↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
21/23

決着

 (当たった……)


 チャミナの放った矢が。


 ガンガの右膝を打ち抜いた。


 これで。


 機動力は完全に奪われた。


 片膝をつき。


 うなだれる格闘王を見下ろしながら。


 チャミナは。


 闘技台の外にいるセネトをちらりと見る。


(もう……立てもしない)


 それなのに。


 まだ。


 戦わせるつもりなのか?


 勝敗は。


 誰の目から見ても明らかだった。


 これ以上続けると――


「ガンガさん」


 チャミナが声をかける。


「もう終わりにしましょう」


「……嘗めた口聞いてんじゃねぇぞ……」


 ガンガが。


 震える腕で身体を起こす。


「俺は負けられねぇ……」


 ふらつきながら。


 立ち上がる。


「負けるわけには……いかねぇんだよぉ!」


「……!」


 立ち上がった。


 だが。


 その足元は覚束ない。


 全身に回った毒。


 荒い呼吸。


 まともに立っていることすら難しい状態だ。


(これ以上は……)


 チャミナが。


 弓を握り直す。


(本当に……)


「うああぁ!!!」


 ガンガが吠えた。


 もはや。


 腕すらまともに上がらない。


 ならばと。


 残った左足一本で地面を蹴る。


 跳んだ。


「おおおおおお!!!」


 空中から。


 蹴りを叩き込もうとする。


 だが。


 大きな隙を晒したままの踏み込み。


 チャミナには。


 余裕を持って躱せた。


 ドスンッ!


 着地。


 しかし。


「ぐっ……!」


 ガンガが。


 大きくよろける。


 その隙なら。


 痛む右腕でも。


 何発か撃ち込める。


 それほどまでに。


 もう。


 まともな試合にはなっていなかった。


(これでも……)


(これでも、止めないんですか……!?)


「まだ……」


 ガンガが。


 息を切らしながら。


「終われ……ねぇ……んだよ……」


「…………」


 チャミナは。


 しばらくガンガを見つめた。


 そして。


 闘技台の隅へと後ずさる。


(私には……)


 一歩。


(この人を……)


 もう一歩。


「…………」


 そして。


(……ゴメンね)


 心の中で。


 そう呟いた。


 チャミナは。


 闘技台の上から。


 後ろ向きに地面へ飛び降りる。


 チャミナの体が宙に舞い。


 そして…


 ザッ!


 両足が。


 闘技台の外へ着地した。


「……は?」


 ガンガが。


 呆然と呟く。


「あー」


 セネトも。


 一言だけ漏らす。


「そうきたかー」


 次の瞬間。


 セネトが。


 素早く闘技台へと身を翻した。


「この試合、狩人チャミナのリングアウトにより――」


 セネトが。


 高らかに宣言する。


「勝者! 格闘王ガンガ!」


「まで! 試合は終わってねぇ!」


「はいはい」


 セネトが。


 懐から何かを取り出す。


「解毒薬入りのエクスポーションだよ」


「使うな!」


 ガンガが叫ぶ。


「彼女がそう決めたんだ」


 ブスッ!


「……っ!」


 セネトが。


 注射器をガンガの腕へ突き刺す。


「注射タイプだからね」


 そして。


「瞬時に全身に効くよ」


「っていうかセネトさん!」


 チャミナが叫ぶ。


「もっと早く止めて下さいよ!」


「危ないでしょ!」


「あー」


 セネトが。


 何でもないように答える。


「全身に毒が回って」


「左腕使えなくなって」


「右膝壊されただけでしょ?」


「その程度で戦えなくなられちゃ、こっちが困るよ」


「…………」


(ええーー……)


