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北方海の守護天使  作者: h.hiro
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番外編「恵理香と美食カレーコンテスト」

北方海を航行する船舶では毎週金曜日の夕食はカレーライスになる。

カレー曜日と言われ船員や漁師たちには結構人気のあるメニューだった。

実はこれを始めたのは恵理香だったりする、転生前に聞いた日本海軍や海上自衛隊での話が元だった。

激務である対シーサーペントとの戦いの中で乗員達が心に余裕を持てる様にとの趣旨であった。

まあ本当は恵理香が転生前からカレーライスが好きだったのが一番の理由だったが。

転生後恵理香になって最も困ったのは身体が女性になった事だったが、食事もまた懸念材料だった。

ゲームでは食事に対しては描写が無かったからだ。

もっともその懸念は直ぐ晴れたが、食事に関しては転生前とそんなに変わらなかったからだ。

だからカレーライスが出て来た時は思わず感動したものだった、姉の万理華には不思議そうな顔をされたが。

その喜びから定期的に食べられる様にと設けたのがカレー曜日と言う訳だった。

だが恵理香の個人的な思惑から始まったカレー曜日は話しを聞いた他の商会が続々採用してゆく事になる。

まあ守護天使様が始めたと言う事もあったが、前述した通り戦いの中で心に余裕を持てると言うのが大きな理由だったりする。

だが事態はこれで終わった訳ではなかった、ハンターギルド以外にも広がっていったからだ。

噂を聞きつけた商船ギルドや漁師ギルドでも所属する商会で取り入れ始め瞬く間に広がっていったのだ。

こうなると当然どの商会のカレーが美味しいかという議論が起こってくる。

その結果ハンター&船員&漁師ギルド共催のカレーコンテストが開催されることになったのだ。

「いやだからと言って何故私がこんな役をやる羽目になるんですか。」

『第1回美食カレーコンテスト』とのぼりが掲げられた会場の審査委員長席に座らせられた恵理香がぼやく。

カレー曜日を考案し広めたという事で恵理香は美食カレーコンテストの審査委員長に選ばれたのだ。

本人はかなり困惑していたが、姉の万理華はもちろん優香とロベリヤは当然だと言って盛り上がっていた。

「牧瀬艦長、その点については私も同意する。」

司会者と書かれた名札を下げたレイアが恵理香の隣で同じ様にぼやいでいた。

レイアも司会者として駆り出されていたのだ、本人の知らない中にだ。

2人は顔を見合わせて溜息を付くしかなかった。

「ギルド長、そろそろ開始時間です。」

そんな2人にスタッフが申し訳なそうに声を掛ける。

「分かった・・・」

「はい・・・」

レイアと恵理香は答えるとステージに向かう、まあ2人にしてみれば断頭台に向かう気分だったのは言うまでもない。

「それでは第1回美食カレーコンテストを開始する。」

ステージに立ったレイアが引きつった笑みを浮かべながら開会を宣言する。

「「「うぉぉぉ!!!」」」

盛り上がる会場の人々にレイアは更に引きつった笑みを浮かべる。

「ああ私も出場選手の方に入りかったのに残念だわ、恵理香ちゃんに絶対選ばれる自信あったのに。」

審査員席に座っていいる万理華の嘆きに恵理香は深い溜息を付く。

「姉さん何やっているんですか。」

カレーコンテストの審査委員長に恵理香がなると聞いた万理華が自分も参加すると言い出すのは必然だった。

「恵理香ちゃん、幼い頃からカレー好きだったのよね、作ってあげると嬉しそうに食べて、あああ!!!あの頃の事を思い出すと!!!」

この人商会長達の間では鉄の女とか氷の美女とか言われているんだよね・・・とてもそう思えない姉の姿に恵理香は泣きたくなった。

まあ審査委員長の身内という事で参加は認められず、審査委員なら問題ない事になり万理華は受け入れたのだが。

「それではエントリーナンバー1番須藤 美波、彼女はハンターギルド嘱託の医者をやっている・・・」

「先生まで・・・」

恵理香とレイアが何故かやる気あふれる美波を見て悩む、普段の低いテンションは何処かに行ってしまったらしい。

「まあこれでも中央海に居た頃は結構料理をしていんだ、中でもカレーは得意だった、これは負けらられない。」

医者として何時もこれであれば良いのにと恵理香は思った。

「次、エントリーナンバー2番・・・マーメイド商会のイリア・マイコードとマイ・東条・・・お前たちもか・・・」

