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ゴールドシーカー8


 空中に浮かび上がったアダム言語は、ユラユラとしつつ整列する。そしてズガガガッ!! と音を立てて机に叩きついていく。土埃が舞った。


「けほっ、え、なに?」


「ごほ、これは……」


 文字は机に焼き付き、やがて其々が線を焼き付く。線は『地図』だった。恐らく世界地図。けれど、世界地図にしては異質だ。なんせ、大陸がめちゃくちゃである。海の形も違うし、本物の世界地図には無い大陸もある。


 地図は最後に大陸の左下側に集まると、炎のようなマークをつけた。


「ビンゴ!! やっぱり地図だった!! と、その前に。よくやったなリア!! うぉーよしよし!!」


 リアの頭を抱くとワシワシと撫でるケイ。リアは鬱陶しいと思いつつもやりたいようにやらす。散々撫でた後でリアを解放したケイは机に手をついて目を輝かせる。


「地図だけど、普通の世界地図じゃないな。でも、どこかで見た事がある。そうか!!」


 ケイは近くの紙束から丸めた紙を取り出すと、テーブルに広げた。そこには机に焼きついた地形や海とほぼ同じ、地形と海が描かれていた。


「大陸移動前の世界地図!!」


「大陸移動前? 何億年も前の地図って事?」


「あぁ!! 細部は少し違うが、間違いない。恐らく3億年ほど前……!!」


「3億年……」


 地球が生まれたのは約46億年前。


 そして、人類の祖であるホモ・サピエンスが誕生したのが約30万年前。


 明確な矛盾ができる。


「おかしくない?」


「確かに。3億年前に人類はいない」


「それに俺たちが巡った遺跡の年代は200年前くらいって話じゃなかった? なんで急に3億年前なんて途轍もなく古い地図が出てくるんだ?」


 ケイとリアはお互いに顔を見合わせて首を傾げた。


「そもそも、アダム言語の時点で矛盾ができてるな……。なんで、そんな難しい……使える人間なんてほぼいない言語を刻んだ石板なんかを、誰が作って何の目的で遺跡に納めたんだ? 遺跡を作ったんだから、誰か来る可能性は考慮した筈だ」


「でも考古学に詳しい親父ですら全部は読み解けないんだから、言語に意味はなかったのかもしれないのでは? ほら、矢に貫かれてから芽生えた、謎エネルギーで起動したんだし」


「そうだ忘れてた。矢も不確かな遺物だったな。ふむ……結局、遺跡が何を示したかったのか、残したかったのかが分からん……」


「でも、得たものがひとつある。謎エネルギーだ」


「俺にはさっぱり感じられないが……」


「俺も魔力より流し易いけど、何にもなれないエネルギーとしか分かんない。ほんと、不気味だ」


 矢に視線を向ける。謎エネルギーが芽生える原因となった3本の矢は、うんともすんとも言わずにテーブルの上で沈黙している。ケイは確定した事実を口にする。


「アダム言語、3億年……。アダム言語は神が人類に授けた最初の言語……」


「3億年前に人が居たって言いたいのか? んな、まさか……」


「でも、どれだけ考古学を学ぼうが結局はその時代に行ってみないと分からない事はある」


 ケイの言いたい事は分かる。3億年前に人が絶対に居なかった証拠など無い。


「兎に角、この炎の印の場所に行ってみよう。ノートパソコンがこの辺に、あった。よし、シミュレーションアプリを起動」


 ケイが開いたのは、色々なシミュレーションを行う専用のアプリである。勿論、簡単な地形変化や変動アプリも入ってある。過去の世界がどのように変化して、文明がどこからやってきてどうやって発展し、やがて現代に至るか。地形という人が住む為には絶対に必要な要素のシミュレーションは欠かせない。


 そして、3億年前の地形を開くと印をつける。そこからシミュレーションを開始して現代まで動かす。炎の点は大西洋の下。


………………


 石板と矢をもって船に乗り、やってきたのは地図が示した座標。


 ケイは耐水圧スーツと酸素系重装備、リアは耐水圧スーツと一応酸素装備も背負い海に飛び込む。


 太陽の光を受けて輝く海は綺麗だ、なんて考えていた時。センサーに沿って行くと、人口の異物が姿を現した。


 それは太陽の光を受けて輝く黄金のリング。直径3メートルほどのリングは、小さいながらも存在感を放っている。


「黄金のリング!!」


 リアは純粋に興奮する。お宝の発見というのは、幾つになってもワクワクするものだ。ケイもそれは変わらない。


「考古学的にも興味深い逸品だな。本来ならこれを持ち帰るのが俺の仕事だが、プライベートだし仕方ないよね」


 ケイはリングに近づく。


「古代の……装置? 石板を嵌めるーとか、矢を使ったら何か起こるーとか、まぁやるだけ試してみようぜ」


 石板を嵌める場所。無し。


 矢を近づけてみる。ほんの少し、鏃が震えた。


「もしかして、謎エネルギーか?」


 リアは指に謎エネルギーを集めると、リングに近づけ……黄金の光が駆け巡る。リングの内側に太陽光にも負けない、金色の温かな光が渦を作る。


「綺麗……」


「ちょ、リア!! 下手に触れたら!!」


 好奇心から渦に手を突っ込むと。強力な吸引力により引き摺り込まれる。


「うぉおおお!? やべ!!」


「リア!! 捕まれ!!」


「ダメだ親父!! 俺の手を離せ!!」


 しかし、水中で踏ん張るのには限界がある。リングの渦の吸引力には勝てず。2人して吸い込まれた。


……………………


 弾き出されるように身体が躍り出る。リアは息ができる空間に出た事にホッとして、次に父親であるケイの無事を確認した。


「親父!!」


「よかった、お互い無事だな」


「ごめん、俺の不注意で……」


「仕方ないさ」


 背後を振り返ると、何も無かった。ただ、岩だけが鎮座している。帰り道は閉ざされた事になる。


 改めて周囲を確認した。どうやら浅い洞窟のようだ。陽の光で明るい。


「帰れる場所に出てたらいいな」


「GPSは?」


「うーん、バグってる」


「バグってる? 壊れてない?」


「予備もバグってる」


「……」


「……」


 2人は嫌な予感がして駆け出す。



 外に出ると、爽やかな風が頰を撫でた。気候は初春に近く、空を見ると青空がある。



 そして。大自然の中にそれはあった。



 遠くに見える『黄金の城』。


 陽の光を受け、城から反射する黄金の光を浴び輝く城下町。


 予測だが1000万人は住める規模の都市だ。

 しかし遠くから見ただけでは文明のレベルは分からない。だけど、ひとつだけ確かな事がある。



 それは、ケイが夢物語のように思っていた景色だった。




「……黄金郷」




 声が震え同時に。


 魂が叫ぶ。口の端が吊り上がった。

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