最終話
「お七さん、お七さん、もういいよ。貴方を殺めた地主の一族も村の人たちもこの世にいないよ」
オーナーの皮を被った「お七」を内側から必死に取り出そうとする。
「そんな謳い文句で恨みがなくなる訳ないよね。でももう、良いんだよ」
正体を現したお七はどこにでもいる年頃の娘だった。きつく抱きしめると、重力に伴い下がっていくのを感じながら、それでもいいや、と瞼を閉じた。
「二人でやっていこうよ。今度は苦しい場所じゃなくて、この土地に縛り付けられた人たちを安心させる場にしよう」
「そんなの、何百年かけてもできないわ。貴方にはこの苦しみが分かるわけない」
「してみせる。約束する」
「神と約束するなんて、愚か者よ」
「うん。私はバカだから」
「私も、つくづく情に弱いオンナね……」
二人は沈んでいく。底のない暗闇に。
エレベーターの底から爆発的な濁流が噴き出し、全ての階に本流となっておしよせる。
ロビーもただ事でなく、物にしがみついたシンリュウも巻き込まれた。それは外にも溢れ出し、視界はめちゃくちゃになる。
「ユルカ、ありがとう」
るるみが嬉しそうに呟いた声がして、意識が途切れた。
「……あ、いってて……助かったのかしら」
「許鹿?! 許鹿は?」
ロビーに三人は転がっていた。いつもの昭和から変わらぬ落ち着いた内装。そうして、
「帰ってきたよ」
フロントマンに近い制服をまとったユルカがエレベーターから降りてきた。「か、管理人になっちゃったのー?!」
藍田のツッコミに彼女は首を横に振る。
「ううん。マンションの、いや、沼の管理者になった……みたい? とりあえずシンリュウさん、ご入居おめでとうございます!」
「……。それって私が死んだって暗に言ってるじゃない」
「あはは」
マンション『ヒアアフター』は古くから怪奇現象が起きるとされ、変な噂が絶えない。飛入市の市外でもそれは有名だ。
それは今でも変わらない。たまに浮浪者の死体が見つかったりするが――変わったのはマンションの周りは水が湧き出し、沼があるという点だ。いきなり湧き出した沼に、住民は恐れおののき、神社を立てたという。
それもまたユルカたちの知らない話。
2024年〜2026年、約2年もかかりました(汗)
何とか完結させることができました。
小説を執筆している間、めげそうになったりもしましたが、物語の内容にそって物事を調べたりして知識もつきました。
めげたりしょげたりしても、身につくものは多少なりともあるみたいです。
見つけて頂きありがとうございました。





