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水の記憶 59


「ねぇ、ルル?貴方は私が見えるなら精霊たちもみえるの?」


「ううん。気配はなんとなくわかるけど、姿まで見えないよ。お母さんも見えない方がいいって言ってたし、見ようとしたらことないよ」


「どうして?」


「精霊たちは、すごくイタズラ好きだから、誘拐されちゃったら大変だからって」


「ーそれは、そうね」


幼い頃から、それこそ首も座らぬ赤子の頃からアクア・フィールの聖域に、さらわれ放題に育ったサラシアナである。


アクア・フィールの保護にあるサラシアナでもそのような扱いなのだ。


ふつうの人間など、彼らにとっては物珍しい遊び道具にしかならない。


ふと、ルルの笑顔が曇った。


「お母さん、大丈夫かなあ」


サラシアナとの会話で母を思い出して、ぎゅっと唇をかむ幼い少女に、サラシアナの胸が苦しくなる。


けれど、自分にできることはあるだろうか?


14年もの年月を無駄にしてきたサラシアナに。


唯一、いた師である至福の森の魔女ならこういう時、どんなふうに導いてくれるだろうか?


それに、あのひとならどう行動をするのだろう?


左手の金色の光を見つめる。


すると、指輪に微かな違和感を覚えた。


小さくマントに映し出された影ある。


思い描いた魔女ではなく、


「レディ・ミア?」


小さくつぶやくと指輪にうるその影が戸惑ったように身を動かした。


ただし、声はきこえない。


けれど、


「貴女には、私の声が通じてる?お願い。声がとどくなら頷いて」


すると、数刻迷ったあとにレディ・ミアが頷きをかえした。

 

「じゃあ、YESだったら頷いてくれる?」


レディ・ミアが頷く。


「貴女と里長以外には、私の姿はみえない?」


こくり。


「ルルは?」


無反応。


それは、いい。


「じゃあ、ルルなら私と一緒にいれば、他のものには見えない?」


サラシアナの言葉に明らかにレディ・ミアは迷いをみせた。


誰かに確認をとってから、微妙な顔で両手で三角をつくる。


三角?

  

「見えるひとには見える?」


こんどは首を左右にふり、しっかりレディ・ミアは否定した。


だと、すると。


「ルルといたらオークには見つかる?」


その問いにも首は左右に振られた。


「ではナニかに、見つかる?」


こくり。


「この地の精霊たち?」


小さな肯定。


けれど、否定も混じっている。


サラシアナは考えたが、


「じゃあ、ルルを連れてゾドの村の人がいる小屋までの移動は可能?」


ため息をつく動作と同じく、レディ・ミアが頷いた。





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