34話 〈換気口から髪の毛〉
ユルカは昼間、ラウンジを掃除していると、換気口――天井扇からカビ臭い臭いがしているのに気付いた。
「管理人さーん。換気口は掃除しないんですか?」
「ああ……、掃除はしたんだけどね……掃除はしたんだ。止めといたほうがいいよ」
それだけ言うと、彼は気まずそうにエレベーターの点検をしている。ミラーボールが回っているのを誰も何も言わなくなり、変に明るくなった奇妙な風景が広がっている。
「掃除……ふさふさのヤツでちょっとだけ掃除してみよう」
掃除用具をしまっている倉庫に筒状のモップがあったはずだ。あれで汚れを取れば多少は良くなるに違いない。
深夜になり、管理人さんは寝入ってしまった。
それを見計らい、ユルカはこっそり脚絆を立てて、モップを手に換気口を開け、中身をこすった。すると――
大量の髪の毛がでてきた。ズゾゾ、と焼けこげている部分がある髪がモップにこびりつき、床に落ちる。
「あ〜〜……」
ユルカはしまった、と小さく呻いた。
大人しく言葉にしたがっていれば怪奇現象に見舞われなくてすんだのに。
「ひょい!!」
モップを際限まで突っ込み、蓋をしてみた。中身には髪の毛がギッシリ詰まっているのか落ちてこない。
(やったー)
何もなかった事にして、サッサと箒とチリトリで髪の毛の束をまとめてダストボックスへ放り込む。
「よし、さーて! 7階の作業に移りますか!!」




