第31話「南方海から来た女」
ギルドからの依頼を完了し後処理の為、ハンターギルドに赴いた恵理香は早く着き過ぎたので時間を潰す為食堂へ向かった。
そこで恵理香は数人のハンター達が誰かを囲み揉めている場面に遭遇する。
「ふん、やはり北方海の奴らは腑抜けているな。」
ハンターの男達に囲まれているのは恵理香と同じ年齢の長い銀髪に左目に黒い眼帯をし女性で馬鹿にしたような表情を浮かべ周りを挑発していた。
「腑抜けているだと、てめえ何様だ!女だからといって容赦しないぞ!」
「ふん・・・・」
その女性は男達の怒りを歯牙にも掛けず不遜な態度で、食堂内に険悪な雰囲気が広がる。
もちろん他のハンター達も、彼女の「腑抜けている。」と言う言葉に怒り顔だ。
「お前達ここで何をしている!?」
その時食堂内に響く声、皆が振向く先に居るのはギルド長のレイア。
彼女は食堂内の険悪な雰囲気に繭を顰め、その中心にいる者達を見る。
「マウラ・ロデック、私は騒ぎを起こすなといった筈だが、これは一体どういう事だ?」
そう言って食堂内を見渡したながらレイアはマウラに問いただす。
「私はこの者達に本当の事を言っただけです教官。」
「俺達を馬鹿にしたのがそうだと言いたいのか?!ふざけるな!!」
平然と答えるマウラに男が怒りの声を上げる。
「いい加減にしろ!、マウラ、お前もこれ以上騒ぐなら容赦せん。」
レイアの怒りにマウラと男は共に不満げな表情を浮かべながらも黙る。
「お前たちは次の仕事の打ち合わせが有る筈だ、さっさと行け。」
「ああ・・・ギルド長。」
男は不満顔だったが仲間と共に食堂を出て行く。
それを見送りレイアはマウラを見て言う。
「・・・マウラ・ロデック、お前もさっさと到着の手続に行け。」
「きょ・・ギルド長、その前に質問をお許し願います。」
「何を聞きたい?」
苦々しい表情を浮かべながらレイアが促す。
「北方海の守護天使に会いたいのですが、何処に行けばよろしいのでしょうか?」
突然自分の私の事が出てきて恵理香は驚いた表情を浮かべる。
レイアが苦笑に表情を変えて、マウラの後ろに居る恵理香に視線を向けて言う。
「天使ならお前の後ろに居る彼女がそうだ。」
その言葉にマウラは後ろを振向き、恵理香を見つめて驚いた表情を浮かべる。
「貴様が北方海の守護天使か?」
「確かにそう呼ばれてはいますが・・・牧瀬商会所属まほろばの艦長牧瀬 恵理香です。」
一体何処まで例の二つ名が知れらているのかと鬱になりながらも自己紹介をする恵理香。
「マウラ・ロデック、シュヴァルツ商会所属レーゲンの艦長だ。」
そう名乗ってマウラは意味深に恵理香を見る。
「もう良いだろマウラ・ロデック、私と共に来い。牧瀬艦長、担当の者が探していた、お前も早く行け。」
レイアの言葉に頷き、恵理香は食堂を出る為その場を離れる。
マウラの視線は、恵理香が食堂の外に出るまで外される事は無かった。
その後事後処理を終えギルドの外廊下を歩いていた恵理香はレイアとマウラが揉めている様子を見て立ち止まる。
いやマウラが一方的に食って掛かっている様に恵理香には見えた。
「ここでは教官の能力は発揮できません、こちらに戻って頂けないのですか?」
「何度も言った筈だ、私はここを離れる気は無いと。」
レイアはいかにもうんざりといった表情を浮かべ対応している。
「いえ納得しかねます、ここの連中はそろいもそろって腑抜けです、そんな者の為に教官の能力を使うなど・・・」
マウラの言葉にレイアの表情が険しくなる。
「ずいぶんと偉そうな事を言う様になったなマウラ・ロデック、何様のつもりだお前は?」
レイアの迫力にびっくと身体を震えさすマウラ。
俯き震えるマウラを見つめレイアは深い溜息を付いて言う。