マーメイド商会のイリアとマイの登場にレイアは頭を抱えたくなってしまった。

「すいませんギルド長、宣伝になるからとロバートが勝手に申し込んでしまって・・・」

「・・・こんなものに出たくなかったのに。」

ひたすら恐縮するイリアと投げやりなマイの二人組に恵理香は苦笑する。

「エントリーナンバー3番・・・三雲商会のセレス・リンドバーク・・・」

「あああ、憧れの守護天使様に食べて頂けるなんて・・・」

感激に打ち震えるセレス、どうでもいい事だが可愛いリボンで飾られたエプロン姿は幼い子供の様で可愛かった。

「「「「「きゃぁぁぁ!!!セレスちゃん!!!!」」」」」

応援に来ていた三雲商会の乗員達がペンライトを振りながら歓声を上げ盛り上がっていた。

「ははは・・・」

「もう何も言わんぞ私は・・・」

恵理香とレイアは全てを諦めた様な引きつった笑みを浮かべるしかなかった、だが2人はこれからが悪夢だとは思っていなかった。

「次は・・・エントリーナンバー4番・・・嘘だと言ってくれ・・・」

「ギルド長?」

まるでこの世の終わりだと言わんばかりに声を上げるレイアに恵理香が問い掛けるが。

「世界の歌姫・・・神代 レイ・・・」

「はぁ!?」

告げられた名前に恵理香が一瞬茫然としたあと視線をステージに向けて固まる。

「皆さん神代 レイです、守護天使様の為頑張りますね。」

「「「「「「うぉぉぉぉレイちゃん!!!!!!」」」」」」

盛り上がる会場のボルテージは凄まじい振動となって響く。

「何をしているんですか神代・・・レイ・ちゃん!?」

神代と呼ぼうとしてレイの笑っていながら強い圧を感じて言い直す恵理香(笑)。

「恵理香ちゃんが審査委員長やるならぜひ参加しないとね、これでも料理は得意よ。」

ドヤ顔で決めるレイ、益々ファン達の歓声が盛り上がる。

「いえ貴女は超有名人なんですよ、こうも気軽に現れたら周辺は大パニックになります!!」

レイのドヤ顔を見ながら恵理香が絶叫する。

「くぅぅライバルがこんなに出てくるとは・・・ギルド長私も急遽参加します!!」

「これ以上厄介ごとを増やすな牧瀬商会長!!!」

審査員席から立ち上がりステージにそう言って向かおうとする万理華にレイアが怒鳴る。

最終的に恵理香が「今度お姉ちゃんのカレー食べたいな。」と言って収まった。

万理華はご機嫌だったが、恵理香は恥ずかしかったのは言うまでも無い。

「次エントリーナンバー5番・・・ギルド調査部ロベリヤ・レインバークとドック所属優香・パーク。」

「お二人もですか・・・」

既に諦めの境地に陥ったレイアと恵理香。

「私達を忘れてはないよね恵理香。」

「がんばるからね恵理香。」

普段は恵理香を巡ってライバル同士のロベリヤと優香がタッグを組むというのは珍しい事だった。

「「参加者が参加者だから・・・負けられない・・・・」」

背後に赤いオーラが見えなかったのは恵理香だけなのは相変わらずであった。

「では料理開始しろ。」

常に冷静に事を進めるレイアだったが今回は投げやり気味にになっていた。

まあ状況がこれでは仕方が無いだろうなと恵理香は現実逃避気味に笑うのだった。


エントリーナンバー1番須藤 美波

鼻歌を歌いながら美波は材料を切りスパイスを組み合わせ料理を進めていく。

手際は滑らかで手慣れている、料理が得意なのは確かだったらしい。

「うむ完璧だな。」

ちなみに普段のやる気なしの姿しか見た事の無い人々はその姿に驚いていた。

普段からそういう姿も見せれば評判も良くなると恵理香は思うのだが当人はまったく気にしていない。


エントリーナンバー2番イリアとマイ

「カレーを作るなんて養成学校時代を思うだすな。」

「あの時イリアがスパイスの分量を間違えて大騒ぎになった。」

「マイだって野菜がちゃんと切れていなったじゃない。」

「肉の準備は完了。」

「スルーしたわね・・・」

掛け合いをしながら料理を進めるイリアとマイは楽しそうだった。


エントリーナンバー3番セレス・リンドバーク

「わわわ・・・鍋が噴きこぼれる、あとこれどうするの?」

「セレスちゃんがんばれ!適当に材料をとスパイスを入れれば完成するわよ。」

「無責任すぎる!」

フリフリのエプロン姿で料理するセレスは微笑ましく会場から声援が入る。

ただ審査で食べるのは私なんで適当と言うのは止めて欲しいなと恵理香は思った。


エントリーナンバー4番神代 レイ

「野菜はこれで良いわね、肉の準備も終わったしスパイスも完璧、さあ始めましょうか、恵理香ちゃん待っていてね。」

