56話 〈作戦実行〉
「で、私たちはどうすればいい?お七さんを成仏させるには」
「お七さんは最悪……この土地の神として祀りあげられてしまったら、成仏はできないかもしれない。ただオーナーや……彼女を殺した男をお七さんから離せば」
シンリュウは真面目な顔でエレベーターを指差し、緊張した声色で言う。
「7階に行って、お七さんに会うしかない」
「ふうむ……それは危険すぎない?」
広田が横やりを入れる。マンションの住民なら耳にタコな7階だ。最低、全滅しかねない。
「許鹿、貴方ならできる。だって貴方は百戦錬磨の霊媒師だったんだから」
「え、え?! 私っ?!」
シンリュウは一つの写真を渡してきた。彼女と自分自身が楽しそうに笑顔で並んでいる写真だ。
「私もこの場所で囚われていい。その覚悟でやってきたんだ」
「し、シンリュウさん」
写真の中の許鹿は自信に満ちあふれているように見えた。
「るるみも手伝う」
「管理人さん、7階へたまに行っているようですが……何をしているんですか?」
草木も眠る丑三つ時を過ぎた深夜、ユルカは何気ない仕草で管理人へ問うた。なるべく通常通りを装い、受け付けの席を立つ。
「え? 7階に? ……ユルカちゃんはなんでそれを?」
いつもどこかごまをすっているような態度の管理人の顔つきが一変する。
「防犯カメラに映っていて、それに……管理人さんの部屋からたまに子供の泣きく声がするって苦情が来るんです。管理人さん、何をしているんですか」
語気を強め、ユルカは視線を合わせた。もうお互い、仕事の同僚の相貌ではない。
「あ、あ、なんでそうなるかなぁ〜〜、気づかなきゃいいものを、君はいつも、そうやって」
不格好な笑いを浮かべて距離を縮めてくる。しかし視線は外さない。絶対に。
「ギャア!!」
管理人の頭部を麺棒と護符が貼られた。「ギャアアアア!!!」
シンリュウが作った護符が効いたのか、彼はのたうちまわり、蜘蛛に絡めとられたように糸でグルグル巻きにされた。
どういう原理か分からないが、シンリュウが目配せしてくる。
「管理人さん、今からお七さんに会いに行くわよ!!」
藍田と広田と手伝い、7階の封印を壊し彼を抱えて乗り込んだ。
「な、何をするんだ?! や、やめてくれっ! やめて!!」
「管理人さんはどうやってお七さんと会ってるの〜〜?」
グングンとエレベーターが上昇していく、チン、と音を立て7階に停止した。
三人は固唾をのみ、真っ赤な内装を眺める。
「ユルカちゃん、後は頼んだわよ。私たちの罪を押し付けるのはひどい行いだって分かっているけれど、……今、でも死んでも後悔はないわ」
2人に背中を押され、7階の扉が開いている部屋に管理人を引きずりながら猛突進する。
「がんばれ、私! 私は負けない! だって百戦錬磨の霊媒師だった、みたいだもん!」
部屋に飛び込むとザブンと底なしの水中が広がっていた。管理人はもがきながら恐怖で白目をむいている。何があってそこまで怖がるのか……
るるみは強いな。