「取り合えず騒ぎを起こさんでくれ、お前は南方海のギルドから派遣されてきたんだ、それを忘れるな・・・もう良いだろう部下の所に戻れロデック艦長。」
「はい。」
力無く返事をし、マウラは事務所に戻って行った。
その背中は小柄でかつ細身な所為か余計物悲しく恵理香には見えた。
とういうか何だか盗み聞きした様で恵理香は罪悪感を覚えこの場を離れようとしてレイアに声を掛けられる。
「そこに居るのは分かっているぞ牧瀬艦長。」
「すいません聞くつもりは無かったのですが。」
恵理香の謝罪にレイアは苦笑を浮べて答える。
「別に怒ってはいない、お前が盗み聞きする様な人間では無い事くらい分かっているさ。」
そう言ってから溜息を再び付くとレイアは続ける。
「マウラ・・・ロデック艦長は確かに優秀だが、どうも自分の能力を過信している節がある。南方海のギルドで教官をしていた時から感じてはいたのだが。」
レイアは短期間だが中央海ギルドの養成学校で訓練教官を務めていた事があり、マウラはその時の生徒だったと恵理香に説明する。
「確かに自分の能力を信じる事は悪く無いが、過信すればどうなるか・・・いや牧瀬艦長には釈迦に説法か。」
「・・・それは買いかぶりですね、私は自分に出来る範囲の事しかやらない臆病者です。」
レイアは恵理香の言葉に意地の悪い笑みを浮べて言う。
「私は臆病者だと言っている割にそんなところを今まで見たことが無い人間を知っているがな。」
意地の悪い笑みを浮かべながら言うレイアの台詞に恵理香は苦笑するしかなかった。
「悪かったな牧瀬艦長、色々手間を掛けさせて、だが出来ればロデック艦長の事も気に掛けてやってくれ、お前に頼むのは筋違いかもしれんが。」
「出来る範囲ですがね。」
「ああ、出来る範囲でだ。」
その返答にレイアはにやりと笑うと恵理香の肩を叩いてギルド長室に戻って行った。
レイアを見送った恵理香はギルドから商会へ戻って行ったのだった。
恵理香とマウラが出会ってから2日後。
「艦長、まほろばの出港準備完了です。」
まほろばは北方海奥地の海域へ向かう為中央港から出港しようとしていた。
「それでは出航しましょう、準備は問題ないですね。」
「はい艦長、問題ありません。」
問いに副長が答えると恵理香はまほろばに乗り込もうとして、ふとまほろばの反対側の桟橋に止まっている艦を見る。
マウラ・ロデック指揮の駆逐艦レーゲンだった。
「艦長?」
「・・・今行きます。」
恵理香は視線をその艦から外すと乗艦して艦橋に向かう。
中央港から出港したまほろばは数時間後北方海奥に接近していた。
徐々に流氷が多くなり航行には細心の注意が必要となってくる。
『前方流氷群、接近してくる。』
見張り所に立つ見張担当からの報告が入る。
「面舵30。」
「面舵30。」
恵理香の指示に操舵担当が復唱するとまほろばは進路を変え流氷群の横を通り過ぎてゆく。
今日まほろば向かっているのはロベリヤが居た施設のある島だ。
予定では島に上陸しロベリヤが施設に居た時に集めていたシーサーペントに関する資料を回収する為だった。
やがて所々流氷群に囲まれた島が見えてくる、恵理香は双眼鏡を下ろし指示する。
「機関停止、総員警戒配置・・・ロベリヤと優香に艦橋へ来る様に伝えて下さい。」
「機関停止。」
「総員警戒配置、総員警戒配置。」
機関担当と副長が復唱し、艦内に警戒配置のアラームとアナウンスが響く。
その中、ロベリヤと優香が艦橋に入って来る。
「ロベリヤ、これから作業艇を下ろしますので島に向かって下さい。」
「分かったよ恵理香。」
ロベリヤが頷く、彼女は既に準備完了していた。
「時間は有りますが出来るだけ迅速にお願いします。」
余計な事だと思ったがと恵理香はロベリヤに伝えておく。
「資料を持ち出すだけだからね、そんなには掛からないよ、じゃ行って来るよ。」
