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第二章 橋城(きょうじょう)での邂逅と…… 第五話 扉の前の逡巡(しゅんじゅん)(1)

  橋城の最下層

  重厚な石のハッチを開けると

  そこには湿った冷気と

  内臓を揺さぶるような低周波の唸りが渦巻いていた。

 

  中央橋脚へと伸びる『連結還流管』

  直径三メートルほどの円筒状の通路は

  本来、橋が生成する清浄な力を城へと送る「血管」だった

  だが、今のそこは、澱んだ力が黒いすすとなって壁にこびりつき

  異様な熱を帯びている。


  「……ショウ、聞こえる? 橋が……叫んでる。ずっと、ずっと……」

  ショウの肩で、アララが耳を塞ぎ、今にも消えてしまいそうなほど淡く明滅していた。


  「ああ、聞こえるよ。……この振動、共振きょうしん

   構造体が耐えきれずに悲鳴を上げてる」

  ショウは『強化型レーザー距離計』を前方に向けた

  赤いラインが闇を切り裂くが

  空気中の力が濃すぎて

  数値が狂ったように跳ね上がる


  ショウは、アララの目をしっかり見て言った


  「アララ、お願いがある」


  「えっ」


  「今の君には、酷なお願いかもしれない。

   けど、俺は、君ならやれると思っている」


  淡く明滅していた光の揺らぎがおさまった


  アララの目に真剣な光がともる


  「君を中心に、可能な限りでいい、力を解放してほしい」


  「でも、どうやって?」


  「俺の道具を巻き上げたみたいに、風じゃなく光を出すんだ」


  「光を?」


  「そうだ、やれるか」


  「やってみる」


  アララは目を閉じ、祈るように胸元で手を合わせた。


  最初は小さなそよ風が吹いただけだったが、

  次の瞬間、彼女を中心に無数の水晶の粒が舞い踊るような、

  鋭い輝きが還流管を埋め尽くした。


  「できた!できたよ、ショウ」


  「よしっ、そうやって俺たちを守ってくれ」


  「私が、ショウを守る?」


  「そうだ、俺たちは3人で力を合わせてたたかうんだ」


  「たたかう?私もたたかえる?」


  「ああ、頼むぜ、相棒」


  アララの全身がくっきりとした輪郭を描き

  そのまわりを光の粒子が風のように舞った


  一歩、また一歩と進むたびに

  足元から伝わる不気味な脈動が強くなっていく。


  どれほど歩いただろうか

  管の突き当たりに、中央橋脚の内部へと続く

  巨大な円形の石扉が現れた


  扉には古代の紋章が刻まれているが

  その隙間からは赤黒い光が漏れ出し

  周囲の石材を侵食するようにひび割れが走っている。

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