水の記憶41
狭間の海は、文字通り光の大陸と彼の地の狭間にある海だ。
古よりずっと、2つの大陸の狭間にある。
狭間の海を越えて、オークたちは光の大陸にやってくる。
ファシル・アルド・バードのオークと違い、もうずっと、彼の地では雌のオークの誕生がない。
無差別に血を流し続けた故に、神々の怒りをかったのか、子孫を残すためにオークたちは狭間の海を越えて光の大陸の僻地を襲う。
いまも攫った女子供を連れて狭間の海の民の長に船を要求してきた。
彼の地へと、渡ってしまえばもう光の大陸には戻ってこれない。
一生をオークたちの種づけで終える。
種族の違う子供を前に発狂するものが、ほとんどだ。
事実、恐らくオークたちに恋人を惨殺されたのだろう若い娘の気を逸した笑い声がひびいている。
ーなんとも哀れなことだ。
狭間の海の長はそう思う。
それだけだ。
聖霊界が滅んでから、ずっと繰り返してきた。
いつだって、狭間の民は悪者だ。
光の大陸にも彼の地でも。
中立な立場でもなく、その日、その場で立ち位置が違う。
それか狭間の民。
オークが攫ったものの中にはまだ幼児といっていいものもいる。
長は苦汁切った表情をマントでかくす。
「さすがにあの子はわたせないよ。いくらなんでもの幼過ぎる」
長の言葉にオークは、コインをなげてくる、
金貨だが。
「無理なもんは無理だ、あの子は渡せない。狭間の民を愚弄する気なら構わないが」
マントで隠れた瞳が金色にひかりはじめるのをみて、交渉役のオークは舌打ちをした。
「ちっ、なら仕方ねー。あのちびスケだけ置いていく。他のやつの船を朝イチたのむぜ」
「海が荒れないなら用意しよう。お主ら、アクア様のお怒りを買うことをよもやしていないな?」
どうにも海が。水が落ち着かない。
胡乱げにオークたちをみていたら、遠くから馬の駆ける気配が聞こえた。