そう言ってロベリヤは艦橋を出てゆく、それを優香と共に見送った恵理香は指示を出す。
「作業艇を下ろして下さい。」
「作業艇を下ろします。」
艦中央に装備されている作業艇にロベリヤと乗員が乗ると海面に下ろされ島に進路を向けて発進していった。
「見張とセンサーは警戒を厳重にお願いします。」
指示を受けた両舷の見張り担当とセンサー担当が動き始める。
そんな乗員達の動きを見ながら恵理香は再び双眼鏡を構え島を見るのだった。
「艦長!センサーに反応あり。」
資料の回収作業が開始されてから1時間たった時、突然センサー担当から報告が入る。
「位置は?あと状況を報告して下さい。」
恵理香はセンサー担当に状況の報告を求める。
「左舷、距離9千、反応が断続的ですのでシーサーペントと思われる目標と高速な船が、激しい洋上運動を行なっています。」
「明らかに誰かがシーサーペントと戦っているみたいね。」
優香がセンサー担当の後ろから複合ディスプレーを覗き込みながら言う。
「分かりました引き続き監視をお願いします。」
「了解です艦長。」
続いて恵理香は無線室に艦内電話を繋ぎ尋ねる。
「無線室、何か通信が入ってませんか?」
『現在のところありません。』
「念の為緊急周波数で呼び掛けてみて下さい、あとロベリヤ達を呼び戻して下さい。」
『分かりました。』
受話器を戻すと控えていた副長に指示する。
「ロベリヤ達が戻ってきたら、まほろばは現場に向かいます、総員戦闘配置に付いて下さい。」
「了解です艦長。」
恵理香の指示で乗員が動き始める。
やがて戻って来た作業艇の収容を終えるとまほろばは発進して目的の海域へ向かう。
「艦長、右舷にシーサーペントと艦艇を確認。」
左舷見張り担当が報告してくる。
「艦艇の識別出来ますか?」
私の問いに間をいれず返答が帰ってくる。
「確認しました・・・えっ?」
「どうかしましたか?」
見張り担当の戸惑った声に恵理香が聞きき返す。
「どうやらレーゲンみたいです。」
「レーゲン?、マウラ・ロデック艦長指揮の駆逐艦ですよね、なんでこんな所で戦闘しているんでしょうか?」
副長が驚いた表情を浮かべ恵理香にたずねる。
「ロデック艦長は南方海のギルドとこちらのギルドとの対シーサーペント戦の戦術情報交換で来たはずですが。」
それがこんな所でシーサーペントと何故戦闘中なのか恵理香にも分からなかった。
「理由は今は後回しにして置きましょう、レーゲンの戦闘状況はどうですか?」
下手に戦闘に介入したら双方危険に晒される可能性がある為恵理香は戦闘状況の確認を行う事にした。
「速度が出てません、あんなに遅い訳無いと思いますが・・・進路も不安定です。」
見張り担当が、恵理香の問いに返答する。
艦長席を立った恵理香は艦橋の窓により、双眼鏡を構えて前方の戦闘状況を確認する。
「確かに速度が遅いし、艦の進路もふらついている様に見えますね。」
そして恵理香はレーゲンの艦尾付近に損傷らしきものがある事に気づく。
「艦尾に損傷を受けている様ですね、それで速度が出ず、舵の利きが悪いのかもしれません。」
状況としては最悪と言える、私は艦内通話器の受話器を取り無線室を呼び出す。
「レーゲンに緊急周波数で、沈みたくなければロデック艦長を通信に出すように言って下さい。」
『・・・了解しました艦長。』
普段と違う私の強い言葉に通信担当は一瞬戸惑ったが恵理香の指示に従った。
「ロデック艦長、通信にでるでしょうか?」
副長が気掛かりそうに聞いてくる。
「それは分かりませんね、もしロデック艦長がプライドを優先するなら・・・」
そうなれば自分には出来る事は無いだろうと恵理香が思っていると艦内通話器が呼び出し音を鳴らす。
『艦長、ロデック艦長から通信です。』
「繋いで下さい。」
