第15話 修羅場チック
非常にまずい。ここ最近で1番まずい。
「ゔゔ………。」
依然として沙奈のうめき声が聞こえている。しかし………ここでシチュをやめるのもいかがなものだろう。きっと………大丈夫だ。
「うん、おとめくん可愛いね。」
あぁ………気が狂いそうになる。なんだこの背徳間。本当にきつい。
「あおいねーちゃん………1回タイム。」
「だーめ。まだこうしてるの。」
「なんでなのさ。」
シチュエーションとしても、今の率直な気持ちとしてもその言葉が1番似合う。
「そりゃぁ、恥ずかしがってるおとめくんが可愛いからだよ。」
そんなさも当然のごとく言われても困る。今、俺は後戻りなんてできない状況だ。この先に何があるのか。全く持って見たくないが見なければいけない。あぁ………マジで修羅。
「や、やめてよ。」
このシチュは止めることはできないのか………。できないんだろうな。
「やーめない。ほら、ぎゅうっ。」
あぁ複雑。本当になんだこれ。全く………。
「………ん。」
小さくそんな声がした。そしてあおいさんの『ぎゅうっ』の声とともに何故か実際に締め付けられる感覚があった。まぁわかっていることだが沙奈だ。まさかヤキモチ………?もうちょっと修羅場チックになると思ったが………まさかこっちで来るとはな。純粋だな。
「あおいねーちゃん。」
少し間を開ける。その間に俺は沙奈の身体に腕を回した。そして一言。
「暖かいね。」
なんでシチュエーション中もいちゃつけるんだか。どれだけ馬鹿なんだよ。
「とまぁジャブとしてはこんな感じですね。」
あおいさんの声でシチュエーションから現実に戻る。沙奈は………どうやらご満悦のようで。まぁ何よりと言ったところだ。
「いやーゆにさん、おとめさんの心拍数どうでしたか?」
「あぁもう全然大丈夫です。」
良かった………。難は逃れたという解釈でいいのかな。
「じゃあ次行きますか。」
そうしてまたコメントを漁る。なにか良さげなものはないだろうか?
「あ、これどうです?『ゆにとおとめで告白シチュエーション。放課後の教室編。』っていうやつなんですけど。」
なんでこう甘ったるいものを持ってくるのか………ってまぁ気持ちはわからんでもないけれども。
「どうする、ゆに?」
「おとめがいいなら。」
「じゃあ、やろうか。これどっちだろう、男で行くのかな、女で行くのかな?」
「やりやすい方でお願い。」
「じゃあまぁ見方によって変わるような声で行くわ。」
「それ今までやってこなかったけど大丈夫なの?」
「大丈夫。」
告白シチュエーション………しかも学生時代のか。大丈夫。女声と地声の境。ショタではない別の声域。
「はい、ではシチュエーションまで3,2,1どうぞ。」
探りの間を挟み俺が切り出す。
「………なんかさ、最近疎遠みたいになっちゃってるな。」
「そうだね。こうして話すの久々。」
「それで話っていうのは?」
「放課後の教室に呼び出したんだよ?一つしか無いと思うけどな?」
「そっか………。」
無言………というより間だ。多分俺ならこうする。
「わかった。負けました………私と付き合ってください………。」
その声は妙にリアルだった。
「はい………お願いします。」
「………なーんか………調子狂うな。幼馴染なんだからもっと強く出ることができると思ったのにな………。」
「告白ってそういうもんじゃないの?普段慣れないことするんだから幼馴染相手だろうが関係ないと思うよ?」
「何その持論。って、いうか私だけこんな思いするのってなんか不公平。君も言ってよ。」
「えー………しょうがないな。」
少しマイクに近づく。
「ちょ、近い………。」
意図を汲み取ってくれた沙奈がセリフを挟む。
「好きだよ………。」
そう、囁いた。なるほど………シチュエーションでも………誰かのことを思うと恥ずかしいんだな。
「はい。こんな感じでいかがでしたでしょうか。」
「おとめ、顔赤いよ?」
「知ってるよ。」
「もしかして………。」
「あぁ………。って、ゆにだって顔赤いじゃん。」
「しょうがないでしょ?妙にリアルだったんだから。」
「相変わらず仲がよろしいですね。打ち合わせのときとかも思い出話聞かせてくれたりしたんですよ?」
あおいさん………ブレーキになってる。なんかごめんなさい。
「あ、ごめんなさい。ついついおもいだしてしまって。まぁ気を取り直して次に行きましょうか。」
そうして配信は続いていく。まだまだ始まったばかりなのだから。にしてもこういうのが後何件も来ている。果たして消化できるのだろうか?できそうにはないな。まぁ今日は今日のことをしよう。次やることがあればこういうのも含めて改善しなくちゃな。