野菜を切り、肉の下味を行い、スパイスを調合し、それらを鍋に入れてと慣れた手つきで進めるレイ。

前にレイが息抜きに料理にはまっていると聞いていた恵理香、どうやら調理の方も歌同様完璧らしいと感心させられていた。

「世界の歌姫に料理を作ってもらうなんて恐れ多いですね。」

恵理香はレイの調理風景を見ながら苦笑するのだった。


エントリーナンバー5番ロベリヤと優香

恵理香を巡っては張り合う事の多いロベリヤと優香だがそれ以外では結構仲が良かったりする。

「優香、野菜を切ったよ。」

「スパイスの準備はOKよ、鍋に入れて。」

ライバルが多いと思った2人は今回は手を結ぶことにしたらしい、何時もこうだと良いのだけどと恵理香は溜息を付くのだった。


そして2時間後、各参加者の調理が終わりいよいよ審査が始まった。

恵理香と万理華そして司会だけでなく審査員をやらされたレイアの前に5皿のカレーが並ぶ。

参加者達はそれぞれの席で期待を持って恵理香達を見ている。

「緊張しますね。」

恵理香は参加者達と観客の視線に落ち着けなかった。

「私としては早く終わらせて欲しいところだがな。」

レイアは心底疲れたと肩を落としながら言う。


「ふふふ・・・誰も私の作ったカレーは越えられないでしょうね。」

自分のカレーしか恵理香は受け入れないと自信たっぷりな万理華。


エントリーナンバー1番須藤 美波

「どうかな守護天使殿。」

見た目は普通のカレーだが一口食べた恵理香はほっとした気分にさせられる。

「姉さんの作ったカレーを思い出し・・・」

そこまで言った恵理香は横からのプレッシャーに思わず硬直する。

「へぇぇ・・・そうふなんだ恵理香ちゃん。」

「いえ姉さん、似ていると言うだけで他意は・・・」

「・・・帰ったらカレー作るから・・・食べてね恵理香ちゃん。」

真っ青になる恵理香、何が自分に起こるか容易に想像できたからだ。

「・・・はい姉さん。」

諦めの境地に陥る恵理香だった。


エントリーナンバー2番イリアとマイ

「どうかな恵理香。」

「恵理香、食べてみて。」

「ええ、イリア、マイ」

何故かこの2人は安心できる恵理香だった、なお最近は名前で呼び合うまで親しくなっていた。

あの御曹司や水晶島の件以降も共同で仕事をする機会があったからだ。

もっともその所為で万理華はもちろんロベリヤと優香まで機嫌が悪くなったは何時もの事だったが。


エントリーナンバー3番セレス・リンドバーク

「天使様どうぞ!」

満面の笑みを浮かべカレーを差し出すセレスを見て恵理香は妹が出来た様な気分になる。

まあ物心付いた頃から妹だったので恵理香としては嬉しかったりするのだが。

ちなみに万理華は「お姉ちゃんぶってる恵理香ちゃん可愛い。」と言ってセレスの事は敵視していなかったりする。


エントリーナンバー4番神代 レイ

万理華そしてロベリヤと優香とっては絶対的な敵であるレイ。

3人から凍り付く視線を浴びてもレイはまったく気に留めていなかった。

表面的にはきらびやかな世界に見える芸能界だが、その裏はドロドロしたものである事をレイはよく知っている。

辛くなかったと言えば嘘になるが、それでもやってこれたのは恵理香が居たからとレイは思っている。

「恵理香ちゃん、私のカレーどうかな、貴女の為に心を込めて作ったの。」

目を潤ませそう言うレイの台詞にファン達は感激し、万理華達は憮然とした表情を浮かべる。

後で機嫌取るのが大変だなと恵理香は深い溜息を付くのだった。


エントリーナンバー5番ロベリヤと優香

「さあ恵理香、私達の番だね。」

「期待していてね恵理香。」

「お手柔らかにお願いしますね。」

自分達の作ったカレーの前にドヤ顔で恵理香を見るロベリヤと優香。

ある意味恵理香にとっては最大の鬼門といえるかもしれない2人だった。

ただ恵理香を巡って張り合う2人が例えこの時だでも協力しあうのを見るのは新鮮だった。


試食を終え恵理香と万理華そしてレイアは審査に入ったのだが。

「「誰を優勝させても騒ぎが起こる。」」

「ふふふ・・・皆落選よ。」

問題無く進むわけも無く恵理香とレイアは悩み、万理華は誰も認める事は無く。

全員優勝となってコンテストが閉幕したのは数時間後の事だった。

なお恵理香とレイアはコンテストの参加は二度と御免だったが、好評だった為毎年開催される事になった。

恵理香とレイアが絶望に落ちいったのは此処に記する必要も無いだろう。

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