水の記憶 25 王妃の願い
「こちらでおそろいですか?」
ビルはシャンフィールの王の間においてそろった人々に確認する。
一人は24歳ほどの白衣を羽織り動き差を重視した服も決して平民とは違う上等なもの身にまとった眼鏡姿の第一王子アイオン。
もう一人は21歳になるという第一王女。
こちらも長い髪は頭の上でまとめ手には薬草などをいれたバスケットを手にしっかりとビルをみてうなずいた。
似たもう一人よく似た双子の第二王女の手にも医薬品などの必要物資がもれていた。
そして最後に兵士姿のカインの手には武器が。
(いまから行っても武器が必要になるとは思えませんが。力仕事はいくらでも必要でしょう)
ビルは口にせずに王にむきなおる。
「では私達はファン・ファラシス国王とサラシアナ王女のもとへ参ります」
「ああ。頼んだよ。私の息子たちと娘をよろしく頼む」
「ご無事で」
国王と王妃の前でビルの細い指が魔方陣を描き、ふっとその姿が掻き消える。
あっと思うの間もない別れにロレッタの細い肩がビクッと動くのをみて国王は王妃で妹の肩を抱いた。
「大丈夫だ。ファシル・アルド・バードの国王にすべてをお任せしよう」
そのあたたかい肩の重みは昔から変わらない兄の手だ。
正直自分たちに夫婦の愛情はないかもしれない。
けれど幼いころからこの兄の下で庇護され守られ慈しみに満ちた生活を送ってこれた。
愛情の形は決して夫婦ではないのかもしれないけれど、あの子たちに対する思いは同じ・・・・。
「ファシル・アルド・バードの国王、ファン・ファラシス殿か・・・」
とても苦いものを噛んだように言葉にロレッタは思わず吹き出してしまう。
「まだ、どの王女も選ばれてもいませんのに」
「きみは選ばれないと?いや,選ばないと言えるのかい?」
国王の言葉に王妃は僅かに目をふせる。
先ほどから楽し気に歌う精霊たちの歌声。
からかうように、いたずらのようなささやき声は国中に駆け抜けていて、アクア・フィールの加護を強く受ける王家のものならみな耳にしている。
ずっと、老いてわが身が朽ちるまでずっとそばにいて守り愛で続けていくとおもっいてたものを手放す日はそうとおくないのかもしれない。
「とてもさびしくなりますわね」
生まれてきてから14年。もう14年なのか、まだ14年なのか。
そっと息を吐く。
「この国の成人まではあと2年だ。それまでは誰にも渡さないさ」
そういった国王にぽんと肩をたたかれる。
「いまはあの子たちと襲われたゾドの者の無事を祈ろう」
その言葉に自然と両手をくみあわせる。
魔方陣の中旅立ったわが子たちとともにオークにさらわれただろう女子供の無事を。
どうかみな無事に戻ってきてほしい。
そして、もしかなうならいま一度そのアクアマリンの瞳で自分を見つめて甘えて来て欲しい。
ーどうか無事で。サラシアナ。
気が付くと王妃の瞳から涙があふれていた。




