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水の記憶 21 光の国王とアンゴラウサギ


ひとしきり祝福の春風をまって精霊たちはすぎさった。


春風で少女のマントが乱れフートが外れてしまう。


黒髪に黒い瞳の可憐な少女がファンを大きな瞳でみつめていた。


「・・・すまないな。精霊たちが」


静かな声は意志を持つ者の強さを感じる。


しっかりした青年の声だった。


その声にびくっとサラシアナの肩がすくみ後退ってしまう。


「・・・ああ。そういえばサラシアナ王女は人見知りだったか。すまないな我が国の魔女長が手荒なマネをしたようで」


怯えてしまった少女に苦笑しながら、ひょいといまだに暴れまわっていたアンゴラウサギの耳をつかみあげる。


「エエイッ!わしの耳をつかむでない。ほんもののウサギのようではないか。お主はそもそも年寄りをもっといたわりを持つべきーむぐぐ」


「ちょっと黙っててくれヒズ」


長い耳で器用にウサギの口をしばってしまう。


まあこれくらい魔女なので簡単にとってしまうのだが一応黙る気にはなったらしい。


長いつきあいだしなによりこの魔女がファンをこの国に導いたのは、目の前の少女に合わせるためだったに違いないのだから、目的は果たしたはずだ。


まあ、魔女にとっていろいろとイレギュラーなことだらけだったみたいだが。


「このような身なりで申し訳ないが、私はファシル・アルド・バードの国王、ファン・ファラシスだ。きみはサラシアナ王女で間違いないか?」


自国の騎士の格好をした他国の国王からそう問われサラシアナは戸惑う。


そして、自分もまたマント姿ということに気が付いて慌てた。


「あ、あの、私のほうこそ申し訳ありません。このようないでたちで。シャンフィールのサラシアナです。水の子の」


「その水の子って説明はいらないな」


面白くなさそうに言うとファンは腕組みをした。


ファンは背も高く一般的な14歳の少女を簡単に見下ろす形になってしまう。


「きみはちいさいな。きちんと食べているのか?ーっと痛い!今度はなんだ!ヒズ」


ウサギの飛び蹴りを脛にくらいうずくまる。


その青年の前に少女を守るようにウサギが仁王立ちになる。


「年頃の少女にちぃさいは禁句じゃ」


「どうしてだ?私は見たままに言ったまでだ。小さいし細いし、まだまだだ出るとこもでてないほんの子供じゃないか」


「だからそれがよけいじゃ!サラシアナだってあと数年もすれば、立派に育つー痛い痛いぞ。なぜ儂をひっぱる姫!」


アンゴラウサギの耳をむんずとつかみ上げた少女のマントから見える耳が赤い。


なにをちいさいといわれたのかを理解したのだ。


「私はいいのです。兄さまたちもお父様だって気にしないもの。そんなこと」


「いいや、カイン(変態)はともかく女性はふくよかなほうがなにかといいと思うが。なにしろ女性は赤子を生むのだからな。私の母は華奢な人でな。私は難産で生まれてしまい父からはいまだに恨まれている。母を殺しかけた息子として」


「あやつは変人じゃから参考にならん。まあ、姫が華奢というのは認めよう」


「ふむ。やっと意見がそろったな。じゃあきみはーっと呼び名がいるな。お忍びの格好だろうそれは?私が調べた範囲では君は結構な箱入り娘で外にはでないって話だったんだが。違ったようだな」


「いや、お主の調べた通りじゃ。この姫はひとりでなど城下町どころか城の中ですらアクア・フィールの泉以外でていかん」


「-ヒズが無理やりつれだしのか。ビルを巻き込んで」


そういえば厄介ごとを全部ビルに押し付けてしまったなあと遠い目をする。


まあ、いっか。押し付けられるときはおしつよう。


適材適所だ。


たぶん。


「じゃあ、せっかくのお忍び楽しまないと損するなお互いに」


「-私はお城に戻りたいんですけれど」


かろうじて口に出た言葉は声量もないためあっさりスルーされて話が進んでいく。


「姫もこの容姿じゃ目立つしな。サラシアナ・・・無難だがサラと呼んでもいいかい?私のことはファンでもファラシスでもよい」


一国の国王を王女の自分が名前よびなんてできるはずないが、他の名前を許してくれそうなふんいきでもない。


「・・・ではファラシス様でよろしいですか?」


「呼び捨てでもかまわないが。まあいいだろう。君はどんなものが好きだい?正直私はもう腹ペコなんだ。朝からなにも食べて無くてな。高屋台のにおいがしていると・・・」


青年のお腹がキューキューとなっていることにサラシアナは気づく。


「な?とりあえず飯だけでもご一緒して願えないだろうかお姫様」


鋭い視線が言ってしてへにょとなさけない顔になったので思わずサラアナは噴き出してしまった。


「私でよろしければエスコートをお願いいたします」


「それではお手をどうぞお姫様」


騎士の礼にのっとりファンは手を恭しくさしだした。




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