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7階 ~呪われマンション『ヒアアフター』~  作者: 犬冠 雲映子
ユルカのゆるゆる夜勤勤務
58/59

57話 〈沼底の世界〉

「あっ」

 沼と言うからには濁っているとばかり思っていたが、あるのは暗がりだけだった。底無しの闇とわずかに水面からの光。



 たくさんの人が水底で括り付けられ、逃げ出そうとこちらへ助けを求めている。


 中にはあの子どもたちもいて、老若男女、幅広い時代の人たちがこちらを仰いでいる。ホテルマンの制服の者も、そうして見慣れた住人の人たちや7階の住人も。


「お七さん! お七さんはどこ!」

 お七さんの姿が見当たらない。いや、端から彼女の容姿を知らないのだから見当がつかない。



 浮遊する世界で唯一がんじがらめになったモノを見つけた。着物姿の男や他にワイシャツをきた男もギッチリ詰め込まれ、白目をむき、死んでいるかの如く漂っていた。



 ――さあ、殺めろ。殺めろ。その男を。



 脳内に女性の声音がして、あの人たちは歴代の管理人だと悟る。


「お七さん! オーナーは?」

 答えはない。現管理人を手放すと、腰に括り付けていたマジナイ付きのナイフを手に取った。


 塊の根源にある湖底へさらにもぐり、幾重にも絡みついた紐をナイフで千切ろうとする。とてつもなく硬い紐だ。ユルカは全身の力をナイフに込めて、きり裂こうとした。


 ザシュッ。



 手応えがあった。紐がちぎれて、彼らが上に上がっていく。


「何をする!」

 いきなり沼の底から手が出てきて、足をつかまれ引きずり込まれそうになった。だが手を止めない。



 極悪非道の管理人たちを救う義理はない。だが、この連鎖を止めなければ延々と沼が穢れていく(・・・・・・・)


 紐が完全にちぎれ、彼らは解放された。ユルカはオーナーと思わしき男に沼の泥に沈められた。

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