7話
アリシンの正拳突きの様な攻撃は腕を交差して防御したにも関わらず、俺の腕からミシリと音が立ち、そのまま俺は訓練所の壁まで吹き飛ばされてしまった。
「ぐはっ!!……げほっげほっ、はぁはぁ…………。」
肺から空気が抜けて息が止まり咳をしながらもなんとか息を整えようと身体が勝手に動く。
壁に背中からの強打とアリシンの打撃を受け止めた腕からの痛みに耐えながら呼吸を整えているとアリシンが俺の元にやって来た。
「あぁ、ちょっとやり過ぎた。すまん。腕を折ったかもしれん。これを飲め、中級ポーションだ。」
「わ、分かった。痛っ……。」
腕を上げたら激痛が走った。
なんでこんなに痛いんだと思い見れば紫色に腕が拳の形で変色しているのが目に入った。
確かにこれなら腕が折れていても不思議じゃないな。と思いながらまだ動く左腕の方でアリシンからポーションを受け取った。
ポーションは傷の回復、体力の回復、魔力の回復、状態異常関係のポーションと様々なポーションがある。
下級ポーションは銀貨数枚なのに、中級ポーションからは金貨数枚も値段がする。
そんな中級ポーションを飲んで良いのかと思ってしまうが、貰えるのならと受け取った俺はすぐに飲み干した。
中級回復ポーションの効果はすぐに出た。腕の痛みがなくなって痛々しい色をしていた腕も元通りになっている。
「すごい!」
「骨折くらいは治るからな。中級ポーションは。もう一度謝らせてくれ。すまんかったな。」
「いえ、それにポーションで治ったんで問題ないです。」
「そうか……よし、それじゃあさっきの戦いで見せて貰ったことを伝えるぞ。」
「はい。」
俺はそれけら先ほどの模擬戦での良かったとこほと悪かったところを教えられることになった。
「初心者冒険者としてなら問題ない。才能があるくらいだ。身体能力も高いしな。技術だってこれから教えればいい。問題があるとすれば高い身体能力を操り切れてないことだろう。まあこれもスキルを使える様になってそれほど時間が経っていないからもあるが。」
「そうですか。」
【無手剛体】で上がっている身体能力を持て余し気味なのは俺も理解している。
一応だがどれだけ動けるのかを確かめているが、それでもまだ何処かで加減をしている様な感じもある。
「今後は高い身体能力を自由自在に操れる様になれば高位の冒険者にもなれるだろう良いスキルを持ってるんだ。そこに俺が格闘術の技術も教える。それでどれだけ講習に来れそうだ?」
「なるべく行こうと思います。」
「そうか、それなら。」
アリシンが講師として講習をやれる日を教えてくれた。
なるべくこれからはアリシンが講習を行なう日は講習を受けようと思う。
「体力もある程度回復したな。型をまずは教える。俺が型を見せるから真似してみろ。」
「はい!」
俺はそこからアリシンが見せてくれた型に倣って真似して形稽古を行なっていくことになった。
一度型の通りに身体を動かすと、それを見たアリシンが間違っている箇所を教えて、俺はまた型の通りに身体を動かす。
それを繰り返して正しい型で動ける様にしていくのがアリシンの格闘術の授業だ。
それから1つの型を行なったら、また別の型をアリシンは教えてくれた。
正午になるまで形稽古を行ない、午後からもアリシンは時間を空けるからと空けてくれて、午後も形稽古で型を教わることになり、この日だけでアリシンが教える型は全て習った。
今後は1人でも形稽古を行ない型の通りに身体を動かせるようになることを今後の目標にするそうだ。
アリシンが講習を行なう日はどこまで型を正確に行なえる様になったかのチェックと型の修正、アリシンとの形稽古を行なうことになるとアリシンに言われた。
1人でがむしゃらに強くなる為に訓練を行なうよりは強くなれるだろう。
でも講習の最後にアリシンに言われたのが頭に残っている。
「人それぞれスキルが違うからこそ基本が同じでも戦い方は変わる。俺が教えるのは基本だけ。そこからお前自身の戦い方を見つけ出すのが大変だぞ。」
と言われた。
確かに俺のスキルは特殊なものが多い、特にモンスターへと身体を変異させられる【捕食変異】を考えれば自ずと戦い方は変わってくるだろうと。
講習を受けてから翌日。俺は新しく依頼を受けて街の外にやって来ていた。
今回受けた依頼はラビット討伐と大鼠討伐の2つだけ。
街から離れて、小川から離れた草原側へと向かった。
「おぉ、いるいる。」
視界に見える範囲にラビットと大鼠の姿がちらほらと見える。
「まずはラビットからだな。」
昨日の事もあって俺は全速力でラビットの元まで走り出した。
風を切る音を耳にしながらラビットとの距離を詰めていくと、ラビットの方も俺が接近して来ているのに気が付いて逃げ出そうとしていた。
「逃すか!」
逃げて行くラビットを俺は追う。
段々とラビットとの距離が近くなっていくのは俺の方が走るスピードが速いのだろう。
そのままラビットの背後まで近寄った俺はラビットの下半身を全力で蹴り上げる。
ラビットが俺の蹴りを受けて飛んで行くとそのまま地面に墜落した。
「死んだかな?」
俺は墜落したラビットの元まで移動した。
倒れているラビットの様子を見た。ラビットはピクピクしているけど生きている気配はない。
「よし捕食だ。」
周りを見るが周囲に人は誰も居ない。今ならラビットをスライムの手で捕食しても誰にも見られないし問題ないだろう。
両手をスライムの手に変えて俺はラビットをスライムの手で包み込んで捕食を開始した。
まず最初に毛皮が消えて肉や骨や内臓が見えるが、どんどんと消化されて最後には骨も捕食された。
「ふぅ、グロいな。」
毎回こうだと少し精神的に疲れてしまうのだが、それとは別に俺はエネルギーが溜まっていく様な満足感もあった。
そして、ラビットを捕食した事で得られた能力は跳躍力の強化、聴覚の強化、体力の強化の3つが手に入った。
試しにラビットの因子を取り込んでジャンプすると、確かに高く跳べる様になっていた。
更に靴を脱いで足をラビットの兎足へと変化してジャンプすれば、因子のみの時よりも高くジャンプすることが出来たし、兎耳へと耳を変えれば遠くの音まで聞こえてくる。
それから俺はラビットや大鼠を倒して討伐証明の回収を行なっていくのだった。




