第十九章 計算を変える
停戦区域が四か所に増えた翌日、人類側の統合作戦会議では、和平についてではなく、もう一度戦争の話が始まっていた。
「結局、あとどれくらい勝てば向こうは和平を選ぶんです?」
悠真の問いに、すぐ答える者はいなかった。大型画面にはヴァルクとの交信記録が並んでいる。
《地球占領方針 依然として生存確率高い》
《想定ヴァルク損失 代替星移動より低い》
《現在方針変更理由 不足》
研究責任者が画面を指した。
「正確な数字は分からない。ただ、一つだけはっきりしている。今のまま普通に戦っていたら、向こうの判断が変わる前にこちらが力尽きる」
別の画面が開いた。そこには世界各国から集められた残存戦力の推計が表示されていた。最初の三日間で失われた戦闘機、爆撃機、艦艇、防空設備。その後の戦闘で破壊された基地、レーダー、弾薬庫、移動式ミサイル部隊。人類はヴァルクの戦い方を理解し始めていたが、それとは逆に、戦うための物そのものが急速に減っていた。
一等空尉が言った。
「戦い方が分かった頃には戦闘機がない。笑えん話だ」
「鹵獲機は?」
「もっとひどい」
日本だけではない。世界各国が回収したヴァルク機は、実戦投入するたびに減っている。壊れても人類には新しく作れない。部品取りで延命できる機体にも限界がある。
「じゃあ、あんまり時間ないですね」
「ない」
「それで何するんです?」
画面が切り替わった。地球全体の地図。北米、欧州、東アジア、インド洋、太平洋。そして宇宙。
「残っている戦力を集める」
「どこの?」
「全部からだ」
*
それは、人類が侵略開始以来行った中で最大規模の共同作戦になる予定だった。残存している戦闘機。飛行可能な爆撃機。移動式ミサイル。地上配備レーザー。無人機。電子戦機。艦艇。潜水艦。そして運用可能な鹵獲ヴァルク機。
各地域が自分たちの防衛のために残していた戦力まで、一時的に吐き出す。
「これ、かなり無茶じゃないですか」
「かなりな」
「失敗したら?」
「困る」
「成功したら?」
一等空尉は少し黙った。
「やっぱり困る」
「何で?」
「使った兵器は戻ってこない」
悠真が画面を見る。航空機なら戻る。艦艇も生き残れば戻る。しかしミサイルは撃てばなくなる。破壊された機体は補充できない。熟練兵はもっと補充できない。新規生産。新兵の訓練。どれも数ヶ月、あるいは数年かかる。
「これやった後、同じこともう一回できます?」
今度は誰もすぐには答えなかった。やがて統合作戦担当者が言う。
「世界中に散らばっている予備戦力までかき集める。弾薬在庫にも手を付ける。鹵獲機も投入可能なものは出す。二度目はない」
悠真は画面を見た。
「最後の一発?」
「そういう言い方はしたくないが、近い」
作戦の目的は敵を壊滅させることではない。そんな能力は人類にはない。十三隻の母艦を沈めることでもない。必要なのは、ヴァルクの計算を変えること。
「向こうは今、人類の戦力が減ってると思ってるんですよね」
悠真が聞く。
「実際減っている」
「じゃあこれだけ集めても、無理してるって分かるんじゃ?」
「集中投入したことまでは分かるだろう」
研究責任者が答える。
「だが、残りがどれくらいあるかまでは正確には分からない」
「一回しかできないのに?」
「一回しかできないことを教える必要はない」
目的は一日で戦争に勝つことではない。人類がまだ戦える。しかも、昨日とは違う方法で戦える。これからも新しい戦術を生み出し続けるかもしれない。そうヴァルクに判断させる。
「母艦を今日沈める必要はない」
研究責任者が言った。
「来月には一隻沈められるかもしれない。来月には二隻かもしれない。半年後に人類が何をしてくるか分からない。そう思わせればいい」
