第97話 招かれざる客4
「ゴブ~」(今日もさわやかな朝~)
毎朝の日課のゴブリン体操と侯爵邸敷地をジョギング1周すれば体調も気分も絶好調
今日は馬屋の裏でお花摘みをしてしまったゴブ
最近はキラキラした草や花がわたしの腰上まで生い茂っているのでしゃがめば隠れるのでそんなに恥ずかしくないのだ
馬小屋のお馬さん達とも仲良くなって最近はあいさつしてくれるようになった
こちらもあいさつと回復、浄化のお礼を毎日かかさず行っている
おかげでお馬さんたちも健康でケガもせず毎日の訓練をこなしているようだ
まだ成長期らしく何か体格が前よりも1.2倍くらいになっているゴブ
みんな成長してうらやましいゴブ、わたしはちっとも大きくなれてないぞ
今日は王都からお館様と若様(アイラ様のおじい様とお父様)が帰ってこられるので奥方様は朝から上機嫌だ
屋敷内も心なしか慌ただしいような気がする
まぁゴブリンであるわたしにはほぼ関係ない話ですけどね
お休みの女神の日は最近毎週ライアンと貧民街・・じゃなかった南第2区にお出かけしているのだ、今日も行ってくるゴブ
コスタリア侯爵家が正式に領都の一部と認めたことで今日は一段と人が多いな
以前はみすぼらしい恰好をした子供たちや冒険者くずれの昼間から酒を大通りで飲んでいるような奴らばかりだったけど今は普段着の町人たちが温泉に入ったり食事をしたりしてここが元貧民街とは言われなければ気づかれないだろう
「ライアン様~、今日は聖女様と一緒じゃないんですかい~」
「ゴブリン様~今日も帰りに肉串を持って帰ってくだせぇ」
うん、活気があって非常に良いゴブ
ゴブリン差別も無いし本当に住みやすい町になったよな
教会にはまだ順番待ちの列が少し残っているが前よりは大分ましになったな
そして隣の聖水公衆浴場の方はすごい列が出来てしまっている
「ゴブ~」(今日が女神の日で本当は前日に入らなきゃいけないのに混んでるゴブ)
「あ~、もう女神の日とか関係なく癒しの温泉に一度でも入りたくて押し寄せてきてるっスね~、大変だこりゃ」
癒しと浄化の温泉の噂は領都中に広がっているようだゴブ
少し見上げると高台の丘の上にも湯気が上がっている、高い壁で囲われているが向こうは露天風呂になっているのかな
そしてでかでかと王家とコスタリア家の紋章が描かれているようだ、紋章知らんけど
コスタリア家の紋章は知っているのでその横に漢字の田のような4色のカラフルな紋章が王家の印ってことだな
「っスよ~、デン・セントラル王家の紋章は初代建国の勇者パーティの4人を表しているっス、正方形4つは永遠に続く安定を意味しているとか、なんとか・・・っス」
さすが公爵家の端くれのライアンは歴史にも詳しいですな~
まぁわたしはゴブリンなんでこの国の歴史とか貴族の紋章など関係ありません
向こうはさすがに元貧民街からではなく南区の大通りから入るようだ
温泉施設自体は南第2区にあるようだが休憩所は南区ってことか
ドノバンと南区の商業ギルドのお偉いさん達が色々協定を結んだとか言っていたな
面倒な上流客の相手は商人ギルドに任せて入浴料だけ高額で貸し出すとか
うまくやっているようでなによりゴブ
「ちゅ、ちゅちゅ~!」
んん?テトの従魔の白ネズミたちが呼んでいるゴブ
緊急事態発生のようだ
「ゴブ!」
「っス!分かっているっス。教会本部にすぐに向かうっス」
3匹同時に呼びにくるのは緊急度Aのサイン。聖水発生の施設が破壊工作されたか、シスターが拉致されたか、それとも・・・
とにかく急ぐゴブ!
「ゴブ」(聖魔法[強化][回復(持続)])
一応ライアンには聖魔法を付与しておく、いきなり戦闘もあり得るからな
「おおっライアン様、丁度良いところに。我々では対応しきれない事態なのです、どうぞこちら、聖水発生設備の地下室にお願いします」
どうやら侵入者があったらしい、幾重もの警備と結界を抜くとは中々の手練れだな
厄介な組織が絡んでなければいいけど
地下室に入るとまだ賊は中にいるようだ、何やらぎゃーぎゃー聞こえる
「ちょっとぉ!この玉、手から離れないんですけどーけっこう重いし!」
「お嬢様、まずいですって。もう人が来ちゃってます、早くそれをあきらめて捨てて逃げましょうって」
「だから~捨てられないから困ってるんじゃないのよ~」
地下室の中には若い女性が二人
スラリとした細身に金髪でものすごく整った人形のような顔立ちに薄緑の民族衣装
そして長い耳・・・
間違いなくエルフさんですね
この世界にもエルフはいるのかな~と思っていたがそのまんまのイメージ過ぎて逆に笑ってしまったゴブ
でもライアンと会計士さんは結構真剣な表情をしていて深刻な事態のようだ
エルフと人間族は対立しているのだろうか?
犯罪者を捕まえても国際問題になるから大げさに出来ないとかそういう感じ?
とりあえず宝珠(ガラス玉)に掛かっている結界魔法を解いてあげるゴブ
「ゴブ」(結界解除ゴブ)
背が小さいほうのエルフさんが両手で抱えていた玉がスルっと手から外れ床に落ちた
がしゃーーん
けっこう大きな音がなって玉が割れてしまった
「どひぃぃ!・・・宝珠、宝珠を落として割っちゃった!これじゃ里のみんなに怒られるぅ~世界樹の復活が~私の次期村長の座が~」
「お、お嬢様、それどころじゃないですよ!後ろ、後ろ」
小さい方のエルフが振り返ってこちらと目が合う
「・・・・」
5秒ぐらいは見つめあっただろうか
「初めてお目通りいたします、私、シャルナリリア大森林共同体はエルフ族七大氏族の族長が娘リリテララムと申します、こちらは従者のシャルルレリアです。みなさまごきげん麗しく」
「あ、はい。これはご丁寧にどうも」
「それでは私たちはこれにて失礼いたします」
エルフさん2人はすました顔で何事も無かったかのように部屋から出ようとしている
ライアンも会計士さんもあまりに自然な流れに思考が追い付かないようだ
「ゴブー!」(そんな訳あるかー!侵入者、器物損壊ゴブー!)
「うわぁ!やっぱりダメだった~、許して~これには深い訳が~」
確保!、確保ゴブ~




