49話 〈お七〉
「でもね。……ある年に村はさらに狂ってしまったの」
江戸時代のある年。
村の若い娘『お七』が強姦に襲われ、怒りと悲しみのあまり恐れられていた沼へ身を投げた。
それから毎晩すすり泣く声がし始め、ついには犯人である村の男が発狂し、娘の家や沼周辺にあった木々に火をつけた。
村は大損害を受け、娘の魂が鎮まるよう祈った。
代わりに娘の魂を鎮めるために安政の年、例の旅館が建てられた。広田の先祖にあたる一族により、社を管理し、祀りながら裏で女中や丁稚奉公を生贄を捧げたのだ。
「え、お七が身を投げても生贄を?」
「お七の身投げにより、さらに沼は威力を増してしまったのよ。だからことさら管理が必要になったのよ」
「広田さんは神主さんの家柄なんですか?」
「まさか? お七さんの親戚だったから、それだけの理由で私たち一族は沼の近くに旅館を移す事になったの。それも修験者や歩き巫女の力を借りて、内装や間取りにも気をつけたわ」
ええ! とユルカはさらに驚くしかない。広田は土地勘があると感心していたが、まさか元凶となった人物の親戚だったなんて。
「なるほどね。忌み嫌われた土地にしばられたから、そんな妖気が漂っていたわけか……」
「失礼ね、この子」
「お七さんはまだいる。るるみ、知ってる」
るるみはロビーで遊んでいたが、やがてこちらへやってきた。
「え、そうなの? ドコにいるの?」
「7階」
八百屋お七……とは一切関係ありません。7階の7からとったら、お七になりました。
後々気づいて悩んだのですが、不快に思われたら申し訳ありません。




