第98話 招かれざる客5
エルフ
それはファンタジー世界においてあらゆる種族の頂点に立つ孤高の上位人種
見目麗しく強大な魔力を持ち永い寿命を謳歌せし精霊と人の中間の存在
人里離れた森の奥深く他種族との交流を避けひっそりと気高く世界樹を守っている
っていうのがわたしの思っていた印象なんですけどね・・・
目の前の2人のエルフは不法侵入、器物破損の現行犯としてDOGEZAをしている
「ぴぇぇ~、ずみませ~ん。大切な宝珠を割ってしまいました~」
「すみません、お嬢様が暴走したとはいえ止められなかった私にもほんの少し責任があります・・・重ねてお詫び申し上げます」
う~ん、どこから見てもTHE:エルフさんだね
サラサラ金髪、人形のような整った顔、手足も長くてモデルさんみたいだゴブ
DOGEZAをしてもとても美しくサマになっているゴブ
会計士さんも先程から困惑顔だ
「と、とりあえずお顔を上げてください。エルフの・・・それも七大氏族のご息女がそのような格好をしているのが他所に知られたらこちらも非常にまずいのですよ」
やはりエルフの国とは政治的に何らかの盟約があるのかな、それとも戦力の差があって強気に出られないとか・・・さすがエルフってところゴブ
「それは本当か?それではここでの出来事は全て不問ということで良いかな!?」
ちっさい方がガバッと起き上がってきらきらした目で会計士さんを見る
「それは無理です」
「ぴぇぇ~、あやつはウソつきじゃ~。もめ事にしないと言うたのに~」
「お嬢様・・・宝珠の破損はどうしようもない事実ですしこうなっては事情を全て説明してあやまるしかないのでは?お嬢様が」
このお付きのエルフさん、一緒に侵入してきたのにお嬢様に責任を取らせようとする魂胆が節々に垣間見えるな・・・別にいいけど
「どうしましょうか、ライアン殿。ウソか本当か七大氏族といえばエルフのなかでも発言権が大きく、次の族長候補になりうる貴族のようなもの。捕まえはしても我々の範疇を越えております。ここは侯爵家へと報告して判断を仰いだ方が良いかと」
「っスね~。エルフさんの共同体とは不可侵で盟約しているっスからね~。現国王も森の奥深くで採取される貴重な薬草や鉱物、宝石を交易で欲しがっていたはずっス。今のところお互い良好な関係を築いていたはずっスよ~」
エルフにとって普通に手に入る薬草や不要な鉱物、宝石も人間にはとても貴重なものなんだそうだ
代わりにこちらからは塩、砂糖、お酒や布、工具などの日常品をメインに交易しているらしい
相互に深く干渉せずに不足分だけを補いあうなんて理想的な付き合い方じゃないか
ただその理想的な関係にヒビが入る事案が現在進行形で発生中なんだゴブ
「とりあえず2人を連れて屋敷に戻って相談するっスね・・・」
「そうですね、何か事情もありそうですし領主様に後は全てお任せいたします」
「そういう訳で2人には大人しくついてきて欲しいっス。そんなに悪い話にはしないと思うっス」
ライアンが貴族スマイルでエルフさん達を安心させる
「はぁ~、領主様に会いに行くのか~。宝珠のこと何てあやまればいいのかしら」
あぁ~、割ってしまったガラス玉のことを気にしているんだな。
聖水生成魔道具のダミーとして役に立ったゴブな
今度はもう少しキラキラ多めにしておくか
「ゴーブ」
わたしは割れたガラス玉を[神界]で作りなした
今度は中心付近に星くずを散らばせてくるくる回ると光に反射してキラキラするようにしてみた。ビー玉にこんなのあったゴブな
「は?宝珠があっさり再生したんですけど、しかも前より神々しいし」
「どういうこと?ゴブリンが神器を造っている?エルフの存在価値はどこ?」
エルフのお二人さんは軽いパニックになっているがまわりは平常運転だ
「はいはい、その辺りも差し支えなければ領主様から説明があるかもっスよ~」
「こちらの被害は基本的にゼロですからお構いなく、聖水生成は問題ありません」
「しかし警備と施錠には問題がありそうですね、さすがにまたエルフクラスが破りに来ることはないでしょうが・・・少し甘く考えていたようです」
会計士さんはエルフとの問題よりも簡単に侵入を許したことに悩んでいるようだ
「しかしなんでまたこんな侵入しようなんて思ったっスか~?」
「そう、それよ!この町に来たらタダで聖水のお風呂があるとかインチキ臭い宣伝していて、最初はまた人間がせこい商売でも始めたんだと思って冷やかしに来たらホンモノの聖水が溢れてるじゃない!これは大変だと思って発生源を探ってた訳よ」
「私たちエルフは樹木と人間の合いの子のようなものですからね、きれいな水には目がないのです。全身を聖水に付けて沐浴できたのは初めてですがそれはもう言いようのない幸福を味わうことが出来ました」
へぇ~、エルフは半分植物なのか。水を全身で吸収して味わうことが出来るのか?
植物の特性があるって面白いな。だから長生きで感情の起伏が少ないのかね
目の前のお2人さんは欲にまみれて騒がしいけど
「知っているかもだけど、わたしたちエルフはきれいな水と日光だけでも一応生きていけるのよ~村の年長者のみんななんて食事もせずに毎日川に足を突っ込んだまま日向ぼっこしてるだけなんだから!人間界にはこんなにおいしいものがあるのにさ」
「あと公然の秘密ですが世界樹がここ30年でなんだか弱ってきておりまして、原因の調査と解決方法を探すことが最近のエルフの使命となっているのです。こちらの聖水がその解決方法の一つになるのではないかと」
「そーよ!世界樹の回復を成し遂げた氏族は筆頭氏族になって次期代表が内定するのよ。まぁ今の代表が引退するのはあと300年は先だけど」
「はぁ、エルフさん達も跡目争いがあるっスね。大変っス」
200年とか300年先のエルフの代表とか人間には興味の薄い案件ですな
「実はリリテララム様は氏族長の娘ではありますがすでにお兄様が調査のために代表して旅立っておられるので村を出る必要はなかったのです、ふぅ~やれやれ」
背の高い方のエルフさんがため息を付いてちっちゃい方のエルフを見ている
どこの世界もわがままを言ってまわりを巻き込んで困らせるじゃじゃ馬はいるもんだ
「ちょ、ちょっと~、わたしが我儘で旅に無理やり付き合わせてるみたいな言い方じゃない~、調査するフリをして人間の街のおいしいものを10年ぐらい食べ歩こうって誘ったら荷物まとめてすぐに合流したくせに~」
「うぐっ、わたしは世間知らずなお嬢様がいきなり人間たちの街に行ったら騙されるか魔法をぶっ放してお尋ね者になるか心配で長に許可を得て仕方なく出たんです」
「その割には街に着いたらすぐにグルメマップを手にしてなかなか次の街に行こうとしないじゃない~。私よりいつも多く注文するしね~」
なんだよ、特に使命なんて与えられてない観光で来ているだけじゃないかゴブ
エルフも人間も若い女性は考えることは似ているゴブ、少し安心したゴブ
そしてこいつら宝珠が元通り直ったから罪の意識がさっぱり無くなっているな・・・
もうこのまま何事も無かったことにして帰しちゃえばいいのでは、何かめんどくさそうな気配がするし
「ここの聖水も効きそうっスけど、お屋敷の聖水はもっと濃くて効き目がありそうな気がするッスけどね~」
あっ、こらライアン、余計なことを言うんじゃないっス・・・ゴブ
「「その話、もっと詳しく!!」」
やっぱりね




