Mission13:分隊で攻略せよ!
イベント4日目。
間に土日を挟んだことで一気に進捗し、マテリアの収集率は最低目標値の5割を越え、指定エリア内の〈AIM〉掃討率に至っては7割が目前だ。
折り返し時点で7割と言えば、一般的には「かなり進んでいる」と思われるだろう。
しかし元より廃人プレイヤーが押し進めていたところに、大勢の一般的プレイヤーが参加したにしては、「思ったより進んでいない」というのが俺の感想だ。
だがその原因は主に2つだと既に判明している。
その1つが「mobのポップ率」であり、プレイヤーが増えてもポップ率は変わらないどころか、「掃討率が上がるにつれて僅かながらも下がっている」という検証結果が掲示板に上げられていた。
そうなると獲物や狩場の取り合いに起因するPKが横行したようで、賞金稼ぎ板は相当賑わっていた。
そしてもう1つの原因というのが、廃人プレイヤーの「ウサギ狩り離れ」だ。
元より消費する弾薬に対してギリギリ利益が出るといった〈RHラビット〉であったが、一般的プレイヤーの大量参戦により狩りの効率が悪くなった。
廃人プレイヤーと言えど数の暴力に屈っした…というわけでは無いが、「獲物や狩場の取り合い」などという些事を嫌い、「ウサギ狩り」に飽きて来ていたことも後押しとなり、廃人プレイヤーの大多数は新たな狩場を求めて指定エリア外に狩場を移したのだ。
当然、廃人を自称する俺もオルトロス兄弟と分隊(他ゲーで言うパーティー)を組み、ウサギエリアの外縁に沿うようにして「狼狩り」に勤しんでいた。
ダダダッ!ダダダッ!
『クソッ、相変わらず素速しっこいワンコロだ…!』
ダンッ!ダンッ!
『焦るなトロス!そらっ、不死身そっちいくぞ!』
ダンッ!
(おっと…!)
暇を持て余して回想をする俺に、魔犬兄弟の兄オルトからの通信の直後。
『ピピ!』
「ビンゴ!」
シュボッ…、チュドーン!
俺が〈トルバーⅠ〉を構えた先に飛び出すように出現した〈パックウルフ〉は、発射された大型弾の直撃を喰らい機能を停止する。
『ワンパンか…、相変わらずスゲー火力だな。』
『ああ、おかげで狩りの効率が良い。
…うし、回収完了だ。』
『オルトが〈パックウルフ〉を回収しました。
マスターのガレージに20Mtが送られました。』
1体倒しただけで〈RHラビット〉の倍の収益。
しかも魔犬兄弟には分隊結成時の契約で、俺の5割増しのMtが山分けされている筈。
パーティーで狩ったからと言って回収Mtが増えるなどということは無いため、俺に入った20Mtと魔犬兄弟に入ったであろう30Mtを合わせて、〈パックウルフ〉1体で50Mtものマテリアが稼げることとなる。
〈RHラビット〉の実に5倍ものマテリアを稼げるとあれば、効率のためにイベントをすっぽかす廃人プレイヤーは〈パックウルフ〉の「ソロ狩り」に乗り出した。
しかしそれは【 game form 】の仕掛けた罠だった!
〈トルバーⅠ〉の直撃を受けても爆散しないことから分かるように、〈パックウルフ〉はタフネスを始めとしたステータスが〈HRラビット〉など比べ物にならない程に高い。
しかし〈パックウルフ〉の真骨頂は、名前に「パック(pack)」とあることから察せられる「群狼戦術」である。
普段は単体で闊歩している〈パックウルフ〉だが、HPの半分以上のダメージを与えると何処からともなく「仲間を呼ぶ」のだ。
勿論、仲間を呼ぶには特殊なモーションがありキャンセルは可能なのだが、回避偏重の行動変化も相まって、多くのソロ廃人がリロードの合間に「仲間呼び」を許し群狼のエサとなった。
そんな尊い犠牲を経て。
現時点では、牽制2人のダメージディーラー1人の3人体制が、最も効率の良い〈パックウルフ〉の狩り方となっているのだ。
ここで更に効率を求めた場合ダメージディーラーの武器は、最も火力が高く攻撃範囲の広い〈トルバーⅠ〉となる。
魔犬兄弟が俺に声を掛けて来たのも、ソロかつ初期武器が〈トルバーⅠ〉である〈チェリハーパ〉だったから…だそうだ。
(…少し疑い過ぎだったか?)
魔犬兄弟が声を掛けて来たタイミングが土日より前であったことでバウンティハンターかと警戒したが、MMO慣れしているが故の先見の明と言われれば否定できない。
実際、こうして半固定パーティー的に狩りをしていると、俺が敢えて見せた隙に食い付く気配も無い。
(しかしそうなるとなぁ…。)
俺はソロで活動するつもりだったため「賞金を懸けられても返り討ちにすれば良い」という考えでいたが、序盤も序盤にパーティー行動を半ば強制されるのは予想外だった。
…単独で〈パックウルフ〉の群れに対処可能になるまで鍛えるとなると、一体どれ程の手間と時間が掛かるか分かったものでは無い。
(…予定は未定ってことで。)
せっかくの2ヶ月間ものアドバンテージをドブに棄てるくらいなら、俺がお尋ね者であっても行動を共にしてくれるメンバーを探した方がよほど楽だ。
その点魔犬兄弟であれば実力もあるし、短い付き合いながらも正直に話せば「不運だなw」と言いながら受け入れてくれそうな雰囲気を感じる。
(この狩りが終わったら話してみるか…。)
ここまでのゲームプレイが上手く行き過ぎていて、少々浮かれていたのだろう。
まさか“あんなこと”になるなど、この時の俺は知る由も無かった。
揚がる旗は果たして何色か…
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