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水の記憶44


サラシアナはファンがレディ・ミアと紹介した女性を不思議な思いでみつめた。


姉妹や女性騎士よりも背が高いことだけがマント姿からはわかるけれど、


ーほんとうに人なの?


なにがどうとかはわからない。


けれど、なんとも言えない不思議な感覚がサラシアナの心にひろがる。


けれど、決してソレはサラシアナに敵対するものではない。


生まれてからずっとそばにいた精霊たちの存在かないことに違和感は残っているけれど、狭間の海の民だというこの場所は、アクア・フィールの雰囲気となんとなく似ている。


サラシアナ以外の人間の前に姿を現す時のような、優しいけれど、どこか冷酷な存在に見えていた幼い時の記憶が呼び起こされた。


そう。最後にサラシアナが記憶している人前でのアクア・フィールの姿はもう記憶すらあやしいくらいに幼い頃だった。


あれは確かー。


霞かかった記憶を辿ろうとした時、クスリと思わず笑ってしまったという微かな笑い声をレディ・ミアがもらした。


マントのフードを深くかぶっていて、サラシアナが我にかえった時にはもう笑みは消えていたけれど、先程より雰囲気がやわらいだ気がする。


戸惑っているとファンがため息をついた。


「やはりサラには申し訳ないが、強引に連れてきた甲斐はあったようだな。サラシアナ王女同伴なら族長に目通りはたのめるのか?レディ・ミア」


すると、とたんに雰囲気が冷たいものへと変わる。


「狭間の海の民は、狭間の海の民。どちらの大陸にも属さない」


「建前はいい。狭間の海の民でもあなた方はシャンフィールの国民だ。そしてシャンフィールは光の大陸に属している。アーゼルたちはともかくサラシアナ王女の要請を断れないはずだ。そして私には聖王ラディオンの血が流れている。同席は可能なはずだ」


鋭い瞳をレディ・ミアにむけるファンの声も冷たくさめていた。


ふたりの間に冷たい沈黙がおちる。


息さえ凍りつきそうな沈黙にカインが思わず唾をごくりと飲み込んだ時、


嘆き狂う叫び声の間に、


「お母さん!助けて」


泣き叫ぶ幼い声が響いた。




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