「半年もこっちが持ちます?」
「持たない可能性が高い」
「駄目じゃん」
「向こうがそう思わなければいい」
*
作戦開始時刻は世界共通で設定された。攻撃方法は統一しなかった。むしろ意図的に、統一しなかった。
北米では大量の無人機と残存航空戦力を組み合わせる。欧州では地上ミサイル、電子戦、熱源囮を使う。東アジアでは地下施設と移動式発射機を利用した待ち伏せ。インド洋では艦艇と潜水艦が降下艇の支援拠点を狙う。
同じ弱点を突けば、一つ対策されて終わる。だから違う方法で同時に攻撃する。
日本を中心に再編された鹵獲機部隊は、再び宇宙へ上がる。目標は前回損傷させた母艦ではない。あの艦は放熱器周辺の防御を大幅に強化していた。常時護衛機が配置され、展開方法そのものも変わっている。
今回の目標は別の母艦。その周辺にある外部設備だった。
「母艦を落とさなくていいんですか?」
「落とせるなら落としていい」
「無理ですよ」
「だから狙わない」
解析班が推定したのは、攻撃機の整備と補給に使われている外部設備。船体から張り出した複数の構造体に、小型機が頻繁に出入りしている。
「ここ壊したら?」
「母艦そのものは生きる。ただし攻撃機の再出撃効率が落ちる可能性がある」
「地味ですね」
「戦争はだいたい地味だ」
悠真は自分の機体を見る。一号機。最初に奪った機体。何度も修理され、他機から外された部品まで使って維持されている。外装の色は場所によって微妙に違う。
「こいつもだいぶボロボロだな」
二等空佐が答えた。
『比較的ましなほうだ。俺のと機体を交換するか?』
「すいませんでした」
『わかればいい。行くぞ』
*
世界協定時刻、午前十一時。人類の攻撃が始まった。最初にヴァルクが検知したのは北米だった。数百の飛翔体。戦闘機ではない。安価な無人機、囮、旧式巡航ミサイル、レーダー反射を増幅したデコイ。それらに紛れるように、本物の攻撃機と対空ミサイルが接近する。ヴァルクは即座に迎撃した。
レーザー。一機。十機。五十機。無人機が次々と落ちる。だがその後ろから、別の方向へ潜んでいた地上ミサイルが発射された。
同時刻。欧州。ヴァルク攻撃機が大量の熱源を検知する。車両。航空機。発射機。しかし多くは囮。ヴァルクが識別を行っている数秒の間に、地下壕から本物のミサイルが上がった。
東アジア。通常なら攻撃機が発進するはずの飛行場。無人。ヴァルクが接近した瞬間、山間部から移動式発射機が姿を現した。
太平洋。損傷した駆逐艦までが戦列へ戻った。
一斉攻撃。世界中で、ヴァルクの迎撃システムが動き始める。
*
その頃、悠真たちは大気圏を離れていた。
『Target vector confirmed』
フランス人元宇宙飛行士の声。
『No chase. Mission first』
「了解」
悠真は短い英語で答える。今回は前回より機数が多い。しかし、それは余裕があるからではない。各国が持っている飛行可能な鹵獲機を無理に集めた結果だった。
人類側の接近を、ヴァルクは当然察知した。
「来た」
母艦から攻撃機が離れる。一機。五機。十機。まだ増える。
「多くない?」
『Kamiya』
二等空佐の声。
『たぶんお前だ』
「また俺?」
ヴァルク攻撃機の進路が変わる。四機。いや六機。悠真の機体へ向かう。
「人気者だなあ!」
『喜んでいる場合か』
「喜んでません!」
悠真は進路を変えた。六機が追う。すぐに気づいた。
「これ、俺を落とすのが目的じゃない」
『どういう意味だ』
「近づかせないつもりです。俺を戦闘から外してる」
ヴァルクは悠真の行動を研究している。無理に撃墜しようとすれば、悠真がそれを利用する可能性がある。ならば母艦から遠ざければいい。