『了解です。』
雑音が一瞬入った後、受話器からマウラの声が聞こえてくる。
『何の用だ牧瀬艦長、今貴様と話している暇は無い。』
「では手短に言います、これからシーサーペントに砲撃します、奴の注意が逸れたら距離を取り、こちらとタイミングを合わせてロケット弾攻撃をして下さい。」
『・・・それは命令か?』
「違います、実行するかはそちら次第です、ただ貴女には艦長として乗員と艦に対する責任がある筈です。」
『・・・・・・』
沈黙するマウラの背後からは切羽詰った乗員達の声が聞こえてくる。
あとはマウラがプライドか艦長としての責務か、そのどちらを取るか恵理香は静かにを待つ。
『分かった、タイミングはそちらに任せるぞ牧瀬艦長。』
思った通りロデック艦長は賢明な様だったと恵理香は内心安堵の溜息を付く。
「では5分後に射撃を開始します。」
『了解した。』
ロデック艦長の返事を聞き受話器を戻し恵理香は周りを見る。
『艦載砲射撃準備完了です艦長。』
「進路面舵20、射撃位置に付きます。」
「信号弾準備よし。」
火器管制室と操舵担当、副長が報告してくる、皆恵理香とマウラの会話を聞いて準備を整えていたのだった。
本当に皆頼りなる、頼もしい乗員を得られて恵理香はこ幸運だったなと今更ながら思うのだった。
「艦長、射撃位置に付きました。」
航海担当の声に副長のカウントダウンが重なる。
「・・・5、4、3、2,1、今!」
「撃ち方始め!」
まほろばの艦首艦載砲が撃準を開始、シーサーペントの周りに着弾する。
「シーサーペント、こちらに進路を変えます。」
見張り担当の報告通り、咆哮を上げシーサーペントがこちらに向かって来る。
「レーゲン、離れて行きます。」
「ロケット弾発射可能距離まで離れたら教えて下さい。」
「了解です艦長。」
さあこれからが本番になる、とはいえ恵理香には不安は無かった。
「本艦及びレーゲン共にロケット弾発射可能距離に到達。」
『艦首ランチャー発射準備よし、距離及び方位角問題無し。』
センサー担当と火器管制室からの報告に恵理香は頷き指示を発する。
「信号弾を上げて!」
副長が指示すると信号弾が打ち上げれれて艦上空で発光する。
「ロケット弾発射して下さい。」
「ロケット弾発射!」
恵理香の指示により艦首ランチャーからロケット弾が発射される。
「レーゲンロケット弾を発射。」
見張り担当の報告を受け恵理香は速やかに離れる様に指示をする。
「取り舵一杯、前進全速。」
「取り舵一杯。」
「全速前進。」
操舵担当と機関担当の復唱が重なりまほろばは急速に進路を変え速力を上げてゆく。
「着弾します!」
センサー担当が複合ディスプを見ながら報告すると同時に激しい爆発音が2回続き、シーサーペントの咆哮が海上に響く。
「状況を報告して下さい。」
爆発音と咆哮が収まった後恵理香が報告を求める。
「こちらとレーゲン双方のロケット弾の命中を確認、シーサーペント沈んでいきます。」
左舷見張り所に出た恵理香は双眼鏡を目標に向け、どす黒い体液に染まったなか沈んで行くシーサーペントを見る。
「旨くいきましたね艦長。」
同じ様に見張り所に出てきた副長が微笑みながら声を掛けてくる。
「ええ皆さんご苦労様、レーゲンの方はどうですか?」
「あちらも無事に航行中です艦長。」
隣に立って居た見張り担当が微笑みながら答える。
「それでは帰港しましょう、監視は忘れずお願いします。」
まほろばはレーゲンと共に中央港への進路を取ったのだった。
数時間後、まほろばとレーゲンは中央港へ帰港し、それぞれの桟橋に接舷する。
帰港後の手続きを指示していた時、呼び出し音の鳴った艦内通話器の受話器を取った副長が、恵理香を見て報告してくる。
「艦長、下にその・・・ロデック艦長が部下の人間と来ているそうですが?」
