水の記憶 54
ルルは、突然現れた薄い金色の光をまとったサラシアナにびっくりしていた。
目の前には、清流のようなプラチナの髪にアクアマリンの瞳の驚くほどきれいなお姫様がいる。
ーなぜか、半透明で。
「サラ、シアナ王女さま?」
驚きに涙もひっこんだ。
水の子の王女様のことは、辺境の村にいるルルも知っていた。
シャンフィールの民が敬愛してやまない水の女神に愛されし水の子だからだ。
具体的に水の子がなんなのか、ルルや兄のマハトもよくわかってなかったけれど、
ーああ、みずのお姫様なんだ。
やっと、意味がわかった気がする。
「きれい」
手をのばしたら、空を切った。
お姫様の身体は半透明にうすく金色に光っている。
もう一度触れようとしても、手はお姫様の身体を通り抜けてしまう。
あれ?これって?
「幽霊?」
ルルの言葉にサラシアナは、こまったように、首を傾げる。
「たぶん、生きてるとおもうんだけど」
「たぶん?」
「ええ」
「水の子って幽霊みたいなの?」
たしかに氷にならないと、水は手からこぼれ落ちるものだけど。
するとお姫様は曖昧な微笑みを浮かべて、首を傾げた。
「私の身体は、ファシル・アルド・バードの王様が守って下さってるーはず?」
「はず?」
「たぶん?」
「たぶん?」
ふたりの間にわずかに沈黙が落ちる。
すると、目の前のきれいなお姫様の幽霊?は、
「やっぱり私は役立たずなのかしら」
しょんぼりとうなだれた。
その様子に今度はルルが愛らしく、首を傾げる。
「お姫様は迷子なの?」
「迷子ー、かも」
ふわふわ漂ってるクラゲのような状態は、迷子とも言えなくはない。
「じゃあ、ルルが守ってあげるね!」
シャンフィールの民には、王家を守る義務があると、族長の娘である父から言われて育った。
水の子のサラシアナ王女となれは尚更だ。
にっこり笑顔になったルルに、水のお姫様は複雑そうに微笑んで、
「ありがとう」
お礼を言ってくれた。
たぶん、ここにカーグがいたならいろいろとツッコミがはいったに違いない。
ただ、カーグの願い通りにルルの顔に笑顔はもどった。




