8話
今回の収穫物は主にラビットと大鼠の毛皮だ。この毛皮はラビットと大鼠をかなり倒したので大量にある。
冒険者ギルドの解体場で並びながら俺の順番を待つこと数分。
今日は早めに切り上げたから解体場を利用する冒険者の数も少なくて少し待つだけで済んだ。
「次の方どうぞ〜。」
俺の順番が回って来た。
カウンターにラビットと大鼠の毛皮、それにラビットと大鼠の討伐証明、魔石と依頼書をセットで置いた。
「結構毛皮があるね。それに綺麗に解体もしてある。肉はないのかい?」
「肉は重たいので持ってきてないです。」
「そうか。大鼠もだが、ラビットの肉は高く買い取ってるんだけどね。」
それは俺も理解しているが、それでも重たい物を持った移動スピードと体力の消耗を考えると毛皮の方が楽だ。
でも毛皮の方もそれなりに良い値段で買い取って貰える気がする。スライムに変質させて手を使って毛皮の汚れや脂肪や肉を綺麗にしたし。
「順番が来たら呼ぶから、これを渡すね。」
「分かりました。」
木札を受け取った俺は自分の番が来るまで待つことにした。
それから待って10分前後くらいの時間が経った頃に呼ばれて向かった受付カウンターで買い取って貰った金額は銀貨6枚。
宿代や食事代を考えれば買取だけでも貯金が出来るくらいだ。それにプラスして依頼達成した報酬だってあるのだから。
それからの俺はラビットと大鼠の討伐を中心にして依頼を受けながら、アリシンの講習がある日は講習を受ける日々を送っていた。
そんな暮らしをして3ヶ月経ち、今日はアリシンの講習の日だ。
「シオン、今日で講習は終わりだ。」
「え、終わりなんですか?」
格闘術の型の間違いを最近はアリシンから受けてはなかったが、アリシンの型の動きを見る限りではまだまだと俺的には思うのだが。
「ああ、ここからは自己研鑽をするべきだ。あとは自分なりの戦い方を見つけて磨いてくれ。」
「分かりました。それじゃあ今日の講習は?」
「模擬戦だ。これまでの学んだことを見せてくれ。さあ、やるぞ!」
構えをアリシンは取る。
俺も構えを取る。
「開始だ。行くぞ!」
「はい!」
アリシンが向かって来る。
俺のこれまでの成果を確かめる為でもあるのだろう。アリシンは型の通りに攻撃を行なってくる。
形稽古の時よりも鋭い動きをするアリシンの動きに、これまでの学習や強化された身体能力もあって動きが鋭くてもアリシンの動きに対処可能だ。
アリシンの攻撃を防ぎ躱わし受け流すだけじゃなくこちらからも仕掛けていく。
まだ俺自身の戦闘方法が確立されていないから型通りの動きが多いがそれでも攻撃を行なっていった。
「本当にお前さんの身体能力はやばいな。油断しているとヒヤヒヤする時があるぞ。」
「成長してますから、ね!」
拳を振るいながら返答する。
これまでの3ヶ月はとにかく型を正確に行なえる様にすることに身体操作を確かな物にするのに時間を使っていた。
今なら全力の身体能力でもある程度は操作や制御が出来ているほどだ。まあ、それでもこれからも常に身体操作能力を研くのをやめる訳にはいかないだろうが。
俺が攻撃してアリシンが防ぎ、アリシンが攻撃して俺が防ぐ。そんな攻防を何度も何度も続けていく。
「そんだけ動けても疲れないなんてどんな体力をしてるんだよ、こっちは疲労が半端ないってのに。」
「スキルのお陰です。」
もう1時間以上も休まずに戦っている。それをさせる体力があるのは【無手剛体】と【栄養貯蓄】のお陰だ。
【無手剛体】で上がる肉体性能は身体能力が高まるだけじゃなく体力の方も上がっている。
【栄養貯蓄】はと言えば栄養やエネルギーを蓄える効果があるが、そうして蓄えたエネルギーを体力として利用することで俺はかなりの体力を持っているのだ。
「これ以上は耐え切れないからな。これで最後だ。初めてあった時にはまともに防げなかったこれをどう対処するのか見せてみろ。まあ、防げなかったらまたポーションくらいやるからよ。」
「分かりました。」
あの時のことを思い浮かべる
アリシンはあの時すごい速さで正拳突きの様な動きで打撃を行なってくる。
だが来ると決まっているのなら今の俺なら大丈夫だ。
俺は意識を集中させてアリシンが攻撃して来るのを待つ。
「じゃあ行くぞ!」
ダン!
地面を踏み付けた音が聞こえたと同時にアリシンは一気に俺との距離を詰めて正拳突きを放ってきた。
空気を切り裂きながら向かって来るアリシンの一撃は初日にアリシンが行なった一撃なんかよりも鋭く威力もかなり高いはず。
それでも俺はアリシンの動きを目で追えているし、それに今のアリシンの動きにも対処出来ると自信がある。
アリシンの正拳突きの速度に合わせながら右手で拳の進む方向を優しく確実に逸らしていく。
アリシンの攻撃を逸らしながらも半歩後ろに右足を動かし、左手で掌底をアリシンの腹部を狙って構える。
「ぐふっ!?!??」
俺の掌底がアリシンの腹部に突き刺さった。
アリシンが突っ込んで来た移動速度も加わって、俺の方はしっかりと身体を動かさない様にすることで、アリシンは斜めに固定された人サイズの杭に衝突したみたいな物だ。
かなりのダメージになったのだろう。
アリシンは腹部を押さえながらも、膝をガクガクさせながらなんとか膝を地面に突いていない状態になっていた。
「あ、あの大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃねえよ。すげぇ痛え。」
アリシンはふらふらしながら腰の袋からポーションを取り出して飲み始めた。
ポーションのお陰だろう。もうアリシンはふらふらとしていた身体はしっかりと立っているくらいには回復している。
「最後は本気を出したんだぜ。それであのざまだとはな。」
「あれほど威力があったのはアリシンさんのスピードがあったからなんですけどね。」
「本気でやったのが仇になったか。まぁいいや。これで格闘術の講習は終了だ。シオン、これからのお前さんの活躍を期待しているよ。」
「はい。頑張ります。」
それから講習が終わりアリシンに昼食を奢って貰うことになった。
こうして俺は格闘術の基礎を獲得してこれから更に強くなる為にこの街を出ることを決めることにした。
次に向かうのはこの街から1番近くにある防衛都市ハマルーンを目指そうと思う。




