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地獄の底まで堕ちてくれ~神子召喚に巻き込まれた闇堕ち悪役令息は復讐する~  作者: 緒沢 利乃
神子召喚と異世界転生

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公爵家へご挨拶

馬車が止まり、従者の手を借りて馬車を下りる。


バ……バカデカイ屋敷だ。口を開けてやや顔を上げ呆けること暫し、ハッと気づいて歩きだす。子爵家(うち)の屋敷も広い洋館で、昔の華族が住んでいたようなレトロさがよかったが……ここはもう宮殿である。


さすが、公爵家。子爵家との違いがハッキリとわかります。


ゴクンと唾を飲み込み、エントランスホールへと。左右にはお仕着せを着た男女の使用人が並び、キレイな角度でお辞儀をしている。そんな中を六歳の子どもが堂々と歩けるわけがない。つい左右を交互に見てしまう。

まぁ、中身は十六歳の男子高校生だけど。


カツンと靴音を響かせて止まると、目の前にはぼくの寄生先である公爵家の面々がお出迎えだ。


「よく来られました」


……正面の公爵本人ではなく、横に控えていた執事の偉そうなお爺さんが歓迎の言葉を発した。あれかな? 子爵程度だと、公爵様はお口を開かないのかな?


「おせわになります。セヴェリーノししゃくけ、ちゃくなん、ルカ・セヴェリーノです」


僕は、子どもらしくハキハキと自己紹介をしたあと、ペコッと軽く頭を下げる。


「うむ。離れを用意してある。好きに過ごせ」


寄子貴族の子どもなんて興味がないとばかりに、尊大な物言いで挨拶を済ませるとクルッと背中を向けて二階へと階段を上がっていく、公爵家当主、イーヴォ・アルベルディ 三十八歳。真っ青な髪を伸ばして後ろで一本に結び、アメジストのような瞳はどよんと退廃的な色合いを滲ませていた。……覇気がないのだ、覇気が。

公爵家であれば、権力もお金もあって人生勝ち組みのはずだが……なんか幽鬼みたいな顔色と病的なまでの痩身で、存在感が物足りない人だ。

ブライドの高さだけは感じられたけどね。


「コホン。ルカ様こちらは旦那様の奥様の……」


「ベアトリーチェ・アルベルディよ。この子は息子のヴィート。この公爵家に住まわせてあげるのだから、次期公爵のこの子に逆らわないようにね」


ギロッと公爵夫人とは思えないキツイ目つきで睨まれて、僕は愛想笑いで誤魔化した。

公爵さまの女性の趣味って……。


王族の女性の次に地位の高い公爵夫人でありながら、ベアトリーチェ様の出で立ちは酷かった。まだ日も高いのに夜会に赴くような煌びやかなドレスは肩や胸元が露わなデザインで、顔に施した化粧は派手で体から香る香水は鼻で息を吸うのを躊躇うほど。

肉感的なスタイルの持ち主だから、周りにそれをアピールしたい気持ちはわかるが……下品だ。


そして、そのベアトリーチェの息子であるヴィートは、偏見かもしれないが性格悪そう、頭悪そう、意地悪そう。

悔しいかな子爵家という身分では、寄り親でもある公爵家に歯向かうことはできない。ここは大人しく頭を下げておこう。


「これから、よろしくおねがいします」


僕の後ろでも、アメデオとソニアが頭を下げていた。


公爵夫人と公爵子息は「フンッ」と鼻を鳴らして、公爵の後を追うように階段を上がっていく。ベアトリーチェ様のピンヒールが高くて階段から転げ落ちるのではとハラハラしたが、とりあえず寄生主への挨拶は無事に終わった。

僕たちは同じ敷地内にある離れで生活するから、本邸にいる公爵家族とはほぼ接触することはないと聞いている。あんな、クセの強い人たちとはコミュニケーションを取りたくないので願ってもないことだよ。


「では、ご案内いたします」


先程の偉そうな執事は、アルベルディ公爵家の執事長のマカーリオさん。厳めしい顔つきに背筋をピンと伸ばした姿勢で矍鑠としている。タイピンのピンク色の宝石がちょっと似合っていないが、見なかったことにしよう。


「よろしく」


ニコッと愛想を売りつつ、公爵様が去ったエントランスホールをグルリと見回すと……なんだあれ?

美術館に飾られていそうな等身大の石膏像の影にぴょこんと見えているのは……子ども?






















僕たちを離れの屋敷に案内したあと、二、三人のメイドを残し執事長マカーリオさんは足早に本邸へと戻っていった。メイドさんたちは窓を開けたり、ソニアにリネンや食器のある場所を説明したり、テキパキと自分の仕事を終えるとサッと帰っていってしまう。


僕はソファーに座ってお茶……ではなくハチミツを入れたミルクを飲みつつ、はああああっと深いため息を吐いた。


「あ~、つかれた」


「お疲れ様です、ルカ様。夕食の前にこちらをどうぞ」


ソニアが差し出したのは、ほんのりとバターの匂いがする焼き菓子だ。


「ありがと。アメデオ、こうしゃくけのこと、おしえて」


どうも、僕の叔父さん、いまはセヴェリーノ子爵代理として、文字どおり命がけで仕事をしているニコロ・セヴェリーノから事前に聞いていた話とちょっと違うような?

これが、馬車の中で話していた「アレ」なのかな?


「あ~、アレとは違うアレですねぇ。まさか、公爵家の内情がここまでアレだとは」


「アレばっかりで、わかんないよ」


むうっと頬を膨らますと、アメデオが慌てて手振りを加えて話し始めた。


「……アルベルディ公爵は数年前に奥様を亡くされたあとは再婚はしていません。息子が一人いますが……紹介されたヴィート坊ちゃんではないですね」


……なんだって?


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