ゴールドシーカー2
カラマリア遺跡から始まる伝説は。旧時代の頃、世界に一柱の神が降りて、人類を選別し、連れ去った。そこは誰もが憧れる天国であり、選別された人類は繁栄を極めた。そして後に起こる隕石による大災害。神による地上の浄化、ノアの方舟。全てから守られた都市は、後に黄金郷と呼ばれた。
伝説の地に行くには3つの石板がいる。
ひとつはアルマスラ遺跡。砂漠にある、未開域領域にあるとされる遺跡だ。地図はカラマリア遺跡の……正直心許ないどころか雑すぎるモノしかないので、本当に苦労しそうなところだが。こういう時こそ《門》の魔法があれば取り敢えず遭難はしないので、デイルさまさまだとリアは思った。
ふたつめは海底にあるとされる、ラグ遺跡。海底遺跡の名の通り、人が調査に赴くにはかなりの装備が必要で、しかもこれまた地図はカラマリア遺跡のモノなので、探し回らなくてはいけない。やってらんねぇなとリアは思ったが、ここは考古学者のケイの出番だ。彼はある程度の目星はつけてあるのだとか。
みっつめ。サレンクラ遺跡。未開域のジャングルにあるとされる、古代文明の名残りのある遺跡だ。ジャングルの調査だが、ここで大変なのはその地に住む動植物には『毒』を持つ生物が多く、普通の調査部隊では中々踏み込めないでいる。だが、これまたリアとケイは普通ではないので毒なんて気にせず進めるわけだ。この遺跡は以前よりドローンによる上空探査で位置は分かっているので、赴くのは簡単である。
「さて、我が息子……いや娘よ!! どこから行こうか?」
「みんな俺が性転換した事実を受け入れるの早すぎない? まぁいいけど。うーん、面倒な砂漠から攻略する?」
「よし、分かった。砂漠もかなりの準備が必要だからな。だがこの俺は《鍵箱》が使える!! 軽装でも大丈夫だ!! ただ日焼け対策の服と砂除けのゴーグルだけ付けて行こう」
「経口補水液も忘れんなよ。まぁ、俺は半分ドラゴンだから早々死にはしないけど」
という訳で未開域の砂漠から攻略する事が決まった。砂漠の境界線には街があり、緑化実験が為されている。ので境界線は分かりやすい。
「リア、未開域は基本的に侵入禁止だ」
「うぇ、そうなの?」
「済まないが《門》である程度遠くまで飛ばしてくれないか?」
「バレたら本当に面倒になりそう。やっぱり辞めとけば良かったかなぁ」
そう言いつつも《門》を開き、ある程度の距離を移動する。砂漠の砂を踏み込むと、少し沈み込み歩き難い。空の太陽は燦々と光を降り注いで、侵入者に試練を与えているようだ。
「あっつい……」
「だなぁ、氷系の魔法が使えれば良かったんだが」
「氷は俺も苦手なんだよなぁ」
「そうなのか? 最近、リアの姿をテレビや広告で見る機会があったが」
「無敵になれる装備魔法、そして過剰戦力でいいなら、ここら一体を吹っ飛ばせるぜ?」
「こっわ、怒らせんとこ」
「もう充分キレてるよ」
無駄口を叩き合いつつ、砂漠を進んでいく。一歩ずつ歩く度に砂に足を取られ体力を消耗する。
「なぁ、どこまで歩くんだ?」
「座標だとこの辺りなんだがなぁ」
「なにもないじゃん」
リアに言われたケイは一度立ち止まり、《鍵箱》からある装備を取り出した。
「じゃじゃん!! 広範囲地空立体透過投影機〜」
大型の機械だ。小さなパラボラアンテナが付いており、下部の金属の杭で地面に突き刺し使う事が分かる。どう考えても持ち歩けない、だからこそ《鍵箱》を持つ父親が使えるのだと分かる。
「名前が長い、けど何の道具か1発で分かったわ」
「座標だと本当にこの辺なんだよ。だから、一歩ずつ行こうぜ。時間はあるんだしさ」
「言い難いんだけど、俺は卒論出さなくていいから、そしてグレイダーツ校長の好意で時間がある訳であってね。1週間以内には帰るぞ親父」
「はぁ!?」
「当たり前だろ、あんたと違ってこっちは学生だぞ」
「くっ、仕方ない急ぐか」
装置に魔力が注がれると。ブァン!! と音が鳴り青白い光の波動が駆け抜ける。まるでゲームのように地面から魔力で出来たホログラムの数値などが浮かび。地面には地中を透過するように、砂の下をホログラムが浮かび上がらせる。
すると、あと50メートルほど先。探査装置の効果範囲ギリギリに、明らかな人工物の壁のような立体物が浮かんでいた。
「見つけたぜ!! 行くぞリア!!」
「あ、おい!!」
あれでも40代だ。なのに元気に駆ける様は宝物を見つけた小学生のよう。まぁ、見た目がとてもじゃないが40代には見えず、10代後半と言われた方が納得できるので、強ち間違った表現でもないが。
本当に、考古学が好きなんだな。リアはそう思いつつ追いかける。好きなモノに全力を出せるのは羨ましいし、好ましい。……ほんの少し、棘を取ろうかなと思った。
