52話 〈人の悪質〉
――倉庫室の書類にすべて書いてあるよ。明日、特別にね。マスターキーは三輪車のハンドルの中。
言われた通り、5階の角部屋──コの字型の角にあたる部屋のドアを鍵で空けた。
ドアを開けてみると内側にやはり『staff only』の看板が貼られていた。どうやら倉庫として使われていたのは事実らしい。
入念に鍵を閉めてから、ユルカは懐中電灯片手に部屋を照らした。書類の束だらけだ。
棚からパサリ、と何かが落ちてユルカは拾ってみる。新聞のようでハッと息を呑んだ。
新聞紙には管理人さんの写真があったからだ。
『女児連続誘拐犯、並びに女性殺人容疑の男 エレベーターに落下し死亡?! 警察はどう出る?!』
ゴシップを専門とした新聞紙らしく、管理人の犯罪を事細かに書いている。
彼はこのマンションで女児を誘拐したあと、暴行し、殺害していたのだそうだ。驚いた事にすでにマンションは廃墟化しており、無断で7階の部屋で……。
るるみは管理人に殺されたのだ。
女性の遺体は貯水槽から見つかったといい、警察は男性が犯行を目撃した際に殺害したのではないか――と。
(そんな、あの人が……)
その他にゴシップ誌の他に、たくさんの犯人の新聞が出てくる。騒音騒ぎで逆上した音楽家。不法侵入して娘を監禁し、痛めつけていた両親。彼氏をバラバラ遺体にしていた女性……7階にいる住人たちは皆、何らかの犯罪を犯してあの階に閉じ込められている。
『飛入市の民俗、歴史について』
――飛入市にはある沼があり、飢饉になると口減らしに老人や子供を放り込んでいたとN氏から聞いた。夜になるとそのせいか、火の玉が浮遊していたとも。
しかし飢饉以外にも免罪と思わしき者も沼に沈められていたという。市では有名なお七も自身から身投げしたのではなく、地主であった男の家長により沈められたとも噂されているが、地主が絶えた今、定かではないが。
あの沼は埋め墓に近いのではないか。疫病や不都合な死体を放り込むための、ナゲコミだったのだろう。





