第一章 異世界転移と邂逅 第3話:旅立ち
「言ったろう、アララは俺が守るって」
吊り橋が完成した翌日
村では、久しぶりの大規模な宴が開かれることになった
「今日は祝いだ! 飯も酒もたっぷり用意するぞ!」
「ショウさんとベルモンドさんは主賓だ!」
「え、主賓……?」
驚くショウに、ベルモンドが背中をガツンとどやしつけた
「当たり前だろうが。
この橋はおめえと俺がいなきゃできなかったんだ」
「ショウ、すごいね! みんな喜んでる!」
アララがショウの肩の上で感心したように言う
「(アララのおかげでもあるんだけどな……)」
宴が始まるまで時間があるということで
ベルモンドがショウを呼び止めた
「おい若造。ちっと話がある。
村長の部屋、借りるぞ」
村長宅の一室で、ベルモンドは腕を組み、ショウをじっと見つめた。
「……で、聞くがな。
おめえ、何もんだ?」
「え?」
「普通の見習いが、あんな道具や知識持ってるわけねえだろ。
それに……なんか、変なことが起きすぎる」
ショウはようやく思い出した
自分がこの世界に来た日のことを
「……ああ、そうだった。……俺、多分……異世界から来たんだと思う」
「異世界だぁ、こりゃぁ、また、とんでもねえことを言いやがる」
そう言いながら、ベルモンドの表情にはかすかに影がよぎる
「あんまり驚いてないようだけど」
「まぁ、そんな話を聞かねえでもねぇんでな」
ベルモンドはごまかすように言った
「……にしても、
普通それであたふたするもんだがな」
「いや、橋を作るのが楽しすぎて……」
「……はぁ……」
ベルモンドは額を押さえた。
「で、これからどうするつもりだ?」
「この世界が本当に異世界なのか、
元の世界に戻れるのか……調べたいと思ってる」
「なら――しばらく俺について来い」
「え?」
「この世界のことを知らねえなら、一人じゃ危ねえ。
……それに、おめえは“見習い”だって言っただろ。
連れて行かねえと変だろうが」
「ベルモンド……!」
「それに、俺と一緒にいりゃ――
この世界の橋をいろいろ見れるぞ」
「行こう!! 今すぐ行こう!!」
「落ち着け!!」
アララがショウの肩の上で目をぱちくりさせた
「ショウ、目がキラキラしてる……」
ベルモンドは荷物から地図を取り出し、床に広げた。
「今いるのが“西領”。
これから向かうのは、領主のいる“中央都市”。
そこの近くに――古代の橋がある」
「古代の橋……!」
「……っ!」
アララの体がびくりと震えた。
ショウにしか見えないその姿は、明らかに怯えている。
「アララ? どうした?」
「……いや……いや……あそこ……こわい……
こわい……こわい……!」
ショウは慌ててアララを抱きしめた。
ショウ
「大丈夫だ、アララ
俺がいる。大丈夫!」
アララの震えはしばらく続いたが、
ショウの声に少しずつ落ち着きを取り戻した。
「……ショウ……こわい……わからないけど……こわい」
「わかった」
ベルモンドは最初、ショウが空中を抱きしめているように見えて唖然としていた。
「……おい若造
おめえ、誰と話してんだ?」
「えっ!? あ、いや、その……!」
「……ふん。
まあいい。だがな――」
ベルモンドは吊り橋建設中の“風の異変”を思い出していた。
「……おめえの周りには、何か“いる”んだろうな」
「……!」
「安心しろ。
俺は橋が落ちなきゃなんでもいい」
「へっ?」
「職人は細かいことにはこだわらねんだよ!」
「いや、こだわらないとダメだろう!」
「うっせえな。それでどうゆうこった?」
「アララ――。あんたには見えない精霊だと思うんだが、
この子が、凄くおびえているんだ」
「ああん?」
「『そこは、こわい』って」
「そいつぁ、いよいよきなくさくなってきやがったな。
それで、どううすんだ。」
「この子が、こんないおびえているんじゃ――」
「大丈夫、もう大丈夫!」
アララがショウの言葉をさえぎって言った
その顔は、とても大丈夫とは見えなかった
「けど、アララ――」
「ショウはそこに行かなきゃいけない気がする
とても大事な何か
私をそこに連れてって!」
アララはショウをまっすぐに見た
その目には涙がにじんでいたが
強い意志がやどっていた
「いいのか」
「うん!」
大きくうなずくアララ
その頭をやさしくなでてショウは言った
「よし、アララは俺が守る。まかせとけ」
アララは大きくうなずきショウに抱きついた
「ベルモンド、頼む。つれてってくれ」
「おう」
ベルモンドは大きくうなずいた。
宴は夜遅くまで続いた。
翌朝、村人たちが三人を見送りに集まった。
「ショウさん、ベルモンドさん! 気をつけて!」
「また来てくれよ!」
「橋、ずっと大事にするからな!」
「みんな、ありがとう!」
「じゃあ行くぞ、若造。
道中で泣き言いうんじゃねえぞ」
「言わないって!」
「ショウ……」
まだ、不安げなアララを、片手で抱き上げる
首にしがみつくアララ
「言ったろう、アララは俺が守るって」
「うん」
うれしそうに笑うアララに。ショウは余計な一言を言った
「橋といっしょさ」
「えっ」
「がっはっは。おめえ、言っちゃあいけねえことを言っちまったな」
「えっ」
「そんなこと、彼女やかみさんに言ってみろ。たたきだされっちまうぞ」
「なんか、実感がこもってるような」
「うるせー!」
こうして――
ショウ、ベルモンド、そしてアララは
“古代の橋”が待つ中央都市へ向けて旅立った
その先に何があるのか、
まだ誰も知らない
橋一言
「橋は、壊れる前に必ず“兆候”を出す。」




