ゴールドシーカー
突然だが、リスティリアの名前がある通り、リア達にも父親はいる。しかし、父親はある日忽然と姿を消した。
ノルンは父親……ケイ、後にノルンの性を継承してので……ケイ・リスティリアを愛しており、突然失踪した時も「あの人なら大丈夫」と根拠のない信頼をしていた。彼の職業は考古学者だ。そして考古学者なのだから、いつかは何処かに旅立つだろうと話していたのだ。
そして、失踪したという事は金銭面で収入がなくなったことを意味する。だから、より苦労する羽目になったノルンを思うとリアはケイの事が好きにはなれなかった。
そんな、ノルンよりも自由奔放な父親。ケイが突然帰ってきた事で物語は始まった。
…………………
休みの日。リアとルナ、クロエは実家に帰省する。もう慣れたモノで《門》による直接の帰宅も出来るようになった。
そしていつものように自宅の扉に鍵を差し込み……開いている事に気がついた。母であるノルンは連絡は取れるものの、連合国を飛び回っており帰宅はしていないはず。ならばデイルかと思いはするものの。彼は防犯意識が高い。鍵のかけ忘れ……をするなら遂にボケた事になる。
なにはともあれ。扉を開く。すると、玄関には草臥れた靴が一足置いてあった。運動しやすいように作られたであろう靴は土埃でくすんでおり、着用者が使い倒した事が分かる。
急な来客に誰だろうかとルナと話しながらリビングの扉を開くと。
父親の姿が見えた。
長めの黒髪ポニーテール。そして、とても男とは思えない整った目鼻口、要するに『美少女のような顔』と白い肌。それからリスティリアの家系特有の『空色の瞳』。小柄な体躯はとても40代とは思えない。俗に言う『男の娘』というやつだ。
そんな父親『ケイ』はデイルと話をしている。しかしリア達が扉を開けると同時に飛び跳ねるように椅子から立つと駆け寄ってくる。
「帰ってきたか!! 久しぶりだなぁ!!」
両腕を開き、胸に飛び込んでおいでと誘うも。ちょっとキレ気味のルナ。イラっとしたリアは当然、飛び込むなんて事はしない。
「リア、女体化したんだってな!! まぁ、パッと見そんな変わらんが……。そして君がクロエちゃんか!! よろしくなぁ!!」
「よ、よろしくお願いします……?」
困惑するクロエ。事前に話は通っているようで、説明するまでもなく父親はクロエを受け入れたようだ。まぁ、仮に反対しようものなら、リアは殴ってでも認めさせるつもりでいたが。
「で、何しに帰ってきた?」
「なんか冷たくないか?」
「当たり前だろ。アンタが自由奔放なせいで母さんがどれだけ苦労したか分からないのか?」
「ノルンには、確かに悪いと思う。けど、俺は『考古学者』だ。世界中を飛び回るのは仕方ない」
「それでも。せめて仕送りでもしてくれていたら、心情的にマシだったんだけどな。あんたはずーっと自分のやりたい事だけやってたよな? 母さんをほったらかしにしてよ」
「……むぅ」
「今更帰ってこなくていいよ。玄関はあっちだぜ」
親指を立て、玄関に向けてサインを送る。ケイは目に見えてしょんぼりする。だが、ケイはここで凹むような精神はしていない。罪悪感はあるが、これでも考古学者の端くれ。成果はあるのだ。
そんな冷たいリアとは対照的に。ルナは少し優しめに声をかけた。
「それでお父様はどうして帰ってきたのです? 何かあったのですか?」
「帰ってきたのは、レポートを国に提出する為、そして本当にお前達の顔を見たかったからだ。ノルンからの連絡でだいたいは把握していたしな。クロエちゃんと会うのは特に楽しみにしていた!!」
そこで、さっきまで成り行きを見ていたデイルも横から声を入れた。
「リア、少し話を聞いてやってはくれないか?」
「今更、話も何も」
「なに、ケイの持ち帰った話はわしからしても興味深くての。きっとリアの興味も引かれるはずじゃ」
リアはルナと目線で相槌を打ち、そしてケイに目を向けた。彼は元気にサムズアップしている。
リアは深くため息を吐いた。
「分かったよ……。師匠に免じて話くらいは聞いてやるよ」
「やったー!!」
………………
リビングで対面する形で5人はソファに腰掛けた。ケイは普通サイズのアタッシュケースを取り出すと机に置く。そしてパスワードを打ち込みキーを解除すると、アタッシュケースが開く。中には手のひらサイズの大きな『鍵』……のようなモノが納められている。金色で綺麗な細工の施された鍵だ。考古学に詳しくないリアからしても、この鍵がとても貴重な事は分かる。宝石が本物で、更に純金だとしたら数千万以上はするだろう。
「これが今回の遠征で発見した、鍵だ」
ドヤッと胸を張るケイ。鍵を上から下までじっくりと見てからリアは口を開く。
「それで? 親父はこれを見せてどうしたいんだよ」
「デイルさんとも話したんだがな。一緒に宝探しをしないか!?」
「宝探しぃ?」
一気に胡散臭い話を聞いたような反応をするリアに、ケイは続ける。
「この鍵は南米にある『カラマリア遺跡』から発掘したモノでな。恐らく、カラマリアの伝説を紐解いていくとこの鍵が必要な場所に辿り着くと思う」
「うーん……」
はっきり言おう。とても面白そうだとリアは思ってしまった。父親に対する怒りも、少しだけ鎮火している。しっかりと考古学者として仕事をした事が分かったからだ。
と、ここで疑問が生まれる。そんな貴重な鍵がここにあるのは何故?
