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第二章 橋城(きょうじょう)での邂逅と…… 第六話 ベルモンドの回顧(2)

 ……あいつは、ただ

  『橋の様子がおかしい。職人として手を貸してくれ』とだけ言ったんだ


 俺は、いつもの定期点検のつもりで、

  槌を持ってついてきた

  何も知らずにな


 だが、この扉を開けた瞬間、空気が変わった


  扉の先に人間より大きなガラスの器があって

  そいつに黒々としたツタのようなものが何本も絡みつき

  ガラス容器と壁とを繋いでいた


 タケルは、ガラス容器にしがみついて、叫んでいたが、

  いきなり部屋の窓へ向かい、下をのぞいて

  さらに、叫んだ


  「ベルモンドさん、このツタのようなものを切ってくれ」


  タケルは窓から下に伸びているツタを指さしていた


  俺は、槌を振り上げそいつを打ち据えた

  だが、わずかに傷がつく程度だ

  俺は、何度もたたきつけた  


  その間に、タケルは

  壁に見たこともねえ複雑な図形や数式を書き殴り始めた


  まるで見えねえ誰かと会話でもしてるみたいに

  虚空を見上げて叫びながら


 「ベルモンドさん、危ない!!」


 タケルの叫びと同時に、

  空間が爆発したような衝撃に襲われた。


  なにもいねえ

  だが、石造りの頑丈な床が

  まるで見えねえ巨大な力でひしゃげ

  砕け始めたんだ。


  そいつは、俺の目指していた

 俺は必死に槌を振り回したが

  くうを切るだけだった。


 タケルは、壁の数式を書き上げることに必死だった

  指先が血に染まっても

  あいつは書くのを止めなかった。


 その時だ。……頭上の巨大なはり

  突如として音を立てて崩れ落ちてきた


  俺は足を取られて動けなかった

  死ぬと思った

 

  だが、タケルがあの細い体で、俺を突き飛ばしたんだ


  「タケル!!」


 俺が跳ね飛ばされた直後

  あいつがいた場所は瓦礫の山になった

  そして、そのまま床が抜け底へ落ちていった


 俺は……俺はただ、あいつが何と戦い

  何を守ろうとしていたのかも分からねえまま

  助けられたんだ


 結局、あいつの遺体は見つけられなかった

 壁には

  最期まで、壁に書きかけたあの『妙な図形』だけが残っていた

  

 セイラン侯には事故だったとだけ伝え、

  調査の失敗を詫びて、すぐにこの街を去った


  あれがいったい何んだったのか

  俺にはわからねえ


  だが、確かなのは

 俺がいなきゃ、

  あいつは一人で身軽に

  逃げられたはずだってことだ


  俺があいつの足を引っ張ったから

  あいつは死んだんだ


  そいつが、つらっくて

  逃げ出しちまったが。

  始末はつけなきゃならねえ


  俺自身の命をかけてでもな


  ベルモンドは、言葉を切った

  彼にとっては、タケルの死は

  「自分の不甲斐なさが招いた不可解な事故」だったのだ


  ベルモンドの話を聞き終えたショウは

  静かに石扉に手を置いた


  「……ベルモンド。あんた、さっき言ったよな

   タケルさんが『見えない誰か』と話していたって」

  「ああ……。気味の悪い独り言だと思ってた」


  「それは、独り言じゃない」

   ショウは、隣で震えながら、必死に力を広げようとしているアララを想った

 

  「タケルさんは、精霊たちを守るために戦っていたんだ

   あんたをさそったのは、

   それほど悪化してると思っていなかったからだ


   あんたに、手を貸して欲しくて

   ここを見せようと思って

 

   けど、ここは最悪な状態だった

 

   あいつは、あんたを巻き込まないように、

   一人で全部背負って――

   ばかなんだよ、あいつは」


   「おめえ、タケルを知って――」


   「ばかがつくぐらいお人好しで、そのくせ――」


   視界が揺れ、霧が渦を巻くように見えた。

   頭を押さえた瞬間、

   記憶が洪水のように流れ込んできた。 


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