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7階 ~呪われマンション『ヒアアフター』~  作者: 犬冠 雲映子
ユルカのゆるゆる夜勤勤務
44/48

43話 〈広田さんは知っていた〉

「広田さん、何でこの場所が旅館だって言ってくれないんですかっ」

 夜中に帰ってきた広田 晴子にユルカは詰め寄る。彼女は一瞬びっくりしたようだが、いつもの疲れ果てた笑みに変わる。



「……。聞かれなかったからよ」


「は、えーっ。だって私は何も知らないんですよお」



 ――そうねえ。昔はここ、駐車場あたりに池があったのよ。ホテルには庭がつきものでしょ? 


 ――日本庭園みたいな。周りも田んぼだったらしいからこの季節になると、カエルの大合唱ですごかったみたいよ〜。



 彼女は駐車場に池があったのも存じていた。本当はすべて知っているのではないか。


「――それに危険人物に一番近いから」

「え」

 危険人物……るるみがくちにしていた、管理人さんの事だろうか。


「このマンションは……土地は鎮める側と管理する側で成たつの。けれどね、管理する側が善とは限らない」


「広田さんは物知りですね」

「旅館を営んでいた家の者だもの」


 彼女は旅館の名前だけは教えてくれた。旅館の名前は『丹君(にぎみ)旅館』。





「丹君旅館……丹君……」

 ユルカはさっそく、管理室の書類に歴史に関するものがないかを漁った。すると一冊のノートが出てきた。


『藤野 秀和の日記』


 今の管理人の筆記体ではない。丁寧な文字がマーカーで書かれている。




 ――私はどうやら、このマンションに囚われたようだ。

 1ページはそうつづられていた。

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