53話 〈正体見たり〉
(この土地に怖い神さまなんていない。村の人たちが自分たちの行いで生み出してしまったんだ)
ユルカは埃っぽい室内にザワザワと人混みの声がするのに緊張した。外で何かが起きたのか?
いや、老若男女の囁く声と存在だった。沼に沈められた。
――沼には、やはり人は後ろめたさにより祟りを恐れるらしい、神を祀り、祠を沈めたという。土着の珍しい事例ともとれる……
(祠を?)
ユルカは棚にある書類を漁る。スプリンクラーの使用説明書。ビジネスホテル時代のシフト表。
朝食の献立のようなもの。
そうしてビジネスホテルの代表のノートが見つかった。
『あの女が、女のすすり泣く声がして。ホテルの評判はガタ落ちだ』
やはりお七の怨念に悩まされていたらしい。
『広田一族から貴重な情報を譲り受けてもらった。忘れないよう、記しておこうと思う』
(広田さんの)
――……村は大損害を受け、娘の魂が鎮まるよう祈った。
代わりに娘の魂を鎮めるために安政に旅館が建てられた。先祖にあたる一族により、社を管理し、祀りながら裏で女中や丁稚奉公を生贄を捧げた。旅館の名前は『丹君旅館』。
魔除けの赤を使った門や庭の祠の鳥居が火をイメージさせるとして評判は悪かったが、しばらくは何も起きず村は安心した。
それから旅館の敷地内にある池は樋之池と呼ばれるようになり、旅館の呼びかけによりは小さな社を立て、いたずらに近づかないようになった。
それから昭和29年になり、人口増加と共に池がある土地を地主の意見をつきはね無理やりホテルにした。
『ホテルは順調かと思えた。なのに。
最初は7階での噂だった。ホテルスタッフから夜中、7階の部屋から女性からの電話がある、と。客がいない部屋からの電話。
不気味だがとりあえずは支障はない、そのままにしておこうという話になった』
代表によればホテルが火事になる前から、不祥事が相次いでいたみたいだ。
水浸しの和装の女性が歩いているのを客やホテルスタッフが言うが、無かった事にされていた。すすり泣く声が廊下からすると苦情がくる。
たまに女性がバスタブで溺死してしまう怪死も相次いでいた。理由は不明で、自殺ではないかと警察も首を傾げる。
また7がつく日は必ず水浸しになる場所があり、隠蔽されていた。地元の神社の神主も取り合わず、ホテルは衰退していったのだった。





