50話 〈祟りは7階〉
「ひいい〜〜、成仏してないじゃないですかあ〜〜」
ユルカは7階のおぞましさがさらに増して、夜勤勤務が憂鬱になった。
「この沼……だった場所に住む何かの祟り、かもしれないわねえ」
「沼の化け物の特徴は知っている?」
シンリュウが少し覇気を緩めて広田に問うた。
「確か……火に関する妖怪が住んでいると言われていたわ。大蛇とも違う、干ばつを起こす得体のしれない何かと修験者や神職も見定められなかった。ただ、猿のような見た目をしているって大祖母が言っていたけれど」
「猿……河童? いや、それにしても……」
「河童ってそんなおっかない生き物なんですか!」
「許鹿、もう黙ってて」
冷たくあしらわれ、仕方なくいつもの作業に戻る。7階からはひっきりなしに苦情が来ていた。
(あ〜〜、今日も今日で朝まで大変だなあ)
「旱魃を起こす猿の妖怪なら大陸にはたくさんいるし、不思議ではない。理由があるか否かなんて、アイツらには通用しないから」
「それはソレを神や悪鬼だと認めているの」
「ええ」
二人は何やら難しい話をしている。「あれ……」
防犯カメラに人影があり、ユラユラと歩いていた。ノイズ交じりだがよく見やると管理人さんだった。
「管理人さんが! 7階に!」
「……で、どうしたい訳?」広田が問いただしてくる。
「助けたいの? それとも」
「ねえ、ユルカ。あの人がユルカを殺したの、覚えてないの?」
るるみがまたいつの間にか横にいて、見上げている。真っ白な血の気のない肌が異様で恐怖心を煽った。




