41話 〈土地の因果〉
「それって昭和の?」
スプリンクラーの注意事項が書かれた書類を思い出す。何度も故障したために使わなくなった、と。
「そう。ユルカはどこまで見た? スタッフルームの、あの書類」
「えーっと、あまり」
「昭和の、ずっと前。るるみはあまり詳しくないけど……、その時代に火事の発見が遅れてたくさんの人が死んだの」
──昭和49年7月15日。管理者によるお願い。
そう書かれた貼り紙がある棚に置かれていた。そう、貼り忘れたものだったろう。
「マンション・ヒアフターにお住いの皆さま。最近、7階にてスプリンクラーの誤作動が発生しています。設置したてなので、不慣れかもしれませんが何かありましたら管理者にお知らせください……昭和って、すごい昔なんじゃ……」
──マンション関係者各位。7階に可燃物は持ち込まない。またマンションには火元になるような物は絶対に持ち込んではならない。スプリンクラーの電源は切り、あの水たまりは即座に処理する事。
──管理者各位。住民からの騒音苦情は適当な理由をつけてください。またスプリンクラーの電源は切ってあるか、必ず確認してください。
どうやらスプリンクラーが度々誤作動を起こしては、廊下を水浸しにしていた。
「昭和49年……今は、何年何だろう?」
「……。るるみは知ってるんだ。ここはマンションになる前は、ホテルだったの。ホテルというよりは、最初は旅館だったんだけどね」
「旅館……って、聞いた事がある」
広田さんが話していた、旅館の話。
──オーナーにあの水たまりが直らないのを、強くお願いして欲しい。住民が怖がっている。水浸しの女が歩き回ってあると、変な噂がたっているせいで、あの水たまりに苦情がたくさんくる。
「ビジネスホテルだった時代も火事があってから、急きょマンションになったんだよ」
るるみは子供だ。だが、彼女はずっと土地に縛られているからか不気味なほど落ち着いている。
「この土地は忌み嫌われている」
「広田さんは嘘をついていたの……」
「さあ、わざとかもしれないけれど」




