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第二章 橋城(きょうじょう)での邂逅と…… 第十一話 引き継がれる願い

崩れた床の上のベルモンドの槌


血と煤にまみれ、

柄はひび割れ、

それでも――

折れていない。


ショウは震える手で槌を拾い上げた。


重い。

腕が軋むほどに重い。


ショウは膝をつき、

震える声で呟いた。


「ベルモンド……

 あんた、タケルさんと同じだよ

 どちらも守るなんて、

 そんなの……反則だろ」


アララがそっとショウの肩に触れた。


ショウは動かない。アララの手は温かかったが


背中をどやす手は、いつまでたってもこなかった


どれだけそうしていただろう


「ショウ! あれ!」

アララの叫び声に、顔をあげた


杭から解放されたガランが、

ゆっくりと、だが力強く立ち上がる。


(……職人の男よ。お前の魂、確かに受け取った

 あの日、タケルが私を守り、お前を逃がした意味を

 今、理解した)


その声は、ショウの体全体に響き渡った


ガランの巨躯が、

眩い光の粒子となって霧散し始める。


それは消滅ではない


アララが目を見開く。


霧散した光の渦が、

徐々に凝縮していく


やがて、それは人の形をとった


先ほど消滅した男の姿


「ベルモンド!」


ショウが駆け寄る。

ゆっくりと、ベルモンドが上体を起こした。


だが、その瞳はいつもの不器用な職人のものではない

ガランと同じ、深淵な黄金色に輝いていた


男は無言で立ち上がり、崩れかけた石壁に手を触れた。


瞬く間に、ショウの距離計でも測りきれないほどの速度で石が再生し、

橋脚全体がかつてないほどの安定を取り戻していく


「……道は、拓かれた」


その声は、重く響く地鳴りのようだった。


「我らの願いは、形は違えど、引き継がれた」


次の瞬間、黄金の光がスッと消える。


とたんに、ベルモンドは勢いよく倒れた


「いででで……。おい、何だ? 俺は……どうなったんだ?」


ベルモンドは自分の手をまじまじと見つめた。

その瞳はいつもの色に戻り、

ガランとしての威厳は消え失せていた。


「ベルモンドさん、

 今、何が起きたか覚えてないんですか?」


「ああ? 杭をぶっ叩いたところまでは覚えてるが

 その後は、なんにも覚えちゃいねえ。

 ……というか、なんだか妙に腹が減ったな。

 体中が熱くて仕方ねえ」


そう言って体を見たベルモンドは、自分が丸裸なのに気がついた


「な、なんだ、おれの服はどうなった?」


「ぜんぶ消えちゃったよ」


「なんだと!」


アララの答えに、そっちへ振り向いたベルモンドは


宙に浮かんでいる少女を見て、真っ赤になって前を隠した


「お、おめえは、誰……、っと、そうか、おめえがアララだな」


「うん、ああ、おじちゃん、見えるようになったんだ」


「いったい、どういうこったい?」


ショウは、ベルモンドの影の中に、

静かに息づくガランの気配を確かに感じた。


本人は気づいていない。

だが、彼は今や橋の守護獣をその身に宿した、

この世界で唯一の存在となったのだ。


ショウは折れた槌を拾い上げ、

ベルモンドに渡した


「……行こう、ベルモンド。

 あんたのなかに、まだタケルさんの夢が続いてるんだ」


「なんのこった?……まあいい、

 とにかく外へ出ようぜ。このカビ臭い場所はもう御免だ」


折れた槌を担ぎ、

平然と歩き出すベルモンドの背中を見つめ、

ショウはアララと顔を見合わせた。


一人の男の命と、一柱の獣の魂が重なった奇跡。

彼らの旅は、かつてタケルが願った通り、「三人」で続いていく


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