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7階 ~呪われマンション『ヒアアフター』~  作者: 犬冠 雲映子
ユルカのゆるゆる夜勤勤務
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51話 〈ゆるく迫られる決断〉

「思い出せない……思い出せないの! 私が誰なのか、生前の管理人さんとの会話も!」

 何も頭に浮かばない。あるのはマンションとの日々だけだった。


「管理人さんはよくいなくなるし、私は、防犯カメラを見てるから」


「ユルカ……」

 るるみはしゃがみこんで、とジェスチャーした。言われる通りに腰を下ろし、耳をかす。



「倉庫室の書類にすべて書いてあるよ。明日、特別にね。マスターキーは三輪車のハンドルの中」



「なん……」


「許鹿。また来るけど、一緒に記憶を戻す方法も考えよう。そうしたらマンションから解放される、と思うし……」

 シンリュウが受け付け越しに静かに言った。

「マンションから……?」


(私は外に出たらどうなっちゃうの? 幽霊になるの?)


 不安がジワジワと胸に広がる。そんな様子もつゆ知らず、彼女はスタスタと出ていった。





「強引なお友だちねえ。あの子」

「少し怖かったです……私は本当にあの人と友人だったんでしょうか」


「焦っているだけかもしれないわ。私だって友だちが様変わりしていたらびっくりしちゃうもの」

 広田は苦笑し、そろそろ帰るわね、と階段を登っていった。


「るるみちゃん、ありがとうね」


 るるみは頷くと三輪車を漕いで、外へ消えていく。いつものロビーの空気に包まれ、内心ホッとした。

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