 チャミナは。


 思わず。


 引きつった顔をする。


「ほら」


 セネトが。


 チャミナへ手を伸ばす。


「チャミナさんも右腕見せて」


 セネトが。


 チャミナの右腕にポーションを塗り込む。


「他に痛むところは無い?」


「あー……背中が焦げてるくらいで……あとは平気です」


「そっか」


 セネトが頷く。


「なら良かった」


「さて、と」


 セネトが振り返る。


 その視線の先には。


 鋭い眼光で二人を睨みつけるガンガがいた。


「この試合に勝った方は、ウチに入れるって約束だったね」


「……」


 ガンガは。


 しばらく黙っていた。


 そして。


「俺は納得してねぇぞ」


「いや、勝った側に納得されなくても」


 セネトが。


 困ったように頭を掻く。


「こいつが勝手に降りただけだろが!」


「俺は勝ててねぇ!」


「えー……めんど」


「もう一回やらせろ!」


 ガンガが拳を握る。


「今度は完全に俺が勝つ!」


「元々、何回もやれば君の方が勝ち越す実力差だよ」


「だったら――!」


「日に何度も死闘を繰り広げさせるわけにはいかないね」


「ぐぬぬ……」


 ガンガが。


 悔しそうに歯を食いしばる。


「だが……!」


 そして。


 チャミナを指差す。


「コイツが落とされるのは納得いかねぇ!」


「落とさないよ?」


「えっ?」


「は?」


 二人の声が重なる。


 セネトは。


 何でもないように続けた。


「勝った方をメンバーにするとは言ったけど」


「負けた方を採らないとは言ってないからね」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」


 ガンガが。


 盛大に叫んだ。


「と、言うわけで」


 セネトが。


 二人へ笑いかける。


「これからよろしくね、二人とも」


「いや!」


 チャミナが叫ぶ。


「そうするつもりなら先に言っといてくださいよ!」


「あー」


 セネトが。


 少しだけ苦笑する。


「落とすつもりではあったからね」


「え?」


「でも」


 セネトが。


 二人を見る。


「いい試合されたから」


「君たちと一緒に戦いたくなった」


「…………」


 チャミナが。


 少しだけ目を丸くする。


 隣では。


 ガンガが。


 まだ納得していない顔をしていた。


「そういう意味では」


 セネトが。


「有意義な試合だったねー」


「あはは」


「笑うな!」


「くっ……!」


 ガンガが。


 拳を握り直す。


「だったらよぉ……ギルマス」


「ん?」


「お前が俺と勝負しやがれぇ!」


「なんでそうなるの!?」


「このままお情けで入れられたんじゃ気が済まねぇ!」


 ガンガが。


 セネトへ詰め寄る。


「俺がお前に勝てば!」


「誰にも文句は――」


「グラム」


 ボゴオアァァァァァァァ!!!!!


「ギャアアアアアアア!!!!!!」


 ガンガの身体が。


 闘技台の上を吹き飛んでいく。


「微塵も容赦がねーーーーー!!!!」


「争いなんて……」


 セネトが。


 静かに呟く。


「何の意味も無いよねぇ……」


「また半魚人みたいな顔になってるーー!!」


「…………」


 ガンガが。


 闘技台の上で。


 プス。


 プス。


 プス。


「エクスポーショーーーーーーーーーン!!!!!!!!」


 こうして。


 私のギルドの入団試験は幕を閉じた。


 しかし。


 この騒動は。


 これから巻き起こる大事件の――


 発端にしか過ぎなかったのである。

# 第一章〜世界を変える風〜


 ガンガとの死闘から。


 数時間後。


「ふぅー、やっと元に戻った」


 セネトが。


 肩をぐるぐる回す。


「ガンガさんは、まだ目を覚ましてませんけどね?」


「丸焦げになったくらいで、根性ないなー」


「セネトさんも一回焦げときます?」


「間に合ってます」


 そんな話をしていると。


 休憩室の扉が開いた。


「セネトさん」


 入ってきたのは、ミリアだった。


「ギルドの統括本部から、お客様が来ております」


「統括本部から?」


 セネトが首を傾げる。


「アポあったっけ?」


「いえ」


 ミリアが少し困ったような顔をする。


「それが……とりあえず来てほしい、と」


「なんかやらかしたか……」


 セネトが腕を組む。


「二十くらいしか心当たりがないぞ」


「多すぎるわ」


 即答だった。


「まあいいや」


 セネトは立ち上がる。


「行ってみよっか」


「はい」


 そして。


 二人は応接室へ向かった。


     ◇


 応接室。


 そこにはすでに。


 二人の男が座っていた。


 一人は。


 小太りの中年男性。


 もう一人は。


 鋭いツリ目をした男だった。


 セネトが入ってくると。


 小太りの男が立ち上がる。


「銀龍の風、ギルドマスターのセネトだな」


「どうもどうも」


 セネトが。


 軽く頭を下げる。


「統括本部長様ともあろうお方が、こんな狭苦しいところまで遠路はるばる」


「そんな茶番はどうでもいい」


「…………」


 セネトが。


 少しだけ目を細める。


 男は。


 単刀直入に告げた。


「要件だけ伝えるぞ」


「ギルドマスター、セネト」


「貴様に対して、解任要求が多数送られてきている」


「そして――」


 男が。


 一枚の書類を机へ置く。


「統括本部内の決議により」


「貴様の解任が決まった」


「…………」


「今すぐに」


「このギルドから出ていってもらうぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。