47話 〈飛入ビジネスホテル〉
「藤野は10人目の管理人だった。でも普通だったからすぐ死んじゃった。次の人は長くやれてたけど、7階を調べすぎて死んじゃった」
るるみはソファに座りながら、おっかない事を言う。
「待ってよ。管理人さんは何人もいたの?」
ユルカが知っているのは今、こうして共にマンションを管理している中年男性しかいない。
「死後の世界では何人も管理人がいたけど長くは続かなかった、という訳ね」
「るるみ、みたいに縛り付ける人がいないとすぐ死ぬ」
シンリュウは手記をめくりながらも頷いた。
「貴重な事も書かれているけれど本人の記憶の時系列が曖昧で信憑性に欠けるわ」
「でもビジネスホテルだったんですよね?」
「まあ、高度成長期に無理やり建てたって感じの。私もできる限り調べたんだ。さすがに土地の遍歴は突っぱねられて無理だったけど」
彼女はバッグから古びたパンフレットを1枚、取り出した。
『飛入ビジネスホテル』
変哲もないビジネスホテルのパンフレット。外見もほとんど今と変わらない。
「この土地は中継地だったからホテルの会社が目をつけたんでしょ。宿場町もあったくらいだし」
「へー! 知らなかった。宿場町かあ……」
「でも、縁起が良くない名前だって言われていたみたいだけれどね」
シンリュウは飛入ビジネスにボールペンで書き足した。飛火村、入水村。
それが合併して飛入になったという。
「どういう由来かは知らないけれどあまり良いイメージはわかないわね」
「……まあ、確かに」
ユルカはあの手記を思い出す。火と水、やはり因果というのはあるのだろうか。




