いのどこが悪かったのかについて考えてしまう。
船が形を保ったままこの星にあると自身の中で、完全に無い可能性を生み出し信じて期待して、この星で船がスクラップになっている一番の可能性を除外していたのだ。
先程までの発言がどれだけの戯言を吐いて恥を積み重ね、自分を惨めにする。
その行為が、命の恩人に対して希望をへし折る行為を強要していることに思考がたどり着くが、それよりも先に少し苦しそうな顔をしたラーレが喋り始める。
「言い方を変えるであります。ラフィ、あなたがどんな状況だったのか覚えているでありますか?片腕がとれて体は潰されていたであります。そんな状況で今は無傷で命があることは奇跡のようなことなのであります。そんな状況に陥ったあなたと共に落ちてきた船が無事なわけがないでありますよ」
言われてしまった。
見知らぬ誰かの命を助けてくれた人に、なんでこんなにも苦しい顔をさせなければならないのか。
自分は馬鹿だ。大馬鹿だ。
一度は落ち着いて船の安否を確認しようとしてたはずなのに、この星に船があるという情報だけで勝手に盛り上がって、絶望して。
「楽観主義にしても甚だしいだろ」
顔を顰めて自分の今までの行動にそう呟く。
「そこまで落ち込まないのであります!」
ラーレの顔と声によって、また思考と視界が遮られる。
「落ち込むのは早いのであります!船は無事ではないでありますけど、運がいいのであります!」
「ごめんな…ラーレ…慰めてくれて。少し、いや結構惨めな姿を見せた。出会ってすぐにこう何度も助けてくれようとして。だけどもういいんだ」
「だ・か・ら!落ち込むのは早いであります!」
「早いも何も、船が無様なスクラップの山に成り果てたんだ。もうどうしようもないよ」
「もー、人の話を聞いてないでありますね。そんなに諦めたいなら勝手に諦めるのであります。だけど、もし不可能を可能へと昇華する覚悟があるのなら、ヴェルン星一番の天才の私が船の修復作業に裨益させていただくのであります」
「え…?な…なんで!命を助けてもらって船も直すのを手伝うって、そこまでしてもらう理由なんてどこにもないだろ。自分の記憶がないからといってもあんたと知り合いじゃないことぐらい自分でも分かるよ!」
実際に自分の言っている事は間違っていない。
初めて宇宙空間に出て旅をして、その途中で不運なことに何らかと衝突して墜落してしまった。その後ラーレに命を助けられて今に至る。
記憶が塗り替えられてない限り、ラーレ・ダーレとは以前からの面識がない。
そんな彼女が、助けるといっているのだ。
「簡単なことなのであります!私は研究者、未知なる事柄が目の前にあるのなら探求せずにはいてもたってもいられのであります!」
「そんな理由で、命を助け船の修復も手伝う?そんな都合のいい話があるわ……」
あるわけないと言おうとした口が止まり彼女の発言や行動、目を見て違和感に気が付く。
今までの発言にはどこか大人びたような雰囲気を感じていた。
しかし、今の彼女の目には好奇心が宿った幼い子供っぽさだけが醸し出されていた。
それは、知り合って間もない自分でも気付けるほど人が変わったかのように感じられた。
「私は、私のためにエフィの命を救い、エフィの船の修復の手伝いもするのであります。だから、エフィは何も気に病むことなんてないのであります!だからそんな…そんなどうなってもいいみたいな顔をするのは止めるのであります!そんな顔はもう…見たくないのであります!」
涙ぐみながら勢い任せ叫ぶその言葉は、ラーレ自身の本音を感情に任せて嘘偽りのない言葉が並べえられているように感じた。
「だから今ある状況にうじうじしてないで、早く前向いて私に手伝わせるのであります!」
幼い子にここまで言われてしまっては、断ることのほうが大人げなく感じてしまう。
なら、助けられた命を無駄にせずに不可能に近い船の修復作業に挑もうじゃないか。
初対面で自分よりも年下の子に手伝ってもらうのもおかしな話だが、ラーレはヴェルン星で一番の天才と言っていた。
だからこそ、今自分にできることは幼いこの子を信じるしかない。
いや、信じるんじゃない。
この子の好奇心に応えてあげるのだ。
「悪かった。覚悟を決めるまでに時間をかけすぎた」
「前を向けたのでありますか?」
「あぁ。だからこそ改めて、自分から頼まさせてくれ。命を助けられたばかりなのだけど、もう一度自分を助けてくれないか?」
ラーレの顔がまぶしいぐらいに笑顔になり、元気よく答える。
「任せるのであります!私の力を借りるのだから沢山扱き使ってやるので覚悟するのであります」
「まかせろ。なんせ不可能を可能にするんだろ?重々承知してるよ」
抜けていた自分の力が、心の底から舞い戻り今ならなんだってできそうな気分だ。
それに加え一時的にでも、心強い仲間もできたのだ。
だからこそ宇宙船を修復して、必ず任務を完遂してみせる。
無邪気な心に救われる時ってありますよね
それにしても、ラーレ・ダーレをここまで動かすのは好奇心だけなのでしょうか
第三話は週末までに更新できたらいいなと思ってます
(追記)
7月10日17時に第三話を投稿します。




