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35話 〈幻の火事〉
ユルカはどこからか焦げ臭さが漂ってきたのを察知して、火災報知器が作動していないか確かめた。どの階もピタリと静かだ。
だが、7階だけが不穏なブザーを鳴らしてきた。物理的なものなのか……それとも怪奇現象なのか……。
深夜帯のため、確かめるのはユルカだ。どうしようか、と考え――ふと防犯カメラを確かめる。
7階はざらついたノイズを伴いつつも、通常通りである。
やはり怪奇現象なのか?
焦げ臭さにヒヤヒヤしながらも、ラジオで気を紛らわしていると消防車のサイレンがした。
(なんだ……不謹慎だけど、ご近似さんで火事があったんだ)
凄まじい数のサイレンと臭さにさぞ大変だろうと、ユルカは他人事に監視カメラをチェックしたり、色々していた。
不意にサイレンの音はラジオの楽しげな会話と重なるように流れているのに気づき、ゾッとする。慌てて電源を消すと静寂と、昭和の古くさいラウンジの雰囲気が戻って来る。
「7階かぁ……さすがにこれはビックリするわ……」
うなだれて、しつこいブザーを消す。管理人さんはきっとスヤスヤねているのだろう。