「ロデック艦長が?」
後で様子を見に行こうと思っていた恵理香は驚いた声を上げる。
「分かりました、副長後の指示をお願いします。」
「了解です艦長。」
副長が頷いて返答した事を確認すると恵理香は艦橋を出て行く。
そして艦に掛けられたタラップを降りて行くと、先に対応していてくれた乗員が手を振っている。
「艦長、こちらです。」
呼んでいる乗員の前に立つ2人、マウラともう1人居る事に恵理香は気づく。
「牧瀬艦長、わざわざ来て貰って、その申し訳ない・・・」
言いたい事がある様だが旨く話せないみたいだ、最初に会った時とはまるで違う感じに恵理香は戸惑う。
「艦長・・・仕方ありませんね、ああ、私は副艦長をしておりますクラリッサ・バーンズと申します、以後よろしくお願いします牧瀬艦長。」
マウラに付いてきた副長のクラリッサはそう言って微笑みつつ恵理香を見る。
「まあうちの艦長が恥かしがっていますが、牧瀬艦長に礼を言いたくて参ったのです、1人では行きずらいと言うので私が同伴して。」
「ク、クラリッサお前!?」
真っ赤になり睨みつけるマウラ、もっともクラリッサの方は何処吹く風といった感じだった。
「と、兎に角だ、私は貴様に恩を受けた、その礼はさせてもらうぞ牧瀬艦長。」
礼を言うわりには少々偉そうだが、そこは彼女らしいと恵理香は内心苦笑する。
「いえ礼には及びませんよ、ロデック艦長も私も自分のすべきことをしただけじゃないですか。」
「それでもだ牧瀬艦長、私はもう少しで乗員と艦を失うところだった。」
恵理香の前で唇を噛み俯くマウラ。
「貴様が思い出させてくれたんだからな。」
「しかしそれはロデック艦長が・・・」
会話がループになりそうなところにクラリッサが溜息を付きつつ言葉を挟んでくる。
「牧瀬艦長、うちの艦長の謝罪を受け入れて上げて下さい、でないと引っ込みが付かないですから。」
「クラリッサ、お前はいちいち余計な事を・・・」
マウラの苦味切った表情を意に返さずにクラリッサが言ってくる。
「分かりましたロデック艦長、謝罪は確かに受け取りました。」
恵理香の言葉にようやく安堵の表情を浮かべるが、次の瞬間顔を赤くし俯きながら言葉を続ける。
「それでだ牧瀬艦長、貴様にもう一つ言いたい事がある、き、貴様は今から私の戦友だ。」
友人と言わず戦友と宣言するマウラにクラリッサが苦笑いを浮べる。
「ええ構わないですよロデック艦長。」
「マウラでいい、乗員の皆もそう呼ばせているからな。」
クラリッサを見ると頷いたので恵理香は微笑みながら答える。
「それではマウラ、私の事も恵理香と呼んでも構いませんから。」
「恵理香だな、分かった・・・それでは失礼する。」
自分の今の顔を見られたくないのか、足早に帰っていくマウラ。
「まったくうちの艦長殿は・・・それでは私も失礼します。」
先に行ってしまったマウラを微笑ましく見つめながらクラリッサも帰って行く。
そんな2人を恵理香は苦笑しつつ見送ったのだった。
そして後日開かれた戦術情報交換会は問題なく終了しマウラは南方海へ帰っていった。
「世話になった。」と言うそっけないメッセージをギルドを通して恵理香に残して。
「結局最後まで腑抜け呼ばわりは変えなかったロデック艦長だが、天使の事は誉めていたぞ。」
レイアが苦笑いを浮かべながら恵理香に後日そう教えてくれた。
彼女らしいと恵理香は微笑みながらそのメッセージを聞いた。
そして恵理香は彼女とはまた何時か戦友として共に一緒に戦えるだろうかと考え我ながらそんな期待を抱く事に内心苦笑するのだった。
16:45
南方海のシュヴァルツ商会との戦術情報交換会終了。
艦長マウラ・ロデックは南方海へ帰投した。
報告者:牧瀬商会所属駆逐艦まほろば艦長牧瀬 恵理香。