「リア!! この下に遺跡がある!!」
「それは分かったけど、どうやって行くんだ?」
「アルマスラ遺跡の文献には……。資格ある者へ。太陽の温もりは、冷たい月を温める。月の光満ちし時、光差す道となる。って書いてあった」
「光差す道ってのは、遺跡への入り口の事だろうけど。太陽の光で月を温める? どうやって?」
「こういう謎解きは古い文明と照らし合わせて……多少強引な事が多い。装置を移動させて試してみよう」
再び探査の魔力が光り、地面を透過してホログラムが浮かぶ。すると、丁度数メートル先に階段が……。そして30メートル間隔で三角形の方向に、謎の大きな異物が3つ沈んでいる事が分かった。説明されなくても、これが階段を出現させる装置なのだろう。となれば、あとは資格とやらが必要な訳だが。
「資格……ふぅむ」
「資格って言えば、あの無駄に豪華な鍵は違うのか?」
ケイは黄金の鍵を取り出す。鍵は太陽の光を浴びてキラキラと金色の光を放っている。放って……やけに輝いている。
「めっちゃキラキラしてる!!」
「資格とやらは鍵の持ち主かどうかで決まりだな。なら次はどうすれば? 親父の知識の出番だぜ」
「鍵なんだから鍵穴がある筈だ。その鍵穴が物理的なものなのか、はたまた魔力的な機構のものなのかが……」
「古代にも魔力的な機構って多いのか?」
「割と多いぞ。だから無闇矢鱈に魔力が使えなくて、発掘作業は大変なんだよ」
「今さっき思いっきり魔力を使う装置使ったよな?」
「正式な調査じゃないからいいんだよ!!」
後先考えずにやりたい放題で宝探しをする父親に少々頭痛を感じるリア。しかし、国の承認をすっ飛ばして犯罪スレスレでする宝探しを何処か楽しいと感じている自分がいる。
ともかく。鍵穴を探さなくてはいけない訳だが。
「暑い……」
空に浮かぶ憎たらしい太陽の光を遮る為に、手を翳した。その時だ。
「……ふむ」
手の甲に鍵穴のようなマークが浮かんでいた。つまり、条件は。『太陽を翳してみる』。なるほど、ならば自身の影に鍵穴が現れないのも納得だ。しっかりと、謎解きは効果を発しているらしい。
「太陽の影に出来るって訳かぁ。親父、鍵貸して」
「見つけたのかリア!!」
「おう、手を翳したら鍵穴が」
「古代の魔法ってやつは、太陽と月を組み込みたがる所があるからな。しかし、翳すという行為が機動の条件だったとは」
ケイから鍵を受け取り、手の甲に鍵の先を向けると横に捻る。すると、ガチャンと駆動音が鳴り響く。
すると地面から振動が伝わってくる。資格ある者が鍵を回した事で、謎解きが開始される。地面から迫り出すように、あの距離を置いて三角形の形で配置された遺物が姿を現した。
出てきたのは巨大な鏡だ。台座だけで2メートルの高さ。鏡は半径2メートルの大きさの円状だ。鏡は太陽の光を浴びて、光を反射させる。ただ、普通に反射してはいない。鏡に当たった光は屈折して、全く違う方角に光を飛ばしていた。
「もしかして曲面鏡?」
「凸面鏡か凹面鏡ともいう。光の屈折にはうってつけの鏡だ。さて、ならここから再び謎解きになるが……。言葉通り、この鏡を動かして月に太陽光を当てればいいのか? 古代の機構は複雑だったり雑だったり、謎解きには飽きないなぁ。それに光と闇が大好きだ。まぁ、古い時代の魔法なんて今ほど発展してないし、太陽や月は信仰の対象だからな」
リアは無言でひとつめの曲面鏡に向かう。台座には横に動かす為の棒が飛び出ている。
「でも親父ー。この鏡、回転させる事しか出来なさそうだぞ?」
「なら答えは簡単だ。三角形に光を繋ぎ合わせて、最後の鏡で月に照準を合わせるんだと思う。ここで大切なのは時間だな……。月と合わせる為には……」
「なぁなぁ、とりあえず動かしてみようぜ……罠とかないよな?」
「ここで罠があったらやってらんねぇぜ」
ちょっとワクワクしてきたリアは、ケイにそう提案した。ケイは漸く調子が乗りだしたリアを嬉しく思いながら「よし、やるか」とリアの隣に立つ。
棒を掴み、押して回す。グググと石が擦れる音と共に鏡の台座は回転し。遠くにある2枚目の鏡に、光の線が出来た。
仕掛けの解き方は正解のようだ。
「……光なんて月に届くまでそれなりの時間がかかる。スペクトラム的考えを当てるなら、この仕掛けを作った者は光を分析した? 古代の科学で魔法以外の考えを持っていたとでも言うのか? なら、これは電波塔? 確かに情報の方が速度は早い」
「どっちにしろ試してみるしかないんじゃないか?」
「なら次の鏡に行こう!!」
砂漠の足取りは重い。だけど、どこか軽やかだった。




