水の記憶39
すいません 間違えていました
揺れていた地面がいつのまにか止まっていた。
あまり馴染みのない土の香りにアクアマリンの瞳がうっすらと開けられる。
すこし湿り気を帯びた草木が見える。
いつのまにか日が暮れたのか、あたりは薄暗い。
「気がついたか?」
静かだけど、肌に響くような声。
まだ覚醒しきらないぼんやりとした頭で声の主をみる。
鋭く澄んだ緑の強い瞳は、なぜかほっとした安心感で少女をつつみこむ。
「起きれるか?少し水や食べれるなら胃になにかいれた方がいい」
大きな手がサラシアナな額に優しく触れる。
あたたかなその手にまたうとうとしてしまいそうになる。
そもそも水の子である自分には、飢えや渇きは対極の存在だ。
どんなに周りで雪が降って水が凍り付いても寒さを感じないように、生まれてからずっと喉が乾くという経験をしたことがない。
食事はとるし甘いお菓子を食べたり、果汁をのんだりするけど、別になくても構わない。
食が細いとまわりは心配するけれど、サラシアナにとって食事もお菓子も水分も、別にないならないでも構わない。
ただ、用意してくれる人に悪いなと思うから食べている。
それを夢うつつに伝えると緑の瞳が微妙に歪んだ。
「そうか…。早く拐われた者を助け出して、もう一度、屋台巡りをしよう」
この世界には美味しいものはたくさんあるんだと優しく銀の髪を手櫛ですいてくれた。
その手があまりに優しいから少女の意識がまた眠りにつく。
気絶するような疲れてた眠りではなく優しい眠りに。




