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水の記憶47


意識を失いファンの腕の中にサラシアナが倒れ込んだ。


それと同時に同じようにぐったりとしている霧の中のカインたちの身が氷に閉ざされる。


薄い水金色をまとう氷はサラシアナのつかった力にファン自身が手を加えた証だ。


瞬間冷凍により仮死状態になったカインたちの身体がよりダメージをうけないように、ファシル・アルド・バードの王家だけが使える光の守護魔法をファンが同時にかけていた。


カインたちに忍び寄る影はなんとかなったが、ファンは腕の中の少女の様子に舌打ちをする。


「サラシアナ王女はアクア様のご寵愛をうける水の子だぞ?」


苦々しくレディ・ミアをみれば、彼女もまた、金地に黒目の瞳孔にまったく感情を感じさせずに見返してきた。


なぜかレディ・ミアもいまの状況に困惑していることが成り行きを見守っていた、というよりなにもできなかったアーゼルにもわかった。


レディ・ミアはもう一度ゆっくりと繰り返した。


「狭間の民に災禍を招くことは許されない」


先ほどの海にいるカサゴなどの岩礁に根付く、根魚と言われる魚が釣り上げられた時に鳴くような声音ではく、ヒトとしての声音だ。


アーゼルはゴクリと唾を飲み込むとレディ・ミアにむけて口を開く。


ここはファンではなくこの国の第二王子として、カインの兄として、アーゼルが言うべき言葉がある。


「弟たちが禁忌を犯し、申し訳ない、レディ・ミア。カインたちは知らなかった。狭間の民の理を」


震える声をおさえつけてなんとか声をだしたアーゼルを無機質な魚の目が見据える。


狭間の民には狭間の世界に住む民。


人間と魚人との間の民。


このことは光の大陸の王家でもごく一部にしか知らされていない。


シャンフィールでも王位継承者候補である第一王子のアイオンと第二王子のアーゼルとその直下にある騎士たちしか知らないトップシークレットだ。


まさかカインたちがこんなにも簡単に剣を抜くとは。


いや、幼女の悲鳴にとっさに剣をぬいてしまうくらい彼らは日頃から民を守る意識が強かったのだろう。


国民を守る騎士として、当然の反応だった。


それくらい悲痛なに嘆きがアーゼルたちの耳に容赦なく突き刺さり、心がざわつく。


だが、カインの犯した過ちの二の舞をふむわけにはいかない。


膝を折り頭を下げるアーゼルに彼の騎士達が続く。


ファンだけが意識を失ったサラシアナを腕に抱いたまま、鋭くレディ・ミアをみていた。


レディ・ミアはアーゼルとファンを交互にみやり、最後にサラシアナに目をうつした。


そして、アーゼルに告げる。


「顔をおあげなさい、第二王子。残念だが災禍の代償は払われた」


「えっ?」


まさかカインたちは死んでしまったのだろうか?


思わず視線をあげてカインをみるが水金色の氷は存在している。


「第6王子たちは生きている。我らが敬愛すべきアクア様の愛し子のおかげで」


ならば代償とは?


意味がわからずファンを見ると鋭い銀緑光の瞳が悔しげにアーゼルの大切な妹に向けられていた。


ぐったりと気を失っているようにしか見えない。


胸も上下していて呼吸をしているのはわかる。


ーただ、気を失っているだけでは?


混乱するアーゼルにファンが首を振り告げた。


サラシアナがこの地の精霊たちを召喚するかわりに彼らにひきづり込まれた、と。



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