「面倒くさいなあ!」
レーザー。悠真は最小限の推進でかわす。敵は深追いしない。一定距離を保つ。確実に悠真を本命から離していく。
『Kamiya. Continue』
フランス人パイロット。
「え?」
『Keep them』
二等空佐。
『そのまま引きつけろ』
「簡単に言わないでください!」
しかし理解した。六機。自分一機に六機。
「こいつら、今本命守ってないですよね」
『そういうことだ』
悠真は笑った。
「じゃあ付き合います」
反転。加速。追ってきた六機へ向かう。敵が散開する。
「ほら」
悠真は撃たない。さらに別方向へ。ヴァルクが追う。撃てそうな瞬間にも撃たない。敵はさらに警戒する。
「俺が何かすると思ってる」
『実際するだろう』
「今日はしませんよ」
『信用できん』
「ヴァルクたちはもっと信用できないでしょうね」
その頃、本命部隊は母艦へ接近していた。
*
ヴァルクもただ見てはいなかった。外部設備周辺の護衛が増える。母艦本体から精密レーザー。進路を塞ぐ。一機が損傷。
『Cooling fault!』
アメリカ機。
『Abort!』
『Negative, still—』
『ABORT!』
フランス人の命令。アメリカ機が離れる。人類側に余裕はない。それでも、壊れた機体を無理に使って失えばもっと余裕がなくなる。
残った機体が接近。外部設備が収納を始める。
『Target moving』
『Expected』
ヴァルクも人類の目的を理解した。収納される構造物。完全に船体へ隠れるまで数十秒。二等空佐が言った。
『間に合わん』
フランス人。
『Not target one. Target three』
別の設備。収納速度が遅い。人類側が進路を変更。ヴァルク護衛機も追う。その瞬間、悠真を追っていた六機のうち二機が離れた。
「戻る!」
『Kamiya, now』
「了解!」
悠真は初めて攻撃した。一機へレーザー。回避。当たらない。それでいい。戻ろうとした二機が再び悠真へ注意を向ける。
「行かせないよ」
敵が反撃。機体が振動する。警告。右側面損傷。
「うわっ!」
『Kamiya!』
「飛べる! まだ飛べる!」
攻撃設備までの距離が縮まる。ヴァルク本体のレーザー。人類機が散開。フランス機、二等空佐、ドイツ機が同時に射撃する。
一射目。外装が弾ける。
二射目。内部から光。
三射目。構造物の一部が吹き飛んだ。
『Hit』
さらに一撃。設備に接続されていた小型艇が離脱する。その直後、周囲の発進口が閉じ始めた。
『Enough. RETURN』
二等空佐。
『全機帰るぞ』
悠真も反転。
「六機連れて帰っていいですか?」
『置いてこい!』
「ですよね!」
*
宇宙で戦っている間にも、地上では戦果が出ていた。
北米。大型降下艇一隻が、複数方向からの同時攻撃を受ける。護衛機が囮を処理している間に、地上から放たれた対艦ミサイルが下部放熱設備へ到達。損傷。降下艇は撤退を開始。しかし上昇中、別方向から二射目。推進出力低下。不時着。
欧州。ヴァルク攻撃機の編隊が待ち伏せを受ける。人類側は三機を失った。その代わりヴァルク側も複数機を失う。
東アジア。地上部隊の前進拠点を人類側砲兵が集中攻撃。ヴァルクは占領地域の一部から後退。
インド洋。人類側艦艇二隻が損傷。一隻沈没。それでも降下艇支援設備を破壊。
世界各地で違う戦術、違う兵器、違う国、同じ時間。ヴァルクが一つの対策では処理できない攻撃が続いた。
*
作戦終了から五時間後。悠真は基地の医務室にいた。
「また最低二十四時間?」
「今回は四十八時間だ」
「増えた」
「増やしたのは君だ」
右肩。首。背中。再び強い加速度を受けた身体は、以前より明確に悲鳴を上げていた。一等空尉が入ってきた。