「そんな貴重なモノ、普通は国に回収されるんじゃ?」
「チームの皆んなが国に隠して俺に預けてくれたんだよ」
「え、借りパク?」
「そうなるな」
「ダメじゃん!? バレたらどうすんだよ!?」
まさかのパクリ宣言に思わずツッコミを入れる。リアのツッコミにケイはケラケラと笑う。
「まぁ、新たに何か発見すれば帳消しになるさ!!」
「短絡的だな……」
「それで、どうだ。俺と宝探し……するか?」
未知を追い求める者。そしてなによりも、非日常を焦がれるリアにとって、ケイの誘いは甘美なものであった。
「行く……その代わり、今すぐ母さんに電話して謝れ!! 母さん、ずっと心配してたんだからな!!」
「ぐぬ……分かった。ノルンにも悪い事したからな。けど、息子と遺跡探索するの夢だったんだ!! 明日すぐ出発だ!!」
「今は娘だけどな。それで、ルナとクロエはどうする?」
ルナにクロエはどうするかと問いかける。ルナは少し悩み、クロエはルナの顔を見て首を振った。
「そうですね……。危険さとかを考慮すると……私とクロエちゃんは家で待っていた方が良さそうです」
「本当は私も参加したいけど、今は力不足だから……。リア姉の土産話を楽しみにしてる」
ケイは2人の辞退に残念そうにしながらも。
「分かった。まぁ、正直なところ……俺も魔法使いとしては、自分の身を守るだけで精一杯だしな……。2人の娘を危険に晒すわけにはいかん。ただ……その代わり、ルナもクロエも今度、いやノルンやリアも一緒に家族旅行にでも行こう!!」
家族になったばかりのクロエを気遣っての事だというのは、リアもルナも察する事ができた。同時に、ケイなりに家族の縁を手繰り寄せたいのだという事も。それならば常に誠実でいろよとも思わなくもないが、仕事が大好きな人間ゆえの欠点とも言える。
ところで、空気になっている老人が1人。
「わしは?」
「遠慮してもらえます?」
「結構傷つくのぅ」
だが、その答えは分かっていた。デイルは元から断るつもりだったようだ。
………………
実はケイは《鍵箱》が使える。これは、考古学者として世界を飛び回る時に荷物がネックとなり必死に覚え練習を繰り返し使えるようになったのだ。ケイが唯一使える高難易度の魔法でもある。
そんなケイに荷物を預けて、場所は空港。《門》を使えばひとっ飛びしたいところだが、それだと不法入国となるので手順は大事である。そして向かうは連合国でも行ったことのない『オラフィス』。石油関連の特産地でもあり、化学よりも科学工業の発展している連合国でもある。リアもゲーム関連で、とてもお世話になっている連合国とも言える。
そんなオラフィスには、未知の遺跡というのが多数ある。石油の取れる大きな砂漠があり、エジプトと並ぶ特殊な古代文明の名残りが多く散見されるのだ。
更に、砂漠だけでなく。人の住まない未開の土地も多く、そこにも未知の遺跡が多く考古学的な価値は高い。
そして、リア達は見つけることとなる。
眩い黄金の都市。
黄金郷を。