「俺の機体は?」
「飛行不能ではない。ただし右側推進系に問題がある」
「直せます?」
「分からん。我々はヴァルク機メーカーではないからな。お前の体はどうか?」
「四十八時間だそうです」
「なら来い」
「医務官が」
「報告を聞きたくないか?」
「行きます」
作戦室。大型画面には戦果が並んでいた。世界各地のヴァルク部隊が後退。攻撃機損失。降下艇損傷。母艦外部設備損傷。ヴァルクの作戦行動は複数地域で明確に低下している。
「勝った?」
悠真が聞く。一等空尉は少し考えた。
「今日だけならな」
「今日だけ?」
別の画面が開いた。悠真の表情が変わった。人類側の損失。航空機。艦艇。ミサイル。無人機。鹵獲機。そして人員。
「こんなに?」
「まだ確定じゃない」
「これ、もう一回できます?」
前と同じ質問。今度は答えがもっとはっきりしていた。
「できない」
一等空尉が言った。
「少なくとも、今日と同じ規模は無理だ」
「ミサイルは?」
「かなり使った。戦闘機も戻ってこなかった機体が多い。鹵獲機を今回だけで複数失った。修理待ちも増えた」
悠真は画面を見る。
「大勝利って感じじゃないですね」
「中身を知ってればな」
誰かの手で画面が切り替えられた。ニュースだった。
*
『人類軍、世界同時反攻に成功!』
巨大な見出し。
《北米で異星大型艇を撃破》
《欧州で敵航空部隊に大損害》
《東アジアで占領部隊後退》
《人類部隊、再び異星母艦への攻撃成功》
世界中のテレビ局が同じ映像を流していた。燃えるヴァルク降下艇。撤退する地上部隊。宇宙で損傷する母艦外部設備。帰還する鹵獲機。人々が歓声を上げる映像。
『侵略開始以来最大規模の反攻作戦は、人類側の大勝利となりました』
悠真が画面を見る。
「大勝利って言ってる」
「大勝利だからな」
「でもさっき、もう一回できないって」
「それは言わない」
「ヴァルクも見てるから?」
「あいつらは人類の公開通信を解析している。少なくとも主要報道は見ていると考えた方がいい」
ニュースは続く。
『各国政府は今回の作戦について、人類の適応能力と継戦能力を示す重大な成果だったと発表しました』
《人類反攻 第二段階へ》
《各国共同作戦継続》
《異星艦隊への圧力強化》
「第二段階あるんです?」
「ないとは言ってない」
「あるとも言ってないですよね?」
「これは情報戦だ」
もちろん人類側の死者や損害も報道された。隠しきれるものではない。しかし、弾薬庫がどれほど空になったか。飛べる戦闘機があと何機あるのか。鹵獲機が次の戦闘に何機出せるのか。各国がどれほど予備戦力まで吐き出したのか。それは発表されなかった。
代わりに、成功した攻撃映像が繰り返された。世界各地の街頭で、人々が久しぶりに喜んでいた。
《勝てる》
《宇宙人も追い返せる》
《人類反撃》
SNSにもそんな言葉が並ぶ。
「みんな本当に勝てると思ってる」
悠真が言った。一等空尉は答えなかった。
「嘘ついてるみたいで嫌だな」
「負けると言って何か良くなるか?」
「ならないですけど」
「それに嘘でもない。今日の作戦には勝った」
一等空尉が画面を見る。
「ただし次の大勝利を同じ方法で用意できないだけだ」
*
ヴァルクから通信が届いたのは、その夜だった。
《人類 通信要求》
交渉担当者が回線を開く。
《戦闘結果 評価更新》
悠真も呼ばれていた。画面に文字が続く。
《人類攻撃規模 予測超過》
《複数戦域 同時適応確認》
《戦術多様性 再評価》
研究責任者が小さく息を吐いた。
「効いてる」
《地球占領時 予測ヴァルク損失 上昇》
室内が静かになる。それこそが今回の作戦目的だった。さらに。
《人類長期抵抗能力 推定値 修正》
《将来戦術 予測精度低下》
《長期戦不確実性 上昇》
「向こう、今日のが一回だけだって分かってない?」
悠真が小声で聞く。研究責任者が首を振る。
「分からない」
「集中したのは?」
「当然分かっているだろう」
ヴァルクからも、その答えに近い通信が届いた。
《人類攻撃規模 通常戦力配置と不一致》
《戦力集中 推定》
《同規模攻撃 継続可能性 不明》
悠真の顔が引きつる。
「結構バレてるじゃん」
「集中したことはな」
「残りも少ないって?」
「そこまでは確定されていない」
《人類残存戦力 推定困難》
一等空尉が小さく息を吐く。
「十分だ」
ヴァルクは人類の戦力が無限だとは思っていない。むしろ減少していることも知っている。それでも、あと何回大規模攻撃を行えるのか。次にどんな戦術が出てくるのか。半年後、人類が鹵獲技術をどこまで理解しているのか。その予測に誤差が生まれた。合理的なヴァルクにとって、予測不能はそのまま危険だった。
悠真が通信端末へ向かう。
「和平する?」
翻訳。
《和平選択 現在可能か》
返答。
《否定》
「まだかよ」
一等空尉が咳払いする。
「声に出すな」
しかし続きが来た。
《地球占領 依然として生存上有利》
《優位差 大幅縮小》
誰も喋らなかった。ヴァルクが初めて明確に認めた。地球を奪うことと、資源を受け取って別の恒星系へ向かうこと。その差が縮んだ。
さらに通信。
《人類資源提供案 詳細評価希望》
《提供可能資源量》
《提供開始時期》
《採掘能力》
《採掘能力拡張方法》
《履行保証方式》
外交官が画面を見る。
「ヴァルクが比較を始めた」
昨日までヴァルクにとって和平案は、存在するだけの選択肢だった。地球を奪う方が安全なら、わざわざ選ぶ必要はない。だが今、彼らは具体的な数字を要求した。
本当に百二十億人を別の星へ送れるだけの資源を人類が用意できるのか。その場合と、地球占領を続けた場合。どちらが生き残れるのか。ヴァルクは初めて、本気で比べ始めた。
*
通信が終わる。作戦室には安堵の空気が広がった。ただ一人、統合作戦担当者は別の画面を見ていた。
「問題はここからだ」
悠真が振り向く。
「和平の条件?」
「それもある」
画面には人類側残存戦力。
「もしヴァルクが、こちらの能力を確認するためにもう一度大攻勢をかけてきたら?」
誰も答えない。
「今日と同じだけの迎撃はできない」
悠真がニュース画面を見る。
《人類軍 歴史的大勝利》
《異星艦隊に重大な打撃》
《反攻作戦成功》
悠真は十三隻の表示を見る。十三隻とも残っている。損傷した艦はある。攻撃能力が低下した艦もある。それでも、地球を滅ぼすには十分すぎる戦力だった。
一方の人類は、今日の一撃のために残存戦力を世界中からかき集めた。戦闘機もミサイルも艦艇も鹵獲機も、次に同じことをしろと言われても、もうできない。それを知っている人間は少ない。そしてヴァルクには知られてはいけない。
画面に、最後の通信文が残っていた。
《人類資源提供案 詳細評価希望》
ヴァルクの計算は確かに変わった。地球を奪うことが、唯一の答えではなくなった。人類が提示した和平案が初めて、本気で比較される選択肢になった。
「……これで決めてくれないと困りますね」
一等空尉は笑わなかった。
「ああ」
世界のニュースでは、人類の大勝利が繰り返し報じられていた。ヴァルクにもそう見えていることを願うしかない。人類は、まだ戦えるように見せていた。
実際にはそのために使える札を、ほとんど使い切っていた。
別作品もよろしくお願いします
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